インディの「歌」の復権

ザ・ミドル・イースト『ザ・レコーディングス・オブ・ザ・ミドル・イースト』
2009年12月16日発売
ALBUM
ザ・ミドル・イースト ザ・レコーディングス・オブ・ザ・ミドル・イースト
フリート・フォクシーズやボン・アイヴァーのブレイクに顕著なように、米インディにおける“フォーク”はフリーク・フォークという熱病をへて再び正統的な「歌」へと回帰を見せつつある。デヴェンドラの新作もその象徴的な作品と言えるが、そこに例えばモンスターズ・オブ・フォークのようなメタな視線があるかどうかはさておき、正統的=保守的とは限らずそこには進化があり、音楽表現としての前進は可能であることはそれこそウィルコやボニプリの近作が証明する通りである。そしてこのオーストラリアの6人組なのだが、彼らもまたそうしたフォークの復権を象徴する存在であり、本作は待望のデビューEP。本国ではテンパー・トラップに続く期待の新人で、早速フリート・フォクシーズやアーケイド・ファイアを引き合いに出して賞賛を受けるなど評価は高い。リード曲的なM3の美しいハーモニーと力強い合唱の饗宴。M5のシガー・ロスを思わす透明な響きを湛えたソロとサウンドスケープ。琴線を震わす爪弾きから歓喜に満ちたアンセムまで、「歌」の力で音楽としてのスケールを押し広げるような在り方は、極めてオーセンティックであり、ゆえに表現として強い。年明けにはグリズリー・ベアとのライブも予定。(天井潤之介)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする