【インタビュー】にしなの歌はなぜ今深い「愛」を描くのか。アルバム『日々散漫』に込めたラブとピースを語る

【インタビュー】にしなの歌はなぜ今深い「愛」を描くのか。アルバム『日々散漫』に込めたラブとピースを語る

【インタビュー】にしなの歌はなぜ今深い「愛」を描くのか。アルバム『日々散漫』に込めたラブとピースを語る

私が書いた小さな歌を、気づいたら隣の子が口ずさんでいて、それが巡り巡って知らない誰かにまで届くことが幸せ

──今回、disc 1を『日々』、disc 2を『散漫』としたのはどんな意図からでしたか?今回のアルバムには「日々」を歌う楽曲であるという側面と、いろいろな曲が「散漫」に飛び散ってるようなふたつの側面があって。なので『日々散漫』というタイトルになっていったんですけど、それを『日々』と『散漫』のふたつに明確に分けるのはなかなかうまくいかなくて。なので、あまりタイトルは意識せず、流れというか、波を意識して曲順を決めていきました。ただ、disc 1の『日々』の始まりが“weekly”だったり、disc 2の『散漫』の曲が纏うオーラはバラエティに富んだものだったりというのは、なんとなく意識しましたね。──そうしたテーマがそれぞれになんとなくありつつも、disc 2のラスト2曲は、今の時代にこそ必要な楽曲だと思いました。“グローリー”は明るく弾むようなポップソングではあるけれど、この時代の悲しみや痛みを映しながら、悲しい現実に呑み込まれないように希望を歌う曲でもあって。この曲は、生まれたきっかけも覚えていないくらい、日々のささやかな気持ちから描いた楽曲でした。完成した曲を聴くと、社会とか世界に目を向けているように聴こえるかもしれないですけど、ほんとに自分と向き合って書いた楽曲でしたね。

──社会の情勢や世界で起こっていることに胸を痛めて、というわけではなかったんですね。そうですね。ニュースを見て、それをきっかけにというわけでもなく、生活の中でほんとにふと書いたものでした。もちろん、社会や世界への気持ちもあったと思うんですが、それよりも、好きな人たちと穏やかに長く生きたいよなあっていう思いから書きました。それが結果としては平和ということなんですけど。書き始めたときは、ここまで社会も混沌としてはいなかったので。──確かに《武器すら持たず/君を愛せる/ただこんな日が/続くように》という歌は、自分の生活が愛に溢れるものであるようにと願う歌ですよね。社会とか世界とか大きな言葉で語ると難しいけれど、結局、その中身は一人ひとりの人間で、誰ひとり武器を持たなかったら戦争にはならないと思うんですよね。なので私がフォーカスしたのは、社会、世界というより「人」なんです。──それが今、必然的に時代に寄り添う曲になっていて。これをたとえば世界平和を願う歌として聴かれるのは本意ではなかったりしますか?いえ、それが嫌だというのはまったくないです。音楽をやっていて幸せだと思えるのは、私が書いた小さな歌を、気づいたら隣の子が口ずさんでいて、それが巡り巡って知らない誰かにまで届くということで。私がささやかに平和を歌ったものを、みんなが自分のものにしてくれて、自分の解釈で愛を歌ってくれたら、その形や理解の仕方は問わず、ただ嬉しいし、それがピースだしラブだなって思います。初めは自分でも「この曲を歌って何が変わるんだろう」という思いもあって、最後の歌詞の《らららラブソングを/大きな声で歌おうか》というところは「意味さえ問わず」という歌詞にしていたんです。でも大切なのはこの曲で何かを変えられるかどうかではないなと。やらないよりはやったほうがいい、愛を伝えないよりは伝えたほうがいいという気持ちで完成させていきました。
【インタビュー】にしなの歌はなぜ今深い「愛」を描くのか。アルバム『日々散漫』に込めたラブとピースを語る

