Pファンク界の総帥にして、つい先日、76歳の誕生日を迎えたばかりのジョージ・クリントン。8月には「G・クリントン&パーラメント・ファンカデリック」として、サマソニ/ソニマニでも健在ぶりを見せつけてくれた。
そんなタイミングでリリースされる本作は、完全新曲、しかも全23曲という超大作の最新アルバム。さらに驚きなのは、これがPファンク・オールスターズではなく、「パーラメント」名義での作品であること。1980年以来というから、実に38年ぶりのお祭り騒ぎなのである。
そうなると「なぜ今?」という疑問も浮かんでくるけど、ヒントとなりそうなのは、本作が「現代アメリカの病」を描く、ちょっとした「コンセプト・アルバム」になっていることだろう。タイトル・ソングや“メディケイテッド・クリープ”は貧しい人から金をむしり取る製薬業界の欺瞞をテーマとした曲。他にも“アンチソーシャル・メディア”ではSNSへの依存症、“ヤ・ハビット”ではドラッグ中毒の問題が歌われる――こんな病んだ社会には、ファンク大王のぶっといお注射が必要だ。今こそドクター・ファンケンシュタインの出番なのだ。だからこそのパーラメントなのだ。
サウンド的には、古今東西のヒップホップとの融合をはかった曲の多い点が目立つ。“インシュランス・マン”なんか思いっきり90年代Gファンクだし、そうかと思うと、最新のトラップ風や、フライング・ロータス風(!)の曲もあったり。
もちろん、オールドスクールなファンのためのオールドスクールなファンク・ジャムもフル装備。総帥クリントンが2019年5月をめどにツアーからの引退を表明したのは残念だけど、それでもやっぱりPファンクは永遠に不滅だよね、と信じさせてくれる一枚。(内瀬戸久司)
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パーラメント『メディケイド・フロード・ドッグ』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」9月号に掲載中です。
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