『残響』やヨンシーのソロ・アルバムで、バンド、というかヨンシーに内在していたポップネスをある程度、消化させることができたから、昨年の『ヴァルタリ〜遠い鼓動』では静謐を軸とした初期を彷彿とさせるアンビエント・サウンドに回帰したというのが、ここ最近のシガー・ロスに対するざっくりとした見解だったわけだが、だったら新作『クウェイカー』はなんなんだ?
リード・トラック〝ブレンニステイン〞を聴いて、恐らく誰もが度肝を抜かれただろう。闘争心剥き出しのヘヴィなトラックの破壊力は間違いなくバンド史上最強。アルバム全体もそれに引っ張られるように重苦しいダークネスに覆われている。と同時に、そこにはこれまでも存在していた美しきイノセンスが以前に増して顕在化している。それはキャータンが抜けたことで、ヨンシー、オッリ、ゲオルグのコアがさらに強固になったのも大きいだろう。少なくとも前作に比べて〝バンド・サウンド〞が際立つ。ただ、そもそもシガー・ロスは本能的なバンドである。これまで音楽と映像の科学的な融合を試みたり、ライヴでも大所帯を率いて複雑なサウンドスケープの再現に挑んだり、活動の革新性においては意識的かもしれないが、音楽そのものはプリミティヴ。いや、プリミティヴと書くと響きはいいが、むしろ直訳して〝原始的〞とハッキリ書いちゃったほうがしっくり来るぐらい、彼らの音楽は常に獰猛で残酷で、あまりにもピュアゆえに美しかった。そういう意味で、本質がより剥き出しになった本作は、前作で始まった浄化がより進化したんだと言えるだろう。傑作です。 (内田亮)
純度100%シガー
シガー・ロス『クウェイカー』
2013年06月12日発売
2013年06月12日発売
ALBUM