すごくわかりやすく言うと、最初は「大好き」っていう表現だったのが、今は「愛してる」に変わってきている


──“グローリー”は大きな愛の歌ですが、すぐ隣にいる人に語りかけるラブソングでもあります。にしなさんの中で、前作からの3年半で「ラブソング」というものに対する思いがどう変化してきているのでしょう。こうやってインタビューとかでお話しさせてもらうときに気づいたり、教えてもらえることも多いんですけど、「愛の歌」の終着点がだんだん変わってきている感じはあるんですよね。音楽を始めたての頃は閉鎖的というか、そういうものが好きなのもあって、そこで完結していたんですけど、年々そのゴールが広がるというか……ゴールというより、何か開けていく感じ。うまく伝わるかわからないですけど、なんとなく終着点が変わってきている気はしています。すごくわかりやすく言うと、最初は「大好き」っていう表現だったのが、今は「愛してる」に変わってきている。そのニュアンスの違いというのもありますね。──どういうプロセスで、その変化は起こっているのだと思いますか?自覚している部分はほとんどないんですけど、最初の話に通ずる部分でいうと、人として「輪廻していく」ということをなんとなく考えるようになったからというのもあるかもしれません。あと、これもうまく言えるかわからないですけど、中学生、高校生のときに人を好きになる気持ちとは違って、男とか女とか恋愛感情を超えて、その「存在」を好きと思う感覚が強く、広くなってきているのはありますよね。うまく言語化できないんですけど(笑)、そういう部分で成長や変化があったんだと思います。──最後の“Twinkle Little Star”は穏やかな歌が胸に響く弾き語りですが、その歌に答えがあるような気もします。《誰のものでもないこの世界に/散らばる僕らが命/どこへでも自由に飛ぶだけさ/わかるだろ》という歌詞は、すべての命に対する「愛」のようにも響いて。アルバムに筋を通すというところで、最後にどの曲を入れるかというのはとても重要だと思って、“グローリー”か“Twinkle Little Star”かで悩みました。でも着飾らずにシンプルに今の自分らしい曲をと考えたときに、“Twinkle Little Star”が自分の現在地という感じがしたので、これを最後に入れました。音楽を始めて、ミュージシャンとしての生活も自分に馴染んできた中で、なんのために音楽をやっているのかと考える時間も増えました。自分より若い、素敵なミュージシャンの方たちがたくさん出てきて焦ったり、うまくいかないなと思うこともたぶんいっぱいあって。でも、多くの人に音楽を聴いてもらうとか、それで富を得るとか、そういうことも大切だったけれど、それ以上に自分の生活の中で家族だったり友達だったり、支えてくださる人たち、隣にいる人をまずは大切にしたいと思ったんですよね。それができないと何も歌えないなと思った。いちばん大切にしたいものは、夢よりも目の前にあるんだなって思ったんですよ。それを書いてみようという感じで書き始めた曲でした。──近くにある「愛」を知るというのが、まさにこのアルバムのテーマでもあって、《だから愛を知った》という“Twinkle Little Star”の歌詞は、いちばん始めに“intro”で口ずさむ、『日々』の歌へとまたつながるんですよね。今、できあがったアルバムをどう感じていますか?まず、3枚目を出せたんだなという喜びが大きいです。聴いてくれる人がいなければ3枚目のアルバムは出せなかったと思うし、感謝でいっぱいです。ちょうどさっきパッケージの見本も届いて、触らせてもらって、だんだん実感が湧いてきました。今はこれを手に取ってもらえるという喜びを感じています(笑)。──アルバムを引っ提げてのツアーもすぐに始まりますよね。どんなツアーにしたいですか?こんなに新曲をいっぱい持っていけるライブもほんとに久しぶりなので、いつも応援してくださって遊びに来てくださる方にも、新しいにしなの側面を届けられる、新鮮なライブになったらいいなと思ってドキドキしています。もちろんはじめましての方も、一緒に歌える曲も増えてきたと思うので、“グローリー”もそうですけど、みんなでライブでコミュニケーションをとって、曲を成長させていけたら。最終的に、その場にいるみんながピースでラブな感覚になれるライブにできたらいいですね。
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