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“もういいよ”は「素の自分を曝け出せばいい」という単純なメッセージソングではない。この歌は、長いこと素の自分を出せずにいる人の入り組んだ状況に対して、無理に素を出さなくてもいいから、そのままの自分で《「もういいよ」》と口に出してみればいいと現実的に説くような歌だ。そして絶妙なBPMのトラックによって、まさに「もういいよ」という気分へと自然に導かれてしまうのだ。苦しみを口に出せず、周りを心配させないようにプリテンドしてしまう人の、その心の奥まで見つめる眼差しこそが、こっちのけんとの真髄。一見なんの悩みもなく日々穏やかに過ごしているように見える人ほど水面化でもがいているもの。見た目に苦しそうな人には手も差し伸べられるが、そう見えない（見せない）人はきっとずっとひとりの戦いが続いている。この歌にはそんな人の心にこそスポットを当てる、こっちのけんとのやさしさが詰まっている。ひとりで生きづらさを感じている人が、今必要とする言葉がここにあるのではないだろうか。（杉浦美恵）（『ROCKIN'ON JAPAN』2025年2月号より）
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