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フルアルバムとしては前作『哀愁演劇』から1年少々。「もう新作が出るの!」と驚いたが、蓋を開けてみれば脱帽。とんでもない傑作だ。前作からのスピード感は、作品の「薄さ」には一切つながらず、むしろ味わいを深める軽やかさや、遊び心、美しき余白に見事に昇華されている。1曲1曲が異なる音楽性と実験性を持ちながらも、実験的であることそれ自体を目的とはせず、あくまでもバンドが音楽と自由に戯れる風通しの良さが全体を通して伝わってくる。楽曲ごとに様々な表情を見せるリズムやギターの響き、繊細に世界観を彩るストリングスやエレクトロニクス、「これがindigo la Endである」という記名性を担保し続ける甘やかなメロディ、そして、現実と幻想が微細なレイヤーで重なり合う歌詞世界。《なんてことない音楽が/過ぎ去るはずの音楽が/涙の線に引っかかる》(“雨が踊るから”)――人と人、心と体、人と時代、そこにある「あわい」に響く音楽の魔法に向き合い続けたバンドの、鮮やかな現在地であり、ひとつの到達点。(天野史彬)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年3月号より)
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