それにしても、1997年のUKシーンは本当に面白かった。ブリットポップのバブルが弾け、その後の長きにわたるギター・ミュージックの停滞を呼んだ終わりの年としてのネガティブな評価の一方で、画一性が打ち壊され、新しいアイディアやイノベーションがいくつも生まれた始まりの年としてのポジティブな評価もある。ネガとポジ、終わりと始まりが交錯した年、まさに『OK コンピューター』的な過渡期、端境期の1年間だったのだ。Radiohead - Karma Policeここではそんな『OKコンピューター』を含む、1997年のUKシーンを象徴する傑作アルバムを10枚選んでみた。
BLUR / ブラー
1997年のUKロックは、デーモン・アルバーンの「ブリットポップは死んだ」発言と共に、ブリットポップの誰よりも当事者であったブラーが、いち早く、そして明確にその終わりを告げた『ブラー』と共に幕を開けた。
カラフルなメロディとシニカルな歌詞、つまり極めて英国的なマナーを廃し、グレアムのギターはぐっとノイジー&ラフになった本作は、ペイヴメントやベックといった当時のUSオルタナからの影響を多大に感じさせる一作となっているが、何よりも彼らがここで『モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ』から3枚にわたり築いてきた定型を脱ぎ捨て、まるで二度目のデビュー・アルバムのように瑞々しいギターを走らせ始めた様は鮮烈だった。そう、このアルバムも『OK コンピューター』に匹敵する「終わりと始まりの交差点」だったのだ。Blur – Song 2
CHEMICAL BROTHERS / ディグ・ユア・オウン・ホール
ブラーやオアシスがそれぞれにブリットポップの幕引きを模索する一方で、そのギター・ミュージックの混乱とはあまりに対照的なブレイクスルーを見せたのがケミカル・ブラザーズであり、プロディジーだった。彼らが1997年にリリースした2枚のアルバムは当時ビッグ・ビート、さらにはデジタル・ロックなんて呼ばれていたが、要するにそれは売れ線の「ポップ」にとらわれ硬直化するロックを尻目に、エレクトロミュージックが肉体性も、ライブの強度も、さらにはポップ・ミュージックとしての精度までも奪い去っていった、あまりにも鮮やかなメインストリームの形勢逆転だった。The Chemical Brothers – Setting Sun
PRODIGY / ザ・ファット・オブ・ザ・ランド
プロディジーの『ザ・ファット・オブ・ザ・ランド』は、英国内における80年代末からのロックとダンス・ミュージックの相互作用のサイクルすらも突き破り、全英全米ダブル1位という快挙を達成。オアシスの『モーニング・グローリー』ですら成しえなかった、圧倒的な成功だった。
“Firestarter”を聴けば一発で理解できるのは、これはビッグ・ビートやテクノ以前に、何よりもパンクだったということだ。本来ギター・ロックが鳴らすべきだったパンクのカタルシスを、いかに当時のUKロックが忘れ去っていたか、ということだ。
余談だが90年代末、ノエル・ギャラガーが「オアシスでもプロディジーのようなサウンドをやってみるのはどうか」と提案したところ、リアムに「プロディジーって頭にレタスくっつけたやつ?」と言われて諦めた、というエピソードも。The Prodigy - Firestarter