存在証明としてのエレポップ

アニー『ドント・ストップ』
2009年12月02日発売
ALBUM
アニー ドント・ストップ
パーフェクト! 女性シンガーによるエレポップは2008年のトレンドのひとつだったが、それを締めくくるにふさわしい作品である。アップビートなディスコ・チューンからシンフォニックなシンセのレイヤーが美しいバラードまで、すべてのトラックがおそろしくポップ。変に色気を出してモダンなエッジをアピールしたりすることなく、アートワークも含めて潔くコンセプトに殉じている。このサウンドを一瞬で消費されつくされる商品としてではなく、自己とがっちり結びついたアートとして提示できるのが彼女の強みである。いうまでもなく前作『アニマル』もまさにそうだった。

アニーの80sライクなサウンドが、一見軽そうに見えてがっちりとした強度をもっているのは、その表現、そのサウンド、そのコンセプトに対する理解と自己投影が半端ではないからだ。DJとして、ダンスフロアで自己をアイデンティファイし続けてきた彼女だからこそ、ここまでてらいなくやり切れる。彼女がカクテル・ライトに照らされるとき、それはフィクションでありフィクションでない。そう、それこそマドンナがそうであるように。(小川智宏)
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