インタビュー=田中大
──Laughing Hickの成り立ちも少し聞きたいのですが、バンドはいつ結成されたんですか?「心臓は邦ロック。サウンドや音像みたいな部分は、洋楽でありたい」ということは、コンセプトにしている
ホリウチコウタ(Vo・G) 2017年6月21日? 3ピースでやってたんですけど、2023年1月22日に、あかりが正式加入して現体制になりました。
──あかりさんは、もともとサポートだったんですよね?
あかり(B) はい。2020年くらいからサポートで関わっていました。J-POPさというか、邦ロックなんだけどキャッチーな感じがあるバンドだというのが、もともとのLaughing Hickの印象でしたね。関わるようになると情に厚いふたりであることも知って、そういうところにも惹かれるようになりました。
──バンドを結成した頃に思い描いていた方向性、音楽性は、どのようなものでした?
ホリウチ 前身のバンドはリードギターのメンバーが結成した4人組で、ONE OK ROCKみたいなバンドになりたかったんです。リードギターが抜けて、「3人でどうやってこう?」となった時にいろいろ考えて、クリープハイプ、My Hair is Bad、RADWIMPSとか、好きだった邦ロックの方向に⋯⋯なんて言うんだろう?
TAICHI(Dr) シフトチェンジ?
ホリウチ そう!(笑)シフトチェンジしていきました。日本語で歌って、シンプルなんだけどエモーショナルになれるというか。でも、僕らの今やってる音楽は、意外とギターの音圧、音の壁感みたいな感じはあって、前身のバンドの頃のままの部分もあるんですけど。
──後ほど詳しくお聞きする部分ですが、洋楽も好きなんだろうなと感じます。日本語の音の響きをうまく嵌めて、グルーヴィーにすることを考えて作っているじゃないですか。
ホリウチ とても嬉しいですね。「心臓は邦ロック。サウンドや音像みたいな部分は、洋楽でありたい」ということは、コンセプトにしています。
あかり 私は洋楽を聴いてこなくて、邦ロックがずっと大好きだったんです。このバンドに関わるようになってから洋楽も少しずつ聴くようになって、リズムの乗り方、音の分離感的なものの違いとかを感じるようになっています。
ホリウチ 洋楽を意識して作ってるので、エンジニアさんともいろいろ相談しています。「リズム、ベース、ドラムを効かせつつ、歌ものでもある」というバランスが難しいんですけど。
TAICHI 音作りもそうですけど、「鳴ってるけど鳴ってない」「鳴ってないけど鳴ってる」みたいなニュアンスがある気がして。洋楽って「空白をどれだけ楽しんで表現できてるか?」みたいなのがある気がするので、それを邦ロックに落としこみたいんですよね。
──みなさんそれぞれのルーツとしている音楽は、どの辺りなんですか?
あかり 私はBUMP OF CHICKENさん、RADWIMPSさんが、ずっと大好きです。米津玄師さんの曲も聴いたり、フォーリミ、アジカンも好きですし。
ホリウチ 僕は幼少期は親の影響で(ザ・)ビートルズとBOØWYを聴いて育ちました。あと、小学校の時に『スクール・オブ・ロック』を観まして。
──ジャック・ブラックの?
ホリウチ はい。あの映画を観て「ロック、かっこいい!」ってなってレッド・ツェッペリン聴いてみたり、オアシス、ウィーザーとかも聴きました。その後、中学に入ってからRADWIMPS、BUMP OF CHICKEN、ELLEGARDENというような感じでした。
──TAICHIさんは?
TAICHI 垣根なく邦ロック、洋楽を聴いていたんですけど、いちばん影響を受けたのはONE OK ROCKです。TOMOYAさんのドラミングがすごく好きなので。
──なるほど。Laughing Hickの音楽が注目を集めた大きなきっかけは、TikTokでしたよね? “愛してるって”“⼥だから”とかがいろんな形で使われましたが、特に注目されたのは歌詞でした?
