今年9月の幕張メッセ2Daysを皮切りに、来年2月まで約5ヶ月・計29公演にわたって開催中の全国ツアー「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」。
全国アリーナ会場と東名阪ライブハウスの日程が複層的に入り混じる中、新木場STUDIO COAST公演2日目のステージに立ったBUMP OF CHICKENの4人が体現していたのは、結成21年目のタフな音の肉体性をもって高らかに鳴り渡る、音楽への初期衝動と根源的な喜びそのものだった。
4人の揺るぎないアンサンブルが、どこを切り取っても名場面と呼ぶべき多幸感を生み出したこの日のライブ。その中でもひときわ際立っていたのは、ステージとフロアの近さ以上に、バンドと観客が一丸となって描き出す一体感だった。
そして、そのワクワクするような開放感は取りも直さず、結成21年目にしてなおも沸き立つ初期衝動を、藤原/増川/直井/升が今この瞬間に確かに感じていることの表れでもあった。
増川「……急に恥ずかしくなってきた(笑)」
――といったバンド黎明期のエピソードを振り返るやりとりに、BUMPの核心に直に触れるようなリアルな感覚がフロアに広がり、会場の一体感をよりいっそう高めていく。
「俺んちの、雨戸を閉めた六畳間の中で、だいたいの曲が生まれた」と10代の頃を回想していた藤原。「自転車しか漕いでなかった奴が、ギター持つと、こんな景色にも出会えるんだなあと思って――21年やってるわけですけども、六畳間の雨戸を閉め切って曲書いてた頃なんかには、なかった曲があるんだよね。みんなで歌える曲ってのがあるんだよね。なんかね、作る意味が今はあるんだ。それがすげえ嬉しい、一緒に歌おう!」……一切の虚飾を排した藤原の言葉に導かれて、オーディエンスの歌声がさらに熱量を増していったことは言うまでもない。
そんな中、初期の名曲のモチーフを総括するような詞世界を持つ“fire sign”(『ユグドラシル』/2004年)が、増川・藤原・直井のブルースソロバトルや観客のコーラス、炎の色彩を照らし出すPIXMOBの光と乱反射し合いながら、壮大な高揚の風景を繰り広げていた。
「俺、高校やめたばっかで、『何しようかな』、『どうすればいいのかな』って――考えたって答えもないし、ほんと何にも考えることないまま、ただ漫然と『今、一番やりたいこと/やるべきこと』みたいな感じでギター弾いて、ちょっとずつ曲を作って……それを今、当時来たこともない、聞いたこともない新木場っていう場所で、こんだけの人が聴いてくれてて。俺じゃねえ奴が、こんだけ声合わせて歌ってくれるっていうのは――そんなの、ほんと想像つかなかったんだよ」
万感の想いとともに語る藤原に、オーディエンスがじっと聞き入っている。そして、「ベタなこと言うよ? 『音楽やっててよかったな』って、みんなに思わせてもらった。本当にどうもありがとう!」という心からの言葉とともに深々と一礼する藤原に、割れんばかりの拍手喝采が降り注いでいった。
ひたむきに音楽を探求し続けてきたBUMP OF CHICKENの「原点」と「最進化形」に同時に向き合うような至福の時間が、そこには確かに流れていた。ツアー次回公演は11月18・19日、広島グリーンアリーナ!(高橋智樹)
終演後ブログ