sanetii(サネッティ)って何者? ロックもボカロも当たり前に自分のものにして、親しみやすくて繊細な独自の楽曲を生み出すシンガーソングライターを知ってほしい

「ボカロ出身アーティスト」という触れ込みがかつては個性を発揮していたが、今やボカロというジャンルは当たり前に音楽シーンに浸透し、PEOPLE 1NEEなど、今の若い世代のアーティストに当たり前に影響を及ぼしている。

sanetii(サネッティ)もそのひとり。2000年生まれのシンガーソングライターで、ごく自然に少し懐かしい00年代ロックサウンドとボカロサウンドをミックスさせ、キャッチーな楽曲を生み出している。


たとえば去年10月に発表された“アメイジンググレイス”は、一聴して耳に残るギターリフで始まるイントロに、軽快な韻とともに言葉を畳みかけるAメロ、思わずシンガロングしたくなるようなサビの《アメイジンググレイス》というリフレインといった、純粋に双方のジャンルのポップな部分だけをかけ合わせたような曲で、誰が聴いても親しみの持てるメロディになっている。
そんなメロディに乗る歌詞は、死を見つめながらも、なんでもないどうしようもない日々を肯定するような、開き直りにも似たつつましいポジティブさが滲んでいる。ストーリー性のあるMVとあわせて聴くと、メッセージがよりダイレクトに心に響いてくる。


MVに“アメイジンググレイス”と続いているような描写のある“シーズインラヴ”は、あの頃からは少し薄れてしまった恋心に抗い、その気持ちの尊さを《忘れないようにしよう》とする切実さが、テンポのよい爽快なメロディに乗せられている。終わると見せかけてまだこの物語がこれからも続いていくことを予感させる、ゲーム音楽のようなアウトロも印象的だ。

そして、最新曲の“レイリー”は、今までにないほどギターロックが前面に押し出されたバラード。sanetiiの原点回帰と言えるようなシンプルでストレートなアレンジが、「レイリー」という存在に向けて胸の内を明かすような内省的で繊細な歌詞世界を引き立たせている。本稿執筆時点ではまだMVは公開されていないが、どんな映像とともに届けられるのかもとても楽しみだ。

器用でいて人懐っこい、それでいて奥深さも感じさせるsanetiiの音楽に、ぜひ今後注目してほしい。(有本早季)


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