コンセプチュアルな『ハウス・オブ・ゴールド・アンド・ボーンズ』二部作の後でジム・ルートが「残念ながら俺には身体がひとつしかないんだよ」と至極当然なコメントとともにスリップノットに専念したことは、スリップノットとストーン・サワーというふたつの世界規模のバンドのフロントに立ち続けるコリィ・テイラーのあまりに熾烈な現在地を改めて物語るものだった。しかし、何より驚きと感激を喚起させられるのは、『ハウス・オブ~』のヘヴィ&ストイックな構築性から一転、ロックのダイナミズムを全細胞で確かめるようなハイ・エナジーな肉体性を、コリィが全身全霊傾けて謳歌していることが、 “ソング#3”“ファビュレス ”の遊び心に満ちたMVのみならず4年ぶり6thアルバムとなる今作からもダイレクトに伝わってくることだ。メタルもオルタナもラウドも踏み越えた表題曲 “ハイドログラッド”の剛性とスケール感。“マーシー”で繰り広げるサウンドとメロディの、黒光りするほどのタフネス。妖しくも獰猛に交感神経を掻き乱してくる“フライデー・ナイツ”のスリル……USロックの高純度結晶と呼びたいくらいの快盤。( 高橋智樹)