トム・ミッシュ、アロー・ブラック、KREVAらが出演、潮風が心地よい「GREENROOM FESTIVAL'19」2日目を徹底レポート!

トム・ミッシュ、アロー・ブラック、KREVAらが出演、潮風が心地よい「GREENROOM FESTIVAL'19」2日目を徹底レポート!

15周年を迎えた「GREENROOM FESTIVAL」の、2日目の模様をレポートしたい。5月としては記録的な暑さの中を過ごす週末ではあったけれど、吹き抜ける潮風が心地よいフェス環境であった。この日は、港を隔てて対岸の大さん橋に、大型客船コスタ・ネオロマンチカ号も停泊(夕方には出航)していて、目を楽しませてくれる。

無料エリアのRedbrickステージで、LUCKY TAPESから1日を始めることにする。ホーンセクションやコーラスが加わった賑々しく風通しの良いサウンドで、広場を沸かせてくれていた。

前日にKICK THE CAN CREWとして出演したGood WaveステージのKREVAは、6月19日(水)リリース予定のアルバム『成長の記録 〜全曲バンドで録り直し〜』を踏まえた選曲で、強烈なラップから大合唱を誘発する歌までを余すことなく披露。先日、バンマスを担ってきた岡雄三(B)の訃報が伝えられたけれども、彼のプレイはKREVAの新録ベストにも、刻まれることになる。その後は芝生の上で食事を摂りつつ、TENDREの先鋭性とポップの境目を縫う豊穣なサウンドを満喫させてもらった。


バックバンドが全員、白人プレイヤーで構成されたアロー・ブラックのステージ。のっけから“Lift Your Spirit”にジャクソン5のベースラインを持ち込み、Pファンク風のコーラスや“No Woman, No Cry”の掛け合い、そしてスティーヴィー・ワンダーのメドレーやエルトン・ジョン“Your Song”カバーなど、ただでさえ力のあるソウルマンなのにやたらサービス精神旺盛である。

30歳を過ぎてメジャーデビューした苦労が、そうさせるのだろうか。そんな流れの中で「これは魂の歌だよ。一緒に歌ってくれ」と“Wake Me Up”を届けるさまには、さすがに熱いものが込み上げてきた。偉大なるポップ・ジャイアンツの名曲群に、アヴィーチーを並べること。新たにリリースされた共作曲“SOS”は披露されなかったけれど、それを補って余りある最高のトリビュートだった。


さまざまなプロジェクトで何度も「GREENROOM」に出演しているトミー・ゲレロは、フェスの裏番的存在と言えるのではないか。今年リリースされた『Dub Session』の、西海岸パンク・スピリットを漂わせるダブサウンドで、有機的に高揚感を育んでゆくさまがかっこいい。音楽のピュアなヴァイブを保ちつつ、常に実験精神を見失わない。カルチャーとアートの接点は間違いなくここにある。

2日目のピークタイムに向けて素晴らしい盛り上がりを見せたのはCharaで、力強くキュートな歌声による名曲を連発。長男HIMIを授かった際制作された“大切をきずくもの”を、HIMIとのセッションで届けるというスペシャルな一幕も盛り込まれていた。


Charaから永久女子ボーカルリレーのバトンを受け取ったのは、コリーヌ・ベイリー・レイ。本人含めてステージ上のバンドは4人だけなのに、めちゃくちゃリッチな音像が立ち上がってくる。デビュー以来一貫してガツガツした様子を見せることなく、可愛らしい愛嬌を振りまいて歌う姿も不変だ。

チルな時間を育んでくれるのかと思いきや、“Paris Nights / New York Mornings”で緩やかに上昇線を描いてゆく。曲の良さが、歌声の素晴らしさを引き出している点もCharaと共通している。静謐な“Like A Star”は今回も美しかったけれど、最後もやはり“The Sky Will Break”でアップリフティングに締めくくった。


そして2日間最後のアクトは、「SUMMER SONIC 2018」以来の来日となったロンドンの俊英トム・ミッシュ。ブルーの照明に包まれて登場した彼はポロシャツにハーフパンツというカジュアルな出で立ちだが、それとは裏腹に歌声も音像もすこぶる上質でスタイリッシュだ。

自ら卓越したギタープレイを届け、バイオリンやサックスの音色も持ち込まれるけれど、そのすべてはクールに統制されている。オーガニックなアンサンブルでありながら、DJ的な感性によって最も効果的なダンス・ミュージックがデザインされているのだ。それは、彼がよく比較されがちなジェイムス・ブレイクよりも、例えばディスクロージャー辺りに近いものなのではないかと、僕は思う。


初のアルバム『Geography』よりも前の作品が多く並ぶセットリストではあったが、メロウな“Movie”やソウルフルな“Follow”が良いアクセントとなって、徹底的に快感原則に忠実なダンス空間が築かれる。まったく、舌を巻く思いだ。

火照った体と満たされた魂の余韻を引きずったまま帰路につく、そんな2日目の夜であった。(小池宏和)

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「GREENROOM FESTIVAL'19」1日目のレポートはこちら。
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