“砂の城”や“男は不安定”などの前半戦には、永遠に繰り返されるかのようなリフに酔いしれながら、生温かいものに包まれているかのような感覚に陥ってると、いきなり激しく鳴らされる坂本のギターソロで心を掻き毟られ、その即興ギターがどこまで広がっていくのか、どこに到達するのか不安と期待にさいなまれる音世界。
中盤の“できない”では坂本がギターを置いてマラカスを手に取った瞬間「おぉ〜!」と歓声があがったり、そして、そのマラカスを振りながら足の関節がないかのようにぐねっぐねっと踊る姿を観て観客も沸き立つが、ここまではどちらかというと、ゆらゆら帝国が紡ぎだす音にどっぷり浸ることに快感を覚える時間帯だった。
そして後半はというと打って変わって“わかってほしい”や“すべるバー”の怒涛の展開で、観客も狂ったもん勝ちのように暴れだし、“ロボット”では柴田のあまりにも激しいドラミングにドラムセットの一部が倒れるほど! そして身体は常に微動だにしないけど、亀川から鳴らされるベース音は頭上から降り注がれるような躍動感を持ちながらも安定した響きが頼もしい。
相変わらず坂本から発される言葉は今夜も少なかったが、「次が最後の曲です」と言った後、「今夜はほんとにありがとう」と言われただけでなぜか胸がジーンとしてしまった……。そして始まった“パイオニア”。突如STUDIO COASTの天井にある巨大ミラーボールが輝きだし、煌びやかな明かりがぐるぐる廻り、現実からちょっとだけ向こうの世界に入り込んだかのような夢現な空間がこれまたエンディングに相応しい。ほんと至福の2時間でした。(石井彩子)