結成10周年&デビュー5周年のダブルアニバーサリーイヤーを迎える彼らの道のりは決してなだらかなものではなかった。福岡で「(柳田曰く)泥水を啜った」下積み時代、コロナ禍真っ只中のメジャーデビュー、ライブタイトルにも冠されている通り「凡庸」と己を律しながらも音楽と仲間とファンを信じて歩み続けてきた日々──神サイの10年の