昨年、米の若手インディ・バンドに「07年のベスト・アルバムは?」と聞くと、これとファイナル・ファンタジーという答えがよく返ってきてなるほどと思ったが、ある意味このことはバンドの進化を物語っているのかもしれない。Voの声質とサザンロック的な側面から、マイ・モーニング・ジャケット(以下MMJ)や初期ニール・ヤングと比較されてきたバンド・オブ・ホーセズ。が、MMJが『Z』でそうだったように、バンド・オブ・ホーセズも、本作でひとつ先の次元に足を踏み入れている。傑作1st『Everything All the time』を経て、創設メンバーのひとりが脱退、バンドは拠点にしていたシアトルから、前身バンドが結成されたノースキャロライナへと帰り本作を完成させた。シンセ、ストリングス、美しく重なるボーカルのリバーブの融合でサウンドはより深みを増し、どこにでもありそうだけれどどこまでも広がっていきそうな歌詞世界を引き立てている。もはや(例えばオルタナ・カントリーなどと)定義付けが不可能な、どこまでも清冽で軽やか、しかしけっして軟弱ではなく骨のある、普遍的な「ポップス」である。「ポップ」というにはやや抵抗があるけれど、でもそういうものである。(羽鳥麻美)
ネクスト・ブレイク組の筆頭
バンド・オブ・ホーセズ『シーズ・トゥ・ビギン 』
2008年07月23日発売
2008年07月23日発売