そんな簡単な話ではないのだ

スーパー・ファーリー・アニマルズ『ダーク・デイズ/ライト・イヤーズ』
2009年06月10日発売
ALBUM
スーパー・ファーリー・アニマルズ ダーク・デイズ/ライト・イヤーズ
前作『ヘイ・ヴィーナス!』がロック的ダイナミズムから出発しながらも最後に深いメランコリアの海に沈んでいくような、ある意味非常にペシミスティックで、だからこそ美しい情緒の一側面を浮かび上がらせたアルバムだったとするなら、今回のファーリーズはそんなメランコリアの淵から這い出して、再び少しだけ強気な姿を見せてくれている。派手さはないが堅実でシンプルなグルーヴと、アナログ・シンセやボーカル・フィルターによって演出されるレトロ・フューチャーな雰囲気。コンパクトでスタイリッシュなフォルム。ライブでの武器になりそうなフックの効いたリフ。グリフの別プロジェクト=ネオン・ネオンから受けたインスピレーションも反映されていそうだが、それよりもむしろ、『ヘイ・ヴィーナス!』の反動という面のほうが大きいように思う。このアルバムが前作のときにグリフが話していた「後編にあたる楽曲群」なのかどうかは定かではないのだが、アルバム全体のムードとして『ヘイ・ヴィーナス!』と対照的な、未来志向でポジティブな作品になっていることは確かだ。

ただし、「どこに行きたい? 君はどこにだって行けるんだから」と歌われる“ホウェア・ドゥ・ユー・ワナ・ゴー?”で「どこに行きたい?」と訊いていた主人公は、最後に「僕はずっと君といたい/永遠に眠っていたい」とひとりごちるわけだし、ラスト・トラック“プリック”ではウェールズ語で「僕は君と同じくらいヒドイ奴だよ」と歌うわけである。絶対的な肯定なんかできるか、というヒネクレ具合がいかにも彼ららしい。だから傑作なのだ。(小川智宏)
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