今年2020年は、1月にリリースした会心の3rdアルバム『マニック』を引っ提げ、華々しくワールド・ツアーへと繰り出す予定だったホールジー。ところが、ご存じのとおり。コロナ禍のために、春以降のライブ予定はすべて延期となってしまった。本来ならば5月7日に組まれていた東京公演のチケットを入手し、熱いライブを心待ちにしていた方もきっと多かったことと思うけど……うーん、本当に残念!
そんな情勢を踏まえ、ファン思いのホールジーが急遽リリースした本作は、彼女のキャリアで初となるライブ・アルバム。セットリストの内容は、現在は中断中の『マニック』ツアーのものではなく(ま、そりゃそうだ)、2019年5月にニューヨークのウェブスター・ホールにて2日間限定で行なわれたスペシャル公演の内、15年にリリースされた彼女の1stアルバム『バッドランズ』の全曲を丸々再現した初日の模様を収録したもの。2枚組仕様でのリリースで、1枚目がライブ盤、2枚目は今年でちょうど5周年となる『バッドランズ』スタジオ盤のデラックス・エディションとなっている。
ホールジーのライブでいつも驚かされるのは(そして感動的なのは)、会場を埋め尽くした観客たちの反応の「熱狂度」だ。自らが双極性障害であることをオープンに認め、鬱との日常的な戦いの記録を正直に綴った彼女の言葉は、4年という時間をかけ、観客ひとりひとりにとって「みんなの歌」になっているのだということが、本作を聴くとすごくよくわかる。デビュー曲の“ゴースト”をはじめ、最新作『マニック』の洗練されたサウンドと比べると、まだまだ未熟だった時代の楽曲ばかりだけど、だからこそ逆に、ストレートに胸に突き刺さってくる、激アツの75分。 (内瀬戸久司)
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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。
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