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ミセスのデビュー10周年にこれをぶつけてくるところに、大森元貴の表現者としての業の深さのようなものを感じずにいられない。『天才てれびくん』でてれび戦士たちが歌うことを前提に、生きていくうえで大事にしたい気持ちをちりばめた“こたえあわせ”は、28歳の大森が今の視点と声で歌うことでまったく異なる色と匂いを醸し出す。この曲にこのタイトルをつけたのは「大人になったらわかるよ」ということだと思うのだが、大森の震えるような声は、ここに込めた寂しさも難しさも決して消えないどころか強くなっていくんだと言っているように聞こえる。そして“絵画”。圧倒的に孤独で哀れな自分自身を曝け出しながら《せめて貴方の部屋に/その絵画を飾ってほしい》と願いのような歌を響かせるこの曲は、まるでもうひとつの「こたえあわせ」だ。“天国”がバンドでなければならなかったように、大森はこの曲をひとりで歌わなければならなかった。これを聴くと、表舞台の華やかな彼の姿が、また一味も二味も違って見えてくるはずだ。(小川智宏)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年8月号より)
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