10年以上のキャリアを持つ洋楽ロック・バンドのなかで、こういうふうに客の期待に応えてくれるバンドはいないかもしれない。スーパー・ファーリー・アニマルズのライブにはいつだって、こちらが期待する「いつもどおり」がある。マイナー・チェンジはあるけれど、その「誤差」もちゃんと気持ちいい、そういうライブを彼らはいつも見せてくれるのだ。今回の来日もまた、そういうものだった。
8作目となる最新作『ヘイ・ヴィーナス!』を引っさげてのツアーで来日したファーリーズ。『ヘイ・ヴィーナス!』のアルバム・ジャケットは、現代ポップ・アートのパイオニアである日本人グラフィック・デザイナー/イラストレーターの田名網敬一によるもので、ファーリーズの世界観をより深く伝えてくれるもの。いつもの「扮装」ではなくプレーンなジャケットを羽織ったフロントマン、グリフの胸の部分には、目を凝らしてみるとアートワークでも使われていたイラストが!
サッカーの試合よろしく、いつものように前半と後半に分けられたライヴは(中間では「ハーフタイム5分間」というボードを掲げるお茶目な演出もあり)、前半がゆったりとしたサイケデリアに包まれ、テクノ・タイムで幕を開けた後半は“リングス・アラウンド・ザ・ワールド”や“ザ・マン・ドント・ギヴ・ア・ファック”など往年の必殺ナンバーが繰り出されるという構成。ウェールズ訛りのグリフのMCにいつものとおりほっこりさせられ、途中では恒例の被り物も。そして最後にボードに掲げられたメッセージは、「正直に生きろ」、だった。他のバンドがやれば、笑ってしまうかもしれない。でもファーリーズだから、感動させられるのである。自然体とユーモア、職人ばりの頑固さ。それらを兼ね備えている彼らだからこそ、できることなのだと思った。
全編通せば2時間近いライブとなったが、終わってみればじつにあっという間だった。ビールが飛ぶように売れ、皆思い思いに踊り、「楽しかったね〜」と言いながら帰路に着く。終演後、駅へと向かう客の群れには、「予定調和」とは異なる安心、「来てよかった」という満足感が溢れていたように思う。これを変わらずに提供し続けることができるバンドというのは、やっぱりあんまりいない。(羽鳥麻美)
スーパー・ファーリー・アニマルズ @ 恵比寿リキッドルーム
2007.11.10