フリート・フォクシーズ、日本のライブは特別と言っていただけあり、本当に最高のライブだった。(大阪公演後、ライブ内容等を追記しました)

フリート・フォクシーズ、日本のライブは特別と言っていただけあり、本当に最高のライブだった。(大阪公演後、ライブ内容等を追記しました)

フリート・フォクシーズ、6年ぶり待望の来日公演初日が1月18日東京で無事行われた。最高の内容だったので、19日の大阪公演に行くか迷っている方は今すぐチケットを買った方が良いと思う。
http://smash-jpn.com/live/?id=2779

フリート・フォクシーズのライブは、彼らのキャリアを通して、アメリカでも、日本でも、イギリスでも、恐らく計20回くらい観たことがあるけど、昨日のライブのバンドの完成度は、その中でも最高といえるレベルだった。最新作『クラック-アップ』を発売して以来、全米ツアー、ヨーロッパ・ツアー、オーストラリア・ツアーとこなして、日本にやって来たので、私が夏にNYで観た時には、まだまとまりに欠けると思えた部分があったけど、昨日は、恐らく彼らがアルバムを作った時に描いたいたサウンドをライブという形で実現できていたのではないかと思う。

インタビューでも言っていたけど、前回のツアーでは、終了と同時に家に帰って手術をしなくてはいけなかったというロビン。精神的にも、肉体的にも、健康になって帰ってきた彼、昨日は、これまで見たこともないくらい幸せそうだった。ライブは、日本語で、「こんばんは、お元気ですか?」と言って始まり、「こんな素晴らしい国でライブできて、心から光栄です」と言って終わった。ライブ全編から、隅々から、本当にそう思ってくるのが伝わってくる内容だった。アンコールの時に、ほとんど飛び跳ねるように出てきたロビンの姿なんて、これまで一度も観たことがないし、終わっても、セットリストをファンにあげている姿にじーんときた。前回のフリート・フォクシーズが、「終わった」と言える地に戻り、真の意味での再出発を記すんだというような、そんな精神的な意味の深さとそれに対する喜びが溢れていた。

フリート・フォクシーズ、日本のライブは特別と言っていただけあり、本当に最高のライブだった。(大阪公演後、ライブ内容等を追記しました)

何より、彼の声があそこまで伸びやかで堂々歌いきれていたのを観たのもファースト・アルバムのライブ以来だったと思う。いや、あの時よりも、ボーカリストとして強靭になっていた。

しかも、なんと、「この曲はスカイがリードです」と言って、YMOの”Behind the Mask”をカバーするという超スペシャルな瞬間まであった。スカイは、日本の音楽への愛をよくツイートしていたりするが、これまでYMOをカバーしたのを見たこともないので、これは本当に日本のためだけにやってくれたこと。嬉しくて胸いっぱいになった。ロビンは「ハッピー・バースデー、サカモトサン」と言っていたけど、実際前日は坂本龍一の誕生日だった。

フリート・フォクシーズ、日本のライブは特別と言っていただけあり、本当に最高のライブだった。(大阪公演後、ライブ内容等を追記しました)

緻密にハーモニーを重ねながらも、その塔が、突然波にさらわれるように、構築と、崩壊を繰り返すようなライブ。そのメロディーとハーモニーの世界に、どっぷりと引き込まれていくような、至極の瞬間の連続だった。そしてその中で、人生の探求をロビンとともにするような体験。人生とは?僕らがここにいる理由は?そして真実は?その答えを見つけるために、この荒れ狂う世界を目の前に戦いを繰り広げるロビンの姿に、心が打たれる。その戦いを繰り広げながらも、なんとか、この世の中で、前進して行きたいという強い意志が常にそこにはあったから。

2017年と言うのは、白人至上主義者と言ってよい人物が大統領となり、それに対する答えをいかに提示すれば良いのか、を考えすぎたかに思える作品を発表するアーティストも多かった。10年前だったらアメリカの音楽シーン全体を牽引していた言える最重要なインディ・シーンのアーティストたち、フリート・フォクシーズもそうだし、アーケイド・ファイアも、グリズリー・ベアも、ダーティ・プロジェクターズも、去年作品を出したが、年間ベストチャートで、ベスト10にはいるようなアーティストはほとんどいなかった。しかし彼らの戦いが失敗だったのかというとそうではないのだ、と、昨日のライブを観て改めて確信できた。ロビンが、インタビューで語ってくれたのだが、「自分が最も得意とすることを最高のレベルでやり続けていくことから、何かが絶対生まれるはずなんだ。それが今のトレンドに直接訴えかけるものでなかったとしても。そういう意味で僕は今すごく解放されている。自分が本当に好きなことをやり続けるんだと思っている」と。正に、そんな確信と、強い意志と、希望に溢れるライブだった。

スカイが「ただいま」とツイートしていたけど

本当の意味で、「おかえり」と言いたくなるような最高のライブだった。

ライブの詳しい内容は、大阪公演の後に、付け足す予定。

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追記:
フリート・フォクシーズが、1月19日に大阪BIG CATでもライブを行った。内容は東京公演とはまた違った親密な雰囲気の中で、別の意味で最高のライブを行った。両公演とも素晴らしかったのでどちらの方が良かったというのは、決められない。ただ大阪の会場はキャパが850人と世界的に見て、あまりに小さいため、観客はかなりラッキーだったと思う。例えばNYだと5000人キャパで2日間ソールドアウトだし、ロンドンでも同じく5000人キャパで2日間。すでに発表されたコーチェラでも、ビヨンセの真下に名前が載ってるほどの人気もステイタスもあるので850人は最高。実際大阪の観客のノリは、近いだけにかなり良かったと思う。東京公演の方は、久しぶりに日本に帰ってきた思いがロビンのパフォーマンスから感じられる内容で、ロビンにしては珍しくステージ上ですごく楽しそうだったし、堂々の帰還と言えるようなパフォーマンスを披露したと思う。

フリート・フォクシーズ、日本のライブは特別と言っていただけあり、本当に最高のライブだった。(大阪公演後、ライブ内容等を追記しました)

両日ともサウンドクオリティが最高で、私が観たNYの公演は野外だったので、そういう意味でも日本のライブの方がじっくりと堪能できた。最新作も実は、細かい凝ったノイズなどが多く使われているので、絶対にヘッドフォンで聴いた方がいい。

セットリストは両日とも全く同じだった。ただ、大阪公演の後、バンドは1ヶ月の休暇に入るため、スタッフの紹介やありがとうという場面などもあり、全体的に東京より少し長かった。

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最新作『クラック-アップ』の1曲目“I Am All That I Need / Arroyo Seco / Thumbprint Scar”に始まったライブは、3曲目の“Grown Ocean”までどんどんスピードを上げていくような始まり。“White Winter Hymnal”で、ハーモニーの美しさの中に観客がすっぽりと包み込まれてしまうフリート・フォクシーズならではの至極の体験を味わい、前半のハイライトは、なんと言っても“Your Protector”。デビュー作の中でも、最も緊迫感のある曲で、最高のメロディに、最高のアレンジが展開される。あまりに完成度が高い曲だ。人生の旅の途中で、これで良かったのかと思いを巡らすその思想の中に、私たちをも思い切り引き込まれてしまう。バンドサウンドの完成度にも誰もが魅了されてしまった瞬間だろう。

中盤も聴きどころ満載で、新作の中でも特に素晴らしい“Fool’s Errand”のボーカルのが壮大な広がりに感動していたかと思うと、続く“He Doesn't Know Why”から、“Blue Ridge Mountains”、“Tiger Mountain Peasant Song”までは、デビュー曲からの怒涛の名曲続きで、ファンも悶絶の瞬間だったのではないだろうか。とりわけ、“Tiger Mountain Peasant Song”では、ロビンがひとりでアコギ演奏。背景には、宇宙の流れる星のような映像が映し出され、巨大な闇の中で、ポツンとひとりで立たされたような孤独感に胸が一杯となる。しかしそこでなんとか戦う姿にさらに感動するのだ。ちなみに、背景のグラッフィクは、毎回そうだが、ロビンのお兄さんのショーンが手がけていて、今回の作品も、曲を端的に伝えながら、同時に会話するような、シンプルだが、バンドの物語性、普遍性を伝える素晴らしい内容となっていた。

というシリアスな空気で包まれた直後に、今回のスペシャルな瞬間、スカイによるYMOのカバー、“Behind the Mask”だ。日本でのライブ2回でしか演奏されていないこの曲は、ポップなサウンドで、会場を和やかな感じにしてくれるし、フルートによるメロディが逆に斬新に聴こえた。ちなみに、スカイは大阪公演では、タイガースのユニフォームを着ていて何もしゃべらないけど日本への愛をさらに感じさせてくれた。

その後は、フリート・フォクシーズ名曲中の名曲、“Mykonos”が続き、感涙の瞬間だったし、“Battery Kinzie”からは本編の最後までは、とにかく1曲1曲が濃厚すぎる。“Third of May / Ōdaigahara”や、前作の“The Shrine / An Argument”では、最新作で試された実験、フィッツジェラルドの『崩壊』に描かれていた、「ふたつの異なる概念は同時に存在できる」ことを見事に体験する壮大な曲展開を堪能。最新作の最後を締め括る曲“Crack-Up”は、正に『崩壊』としかしその美しさ、それをも肯定していこうとするとんでもなく荘厳な世界で打ちのめされるように本編終了。

アンコールの最初には、ロビンひとりで登場し、“Oliver James”。彼のボーカルの美しさを最も堪能できる瞬間にして、彼のボーカルが今までになく最強であるのも知る。最後の曲“Helplessness Blues”はセカンドアルバムで、探求しながらも、苦痛を体験しながらも成長していく様を描いた曲だ。セカンドアルバムから、その後6年間で『崩壊』と再生、復活を経験した彼が再び強く掲げる宣言。それは以前にも増して、深く力強く我々の心に響いたのだ。一瞬一瞬があまりに濃厚で果てしない旅に連れて行ってもらったかのような体験。ものすごい充実感に満たされ幸せを感じながらも、終わってしまった悲しみが同時に襲ってくるようなライブだった。今度は6年間も明けないで帰って来て欲しい。フリート・フォクシーズの音楽でのみ体験できる探求があり、それがこの混乱した世の中では、それが必要だから。彼らが目指す方向を見つめながら人生を見失わないでいつまでも歩いて行きたい、と再確認したライブだった。

日本に帰ってきてくれてありがとう!

追記おまけ:
ロビンは、インスタグラムで、ありがとう、と写真をアップしている。また、ソファの買い物をしたりもしたよう。続けて、日本を旅しているみたいだ。またスカイはビールを飲みながら新幹線かな?




バンドは1ヶ月の休暇があるが、ロビンはアメリカに戻ったら新作のレコーディングをしたいと言っていた。今後発売のロッキング・オンでは、ロビンのインタビューが掲載されるのでお楽しみに!
4月に開催されるコーチェラ出演の様子は、ネットで中継されるのではないと思う。
https://www.coachella.com/


※写真は全て東京公演のものです。
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