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結成10周年イヤーに、改めて自分たちの音楽に向き合って完成させたのだという今作は、「3ピース」というシンプルな編成を基調とした壮大なドラマで満ち溢れている。各楽器の絶妙な絡み合い、キメとタメのフレーズによって加速させる躍動感、スリリングなリズムの変化など、1曲目“旧世界より”をドラマチックにしている効果的なスパイスは、そのあとに続く4曲を輝かせている要素でもある。ライブで演奏した際に彼らが体感するはずのウキウキした胸の鼓動は、各曲に血の通った色彩を添えるだろう。人力演奏と合奏を最大限に楽しみながら活動を重ねてきた3人なのだと、今作を聴くと本当によくわかる。歌詞に盛り込まれたモチーフや単語が喚起する多彩なイメージ、透明感に満ちた歌声、叙情的な美メロなど、魅力的なポイントがたくさんあるバンドだが、サウンドアレンジのセンスの良さと演奏の切れ味は、活動歴が深まる毎に着々と熟成の度合いを増していくはず。10周年の先にあるそんな未来像も感じられる作品だ。(田中大)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年6月号より)
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