ホリウチ はい。歌詞を切り取られることが多かったですね。
──切り取られると、全体で描いていることが正しく伝わらないこともありますよね? 歌詞は逆説表現もするものだし。
ホリウチ そうなんですよ。一部分しか知らない人が言葉尻を捉えてコメントすることも多かったんです。曲が広がっていく嬉しさもあったんですけど、厳しいお言葉もいただきました。だからどこを切り取られてもいいように展開を増やすようになったりしていますね。
TAICHI TikTokのコメントを見て、「曲を最後まで聴いてくれよ」って思いましたけど(笑)。
あかり でも、そういうきっかけでLaughing Hickを聴いてくれるようになって、ライブハウスに来てくださる人も増えたんです。
──5月1日に『ハロー ノットグッバイ』が配信リリースされて、ツアーも始まっていますが、どのような反応を感じていますか?人間くささ、汚さ、みっともなさまでを歌っていくバンドでありたいというのがあって。それをやり続けていたら、わりと名物になっていっちゃった(笑)
ホリウチ フロアから「待ってたぞ!」という熱量を感じたのは、これが初めてです。今までは「曲を演奏して一緒に楽しむ」という感じでしたけど、初日の千葉LOOKから「新曲聴きたくて待ってたんだよ!」みたいな熱量が今までにないくらいだったので。しっかりライブを意識して作ったので、「ちゃんと届いたな」という気持ちになっています。
あかり EPは6曲で、好みがどれかに偏るのかもしれないと思ってたんですけど、お客さんそれぞれで好きな曲がバラけてるのも感じます。「ここまで幅広くやっていいんだな」というのも見えたのが嬉しいです。
TAICHI 自分たちも納得の最強のEPができちゃったんですけど(笑)。Laughing Hickらしさを残しつつ、いろんなことに挑戦したEPで、その曲をみんながライブで一緒に歌ってくれるのが嬉しいです。「頑張ってよかった」と思って、救われた気持ちになりました。
──曲毎にキャラ立ちしているというか、独特な特色がありますよね。たとえば、1曲目の“ネガティヴ思想論争”は、先ほどちょっと話した、曲の一部分だけで捉えてディスする人への曲として受け止めたんですけど。
ホリウチ その通りですね(笑)。アンチコメントをいただいて、それで喰らってしまう部分もありましたけど、それすらも自分たちの強み、存在証明に変えたいという決意表明を曲にしました。ライブでも盛り上がる曲になりましたね、イントロからすぐにサビなので。
──《歪んだ感情さえも》《勇敢の誕生》とか、音のノリ、響きがすごくいいです。
ホリウチ そういうところも、すごく考えています。「リズムが乗ってない、頭でっかち、歌詞でっかちな、意味ばかりが前に出るものは、音楽としてどうなんだろうな?」と思うんです。だから言ってて気持ちいい言葉をたくさん選んでます。メロディと歌詞を同時に作ることが多いんですよね。ラララで歌ってる最中に出てきた言葉を「これ気持ちいい」と思って、そこから派生させていく作り方です。
──派生させて言葉を嵌めていく内に、全体の方向性、歌う内容が見えてくる感じですか?
ホリウチ はい。まさにそういう感じです。
──たとえば“ネガティヴ思想論争”だったら、作り始めた時は何を歌うのかわかっていなくて、作っていく内にテーマや方向性が見えてきたということでしょうか?
ホリウチ そうです。最初からこういうことを思って作ってなかったので。
──メンバーと何気なく話していたことが曲になることも、よくあるんでしょうね。
あかり ありますね。「あっ! 曲にしてきたか」と思います。
──歌ってる内容と音をリンクさせたサウンドアレンジによって、曲全体のパワーが増しているのも感じます。“ネガティヴ思想論争”に入っているベースのスラップも、歌詞とすごく合っていますし。
あかり わりと今までトライしてこなかったスラップです。この技法をブレイクで入れることによって攻め感が生まれると思ったんです。
──“コラソン”も面白いアレンジですね。ラテンっぽさも入っているじゃないですか。
ホリウチ クズに恋して振り回されてしまう女性の曲は、ライブで発散できるようなアプローチでリズムを考えるんです。“女だから”“休憩と宿泊”とか、そういうのは今まで4つ打ちが多くて。だから「ただの4つ打ちじゃないの、やろうぜ、TAICHI!」と。
TAICHI はい(笑)。
ホリウチ それで、こうなったんです。
あかり 「いろんな上モノが入ってるからこそ、どこまで埋めるべきなのか?」とか、ベースも役割をすごく考えて作っていきました。
──クズ男の曲は、バンドの十八番になっていますよね?
ホリウチ そうですね。強みのひとつになっています。英語で8ビートで作ってた前身バンドを経て3ピースになる時、クリープハイプ、My Hair is Bad、マカロニえんぴつと出会ったんですけど、「ここまで面白く、人間くさいこと描いていいんだ?」ってなって、日本語に転向していったんです。だから人間くささ、汚さ、みっともなさまでを歌っていくバンドでありたいというのがあって。それをやり続けていたら、わりと名物になっていっちゃったというか(笑)。
あかり 他人に言えないような恋愛を歌うことで、よき理解者になれる部分もあるのかなと思っています。みんな完璧じゃないだろうし。
TAICHI 「何回聴いても楽しめるなあ」と僕も感じています。世のクズ男が共感するというのも、きっとあるんでしょうね(笑)。