アメリカン・ロックの霊泉を探る

V.A.『デイ・オブ・ザ・デッド』
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ALBUM
V.A. デイ・オブ・ザ・デッド
ザ・ナショナルのデスナー兄弟が7年ぶりに企画・プロデュースでエイズ・チャリティレッド・ホット・オーガニゼーションと組んだコンピは、なんとCD5枚組のグレイトフル・デッド・トリビュート。しかしフォーク、カントリー、ブルース、ロックンロールを幹に拡張し続けた文字通り「宇宙樹」なバンドだけに、破格なヴォリュームになるのはむしろ正しい。70年代黄金期を中心にジェリー・ガルシアのソロや80年代作品も交じる選曲は幅広く、呼び声に応じた面々――ルーツ・ロック/SSW系から旬なインディ勢にオルタナ界の猛者、アフリカン・アクトにヴェテランまで――の多様な顔ぶれからも、「ヒッピー音楽」に留まらないデッドのスケールと文化的なインパクト・先進性を10年代に提示しようとの意欲が伝わる。収録曲が多いだけに各曲の出来にムラはある。ゆえに1:「デッド入門兼インディ名士年鑑」として全曲どっぷり浸かる。2:好みのアクトに絞る……と聴き方も人それぞれだろうが、個人的には原曲に捕われないユニークな解釈(ティム・ヘッカーの“ダーク・スター”脱構築はさすが)、長尺なジャムやメドレー(“テラピン・ステーション”組曲再解釈は嬉しい)が聴きどころだ。(坂本麻里子)
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