リキッドルームで20日間にわたって繰り広げられてきた、キューン設立20周年&キューンミュージックへの名称変更を記念する企画『キューン20イヤーズ&デイズ』も遂に千秋楽。数々のユニークな共演の果てに相見えるのは、電気グルーヴとギターウルフだ。こうしてグループ名を書き連ねるだけでもドキドキするような組み合わせ。突き抜けたキャラクターと、いわゆる「メジャーらしい」「邦楽らしい」音楽性の枠を軽く逸脱して可能性を押し広げてしまった表現スタイル。長年に渡ってそんな彼らをサポートしてきたレーベルこそがキューンなのだという、どこか誇らしげに目に映るブッキングですらある。
所属アーティストが次々に登場してコメントを寄せる映像が流されたのち、ステージの幕が開くと同時にフロアを揺るがす“少年ヤング”のトライバルなテクノ・ビート。システム卓に陣取るのはもちろん石野卓球、そしてサポートを務めるagraphこと牛尾憲輔である(ちなみに彼は、公式ツイッターによればLAMA/agraph/電気サポートという形で『キューン20イヤーズ&デイズ』最多出演とのこと)。電気グルーヴとリキッドルームというこれ以上無い相性、そこにハットを被ったピエール瀧も登場して大歓声を浴びる。卓球の力強い歌声とお馴染み「電気グルーヴでございまーす!!」の挨拶が、鉄板の高揚感をもたらしてくれるのだった。
“Acid House All Night Long”のVJではキューン20周年のロゴとスマイリー・マークが入り乱れ、卓球に負けず劣らずの昂ったラップを繰り出す瀧。トラックの響きはもちろん最高なのだが、電気は「言葉のリフレインのインパクト」という点でもポップ・ミュージックの遥かな高みにいることを再確認するパフォーマンスだ。脳みそにこびりついて離れない言葉のフックも含めてグルーヴしてしまう、この感じ。シームレスに鋭利なブレイクスの乱舞で繰り出される“SHAME”、バウンシーなビートに卓球がけたたましくホイッスルを吹き鳴らす“SHAMEFUL”と、最新シングルを絡めてここまで一気に持って行ってしまった。
卓球:「最終日ってことで、キューンが始まった頃からいるのってうちらと真心ぐらいなんだけど。ロートルってやつ」
瀧:「老害? たいしてヒット曲もないまま」
卓球:「たまにロッキング・オンのフェスとか行っても、よそのアーティストが誰も声かけてくれないっていうね。今、ピエールっつったら中野でしょ。それと手品の人。3番目だよ、もう」
瀧:「キャリアだけあってめんどくさい」
卓球:「楽屋に、長澤まさみとこいつの相合傘が書いてあって。長澤まさみ本人が書いたらしいんだけど、それを見たこいつの愚息がギンギンだよ」
瀧:「今日、途中で一端ハケるかも知れない。トイレに」
この後も2人の話は続いたのだけれど、大方の予想通りエグめの下ネタがエスカレートしたので割愛します。そして「うちらは2年前に20周年を迎えて、そのときに作った歌が、もう2度とやることはないと思ってたんだけど、今日はキューン・ヴァージョンでやります!」と卓球。なるほどという“電気グルーヴ20周年のうた”で「おめでとうございまーす!!」と最終日らしい華々しさの祝砲を放つのだった。
後半戦は怒濤の名曲連打である。ロッキンかつマッシヴにリアレンジされた“ガリガリ君”。「ガーリガリ!」のコール&レスポンスを先導する瀧が「ガリガリ君は発売から31年、そしてキューン20周年、これからもよろしくお願い致しまーす!」と名調子でアニヴァーサリー感に追い打ちをかける。その直後にじわじわとフェード・インしてくる《ウーベビベビ♪》、《フーワッ、フーワッ♪》のフレーズ。おおお、上がる、“FLASHBACK DISCO”だ。赤いTシャツに着替えた瀧から、手を左右にヒラヒラさせるダンスが広がる。
スティックを瀧に手渡ししつつ立ち位置を交代、卓球が前線でマイクを握るのはキラッキラにモダナイズされた“N.O.”! そしてツイン・ラップを繰り出しながら、フロア一面のジャンプを巻き起こす“電気ビリビリ”!! 一瞬だったけど、この2人が笑顔で並んで煽り立てる構図にグッときてしまった。本当にステキなおっさん達だ。スクリーンにはキューンミュージックの新ロゴ・マークに似せてデザインされたDiscoの文字が浮かぶ。うう、ギターウルフも早く観たいけど、電気のライヴも終わって欲しくない。
ところが、31日間27公演の全米ロード直後のギターウルフ。こちらがまた凄かった。いつもどおりなのに凄かった。いつもどおりでシンプルなものを、めちゃくちゃ危うい、そして途方も無くロマンチックな瞬間に変えてしまう魔法こそがロックンロールなのだと、そんなパフォーマンスであった。照明で朱に染まるステージでトオル(ドラムウルフ)とU.G(ベースウルフ)が音出し一発、そこにギターを握りしめたセイジ(ギターウルフ)が登場し、仁王立ちで缶ビールを一息に飲み干す。
