Adoは、「Ado」というその名前について、狂言におけるシテ(主役)に対してのアド(脇役)に由来することを、デビュー以来、多くの場で表明してきた。だが、その名前にもうひとつ別の意味が隠されていることを今の私たちは知っている。
Adoの中には、Aoがいる。
今年2月に刊行されたAdoの自伝的小説『ビバリウム Adoと私』の主人公の名「沢木アオ」。Adoはその名前を通じ、自分自身のそれまでの人生について小説の中で語った。その「沢木アオ」という名前もまた仮の名ではあるのだが、それでもAdoは「アオ」という名に、時代を牽引するカリスマシンガーの内側にある、柔らかく、哀しく、小さく震えていて、でも勇敢な、AdoがAdoになる前からその存在の中に宿し続けている根源的なものを託した。そのAdoの「もうひとつの名」を冠したライブが、自身にとって過去最高キャパシティとなるワンマンとして開催された。
7月4日、5日の2日間にわたって日産スタジアムで開催された、「Ado STADIUM LIVE 2026『Ao』」。2日間で約14万人を動員した、Adoにとって初めての日産スタジアムワンマン。私はその2日目となる7月5日の公演を観ることができた。そうそう忘れることなどできそうにないライブだった。(以下、本誌記事に続く)文=天野史彬 撮影=Viola Kam (V’z Twinkle)、Mari Kinoshita
(『ROCKIN'ON JAPAN』2026年9月号より抜粋)
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