1.ナンバーナイン
2.フローライト
3.メランコリーキッチン
4.あたしはゆうれい
5.翡翠の狼
6.Black Sheep
7.砂の惑星 <新曲> ※初音ミク「マジカルミライ 2017」テーマソング
8.orion
9.ゆめくいしょうじょ
10.ゴーゴー幽霊船
11.駄菓子屋商売
12.ドーナツホール
13.アイネクライネ
14.LOSER
15.ピースサイン
16.love
17.fogbound <新曲>
18.春雷 <新曲>
(アンコール)
En1.アンビリーバーズ
En2.Neighbourhood
ホール公演ということで、もしかするとストリングスや管楽器などを加えたパフォーマンスが行われたりするのだろうか、という考えも頭をよぎったが、シークエンスを絡めた4人のサウンドは無駄な力みを感じさせることもなく、広大な会場に見合ったスケール感で届けられる。バンドの基礎体力値を向上させ、きっちりと仕上げてくるところが素晴らしい。両腕を広げてオーディエンスの歌声を誘う“フローライト”、オレンジ色の照明に染まりながらエモーショナルに届けられる“メランコリーキッチン”ときて、「どうも米津玄師です! 今日はよろしく!」と簡潔に、しかし気合漲る挨拶を投げかけるのだった。
ステージも後半に差し掛かるというところで、今度は“ゴーゴー幽霊船”に“駄菓子屋商売”、“ドーナツホール”のセルフカバーといったストレンジなロックの爆走ナンバーでホール内を沸騰させてしまう。そして米津自身もエレクトリックギターを掻き鳴らし、壮麗な轟音のレイヤーを生み出す“アイネクライネ”だ。本来の曲の良さもさることながら、やはりホールに鳴り響かせるための音の構築ぶりが見事である。さらに、ハンドマイクで身を乗り出しながら歌われる“LOSER”へと繋ぐのだから、盛り上がるなという方が無理な話だろう。バンドが勇壮なロックシンフォニーを奏で、そして歌われる“ピースサイン”もまた、こんなホールにこそ相応しいパフォーマンスだ。
「子どもの頃は、早くここから抜け出したいと思っていました。故郷があまり好きじゃなくて、遠くに行きたいと思っていたんだけど、今はこんなふうに東京で、メンバーがいてスタッフがいて、お客さんも5000人ぐらいいて……もし、今いる場所が嫌だなあと思っている人がいて、何か言えることがあるとしたら……遠くに行け、って言うね(笑)。ありがとう」。
そして届けられるのは、フォーキーな曲調から豊かな郷愁が立ち上ってくる“Neighbourhood”だ。ただがむしゃらに、一人で思いを押し殺して前へ前へ、上へ上へと進んできたわけじゃない。そこにはとても人間臭い、分かち合われるべき記憶と感情があったのだということ。4人だけの斬新なロックシンフォニーを、この大きな会場に響かせなければならなかったのもまさにそれだろう。米津玄師の表現はいつでもこんなふうに人々に語りかけ、彼自身の居場所を作り上げてゆくのだ。(小池宏和)
終演後ブログ