トオルのパワフルなタム・ロールの中でセイジさんが咆哮を上げる“狼惑星”に続いては、ドタメシャなノイズを撒き散らしながらそれでも爽快感いっぱいに疾走する“オールナイトでぶっとばせ!!”だ。スタッフがギターの交換を申し出るも、セイジさんこれを無視。ひた走る。生き様がそのまま音、そのままパフォーマンスなのである。U.Gの野太いヴォーカルも加わる“ミサイルミー”から背面ギター・プレイも見せる“ジェット ジェネレーション”へ。定番曲ばっかりなのに、今夜だけのスペシャルな、ヤバいことが起こっているように見えてしまうのはなぜなのだろう。
股を大きく開いてウインドミルのリフでたっぷり焦らしながらの“UFOロマンティクス”。轟音とシャウトの向こう、仄かに美しい旋律が聴こえて来る。キャリアを重ねてますます磨きがかかるこの辺りの美学については、トオルが革ジャンを脱ぎ捨ててからの新曲“メソポタミアロンリー”で極まっていった。ブルージーで煙たいのに、ロマンチックな思いがだだ漏れになってしまうラヴ・ソングである。まあ、それもベタベタした余韻は残すことなく、一瞬のうちに“ケンカロック”のバンド一体型リフに掻き消されてしまうわけだが。
“ワイルド ゼロ”の虚無を振り切ろうとするデッド・ヒートが繰り広げられたのち、「ラスト2ソング! キック・アウト・ザ・ジャムズ、マザーファッカーズ!!」とセイジさんが叫び声を挙げてラスト・スパートに突入してゆくのだが、ここからが一層凄まじかった。例の、オーディエンスをステージ上に引っ張り上げてギターを弾かせるロックンロールの儀式。熱気最高潮の最前線で革ジャンを着たまま盛り上がっていた、気合いの入った男性が選ばれたのだが、ギターを掻き毟るたびに何度もセイジさんに制止されてはやり直す。「ギターなんて押さえる必要ないんだよ! ワン・フィンガー! ジェット・ワン・フィンガー!!」。観ているだけでも手に汗握る緊張感の果て、大振りなストローク音と共に訪れた開放感・快感は半端ではなかった。ロックンロールだ。
フロアに飛び込んだセイジさんはオーディエンスの頭上をフロア中央まで移動し、無数の腕に支えられたまま立ち上がってシャウトを決める。ステージに戻るとギターを抱えていた彼にもっとやれ、もっとだ、という調子でけしかけ、ステージ上に仰向けに寝転ばせて(プロレスで言うバック・ドロップみたいだった)弦を掻き毟らせる。彼の腕を掲げて讃えると、完全にフリーク・アウトした爆音の中でセイジさんは床にギターを叩き付け、ネックをへし折ってしまった。代わりに届けられたギターはアンプから音が出ない。それでも全身全霊を込めて掻き毟り、フィニッシュへと持ち込むのだった。
アンコールではクールかつソリッドなロック・ナンバーを連発、“環七フィーバー”までの3曲をプレイしたが、まったく疲れを見せずにダブル・アンコールへと突入。“インベーダーエース”の後、「高校生いるか? 高校生は手を上げろ。次の曲は、“高校生アクション”。この曲は、ちゃんと聴いて欲しいんだ!」とここにきてスタッフがギターをチューニングする。腰に手を当てて微動だにせず待つセイジさんと、その間ひたすらボトムをキープし続けるトオル&U.Gである。そしてタイトに決めるこの曲の最中、セイジさんはまたもやオーディエンスをステージに引っ張り上げ、4人+3人+2人の上に自らが乗るピラミッドを作り上げた。一度は失敗してしまったものの、二度目には成功。「Hey! Hey! 高校生アクショーン!!」の掛け声で崩れ落ちてみせる。最高だ。
客出しSEが鳴っていても、まだセイジさんはギターを掴み取ってステージ袖から飛び出そうとしていた。ようやくファンにお礼の言葉を掛けて去って行ったけれど。まるで約束事みたいに、こんなフリーキーでぶっ飛んだ時間と空間を作り上げてしまうアーティストが、日本のメジャーにもいるのだ。これからも、そんなアーティストを発掘して、育てて、紹介し続けて欲しいと強く願うばかり。あらためて、キューンミュージック20周年、おめでとうございます。(小池宏和)
セットリスト
■電気グルーヴ
01: 少年ヤング
02: Acid House All Night Long
03: SHAME
04: SHAMEFUL
05: 電気グルーヴ20周年のうた
06: ガリガリ君
07: FLASHBACK DISCO
08: N.O.
09: 電気ビリビリ
■ギターウルフ
1.狼惑星
2.オールナイトでぶっとばせ!!
3.ミサイルミー
4.ジェット ジェネレーション
5.UFOロマンティックス
6.メソポタミアロンリー(新曲)
7.ケンカロック
8.ワイルドゼロ
9.火星ツイスト
10.KICK OUT THE JAMS
11.RUMBLE
アンコール1
12.Green Onion
13.JETT LOVE
14.環七フィーバー
アンコール2
15.インベーダーエース
16.高校生アクション
『キューン20イヤーズ&デイズ』電気グルーヴ/ギターウルフ @ LIQUIDROOM ebisu
2012.04.30