片平里菜@LIQUIDROOM

片平里菜@LIQUIDROOM

とても楽しく愛嬌溢れる、それと同時に、強い意志と決意がひしひしと伝わる、濃密なステージであった。8月に初のフル・アルバム『amazing sky』をリリースした片平里菜の、2度目のワンマンツアー(そちらとは別に、弾き語りツアーも行って来ている)。11/6の名古屋で幕を開け、12/13の故郷・福島でファイナルを迎える今回のツアーは、全6公演がソールド・アウト。その4本目、みっちりとオーディエンスで埋まった東京・リキッドルーム公演の模様をレポートしたい。福岡及び福島でのステージが残されているためセットリストの掲載は控えるけれども、以下、演奏曲表記など、少々のネタバレにはご注意を。

「2ndワンマンツアー2014『amazing sky』へようこそー! こないだが……どこ?……大阪で……こないだって昨日のことだ(笑)。初めての方、いらっしゃいますか? ファースト・インプレッションが……ファースト・インプレッションてなに?(笑)」といった調子で、序盤からたどたどしいMCで笑いを誘う片平里菜だったが、その拙さを隠そうともしないアッケラカンとした姿勢が、ファンとの間に親密さを育んでしまっている。何より、彼女の心情と視界を鮮明に伝える歌詞が、メロディが、まるでフロアの宙空に像を結ぶように浮かび上がるソングライティングの才覚は、ステージ全編を通してまったく揺るがなかった。

片平里菜@LIQUIDROOM
今回のツアーをサポートするバンド・メンバーは、ベーシスト(バンマス)にtatsu(LA-PPISCH)、ペダルスティール/スティールパン/ティプルに田村玄一、ドラムスに伊藤大地(SAKEROCK、グッドラックヘイワetc.)、そしてギター/ヴァイオリンにコジロウこと佐々木貴之(ゆずのサポートなど)という実力派揃い。ときに力強く、ときに大らかでふくよかなバンド・サウンドは、ペダルスティールの印象深いリフレインでダンス性を後押しする“HIGH FIVE”や、強烈なドラム・ソロも挿入されオーディエンスのコールを誘う“Hey boy!”といったロック・チューンの盛り上がりをがっちりと支えていた。鉄道好きの伊藤大地に話題を求め(たのに片平自ら「トトロのネコバス」に話を脱線させる)、そこから伊藤×田村の鉄道をネタにした音遊びが繰り広げられたり、ダンスの上手な佐々木が“ビリー・ジーン”のフレーズを弾きながらムーン・ウォークを披露するなど、和気あいあいとしたムードに高い技巧が加味されステージを彩っていた。

片平里菜@LIQUIDROOM
片平里菜のソングライティングは、そんな凄腕メンバーの音像さえ搔い潜って、彼女の個性をくっきりと浮かび上がらせてしまう。「閃光ライオット2011」での活躍が注目を集め、後のデビュー曲となった名曲“夏の夜”。そして、エモーショナルでありながらもしなやかな女子メンタリティを鮮やかに描く“女の子は泣かない”(この曲のモデルになったという友人も来場していたそう)や“Oh JANE”といったアンセム群。FM YOKOHAMAでパーソナリティを務める番組『カタコトラジオ』での生演奏を引き合いに出しながら、未だ音源化されていない楽曲も披露されたのだが、そんな初めて触れる楽曲でさえ、思いや情景がしっかりと伝えられてしまうのである。フレッシュかつ伸びやかな歌声を放つ一方、ときには歌メロが揺らぐ場面もあったけれど、片平里菜の「伝わる」ソングライティング術はやはり驚異的だ。

この春に東京での生活を始め、故郷・福島でのライヴで飯館村を通って南相馬市へと向かう際に目の当たりにしたという情景を振り返りながら、「帰ると、収束作業のニュースとか当たり前なんですけど、真っ黒な袋(フレコンバッグ)が至る所に置かれてて、放射性廃棄物が。すごい悲しいなって、なんで東京で私、ふわふわしてって……ここは安全だって思い込むことほど、怖いことはないなって。単純に言えば、平和ボケしてたなって」「3.11の年のお盆に、お墓参りをして、それまでとはまったく違って見えた景色を綴った歌です」と語り、披露された“心は”の《もう少しだけ/力をください》という若く、率直な思いに場内が満たされると、彼女は「ぜひ、忘れないで欲しいと思います。まだまだ力が必要だと思います。復興まで」と言葉を添えていた。

片平里菜@LIQUIDROOM
また、“始まりに”の歌詞を引き合いに出すようにしながら、彼女はこんなふうにも語っていた。「ステージでこんなこと言ったら格好わるいけど、私の代わりなんて幾らでもいるんじゃないかなって、思うわけです。これからも、私にしか歌えない歌を歌っていくんで、また機会があったら、聴きに来てください」。幼少時から国内外のバンドやシンガーに親しんできたという片平里菜は、しかしその影響ばかりではなく、彼女自身の中から湧き出るリアルな覚悟と決意を、片平里菜の歌でしかありえないソングライティングに込めているのだ。そう痛感させられた一幕だった。

誰の借り物でもない、若い思いと視界を音楽に乗せて放つ姿は、希望そのものでしかなかった。彼女はこの年末、COUNTDOWN JAPAN 14/15の2日目(12/29)にも出演予定。こちらもぜひ楽しみにしていて欲しい。(小池宏和)
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