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    X JAPAN @ 東京ドーム2日目『無謀な夜』

    『破壊の夜』『無謀な夜』『創造の夜』と名づけられた、X JAPAN復活3デイズの2日目。なお、初日だった昨日『破壊の夜』は、開演が2時間以上押し、全8曲で演奏終了。最後にYOSHIKIは失神して倒れ、運ばれた――というニュースが既に各メディアを賑わせているが、そしてそれに関してネットとかで「短い」とか「曲が少ない」とか「何故押した」とか、さまざまな声が飛び交いまくっているが、ひとつ言っていいでしょうか。

    元々そうじゃん、Xって。解散前、普通に活動していた頃も、開演が押したりすることはしょっちゅうあったし(2時間以上っていうのがあったかどうかまではさすがに憶えていませんが)、そもそも押さなくたって、いつも全11曲とかそのくらいだった、Xのライヴは(その合間合間に各メンバーのソロ・コーナーがあって、全体の尺は2時間以上あったりしたけど)。同じように、YOSHIKIが倒れることも一度や二度ではなかったし、それでライヴが中止になったり延期になったりすることもあったし、その他も予期せぬトラブルやハプニングが常にてんこもりだったし――つまり、「音楽」とか「ライヴ」としてだけではなく、そういう「事件」とか「現象」まで込みで、我々は――これ、言い方が適切じゃないけど――Xに楽しまされていた、とすら言える。そこにも、ワクワクドキドキハラハラしていたと言える。

    それらの事件、ニュース、海外進出、なにかというと金屏風の前で記者会見――解散直後のHIDEの急逝だけは、本当にいらない事件だったけど、あとTAIJIが脱退した時には複雑な気持ちになったけど、それら以外は基本的に「それも含めてXじゃん」だった、という気がする。だって、いないもん、そんなXみたいな、豪快でむちゃで予測不可能なバンド、当時も今も。って、そこまで言うんだから、自分も覚悟して待ちます、始まるまで。

    と、ドームの記者席でここまで書いたら、いきなり客電が落ちてライヴが始まってしまった。腕時計を見る。18:05。わずか5分押しでした。すいません、昨日延々と待ったみなさん。どの曲でどういうふうに始まったか書くと、ネタバレになっちゃうので書きませんが(って、明日も同じ曲順ではないと思うけど、念のため伏せておきます)、かなり意表をついた、そしてその意表のつきかたがとてもいいスタートだった。

    にしても、上半身裸でドラムを叩くYOSHIKIも、PATAもHEATHも、MCで「この10年間ほんとにいろんなことがありましたが……PATAちゃんも、この10年間で10歳年取った?(と、PATAにきく) ……年取ったそうです」などととぼけたMCをしていたTOSHIも、驚くほど外見が変わっていない。特にYOSHIKI。相変わらずすごい背筋で、相変わらず首や腰に負担がかかりそうな叩き方(前半はかなり抑えてたけど、本編ラストでは往年のあの感じに戻ってました)。でも、観ていて、全体に、「懐かしい」というのではない。「あれ? Xってずっとやってたっけ?」って錯覚しそうな、そんな、なんか不思議なタイムスリップ感があった。曲も、往年の名曲・代表曲たちだし。

    あと、全体の構成や緩急や演奏そのものが、昨日そんなバタバタしていたというのが信じられないくらい、しっかりハマっていていい感じだった。昨日バタバタしたお陰かもしれないけど、お陰で、これまでで最も落ち着いてじっくりと、Xのライヴを楽しめた気がする。曲数も昨日より多かったし、予定の通りやり切れたと思われます。それから、アンコールで、かつてのXではまずなかった演出も施されていたりしました。

    そもそも本日は、『破壊の夜』と『創造の夜』の間の休憩日のはずだったが、チケットがあまりにも早く売り切れてしまったので急遽やることにした、だから『無謀な夜』というタイトルになった。ということだけど、内容の充実ぶり的には、むしろ今日が『創造の夜』なんじゃないかと思った。どうするんだろう、明日。

    あと、画面上でありし日のHIDEの姿を映しながら演奏する、というのはきいていたが、ほんとに曲と映像がぴったり合っている。どうやってここまでぴったり合わせているのか不思議だけど、画面だけ観ていると本当にステージの上にHIDEがいるみたいで、とてもしみじみしました。だって、PATAとツイン・リード弾いて、それがぴったり合ってたりするのだ。実際に弾いているSUGIZOには申し訳ないですが。そういえば、開演前、ドーム周辺やドーム内で見かけたコスプレファンたちのうち、8割がHIDEのそれだった。それから、10年前と比べて、客席にとても男が増えた。

    さらに詳しいレポートを、4月19日発売のロッキング・オン・ジャパン5月号で大々的にお届けします。あと、没後10年・hideのラスト・インタヴューを、再掲載します。そちらもぜひ。(兵庫慎司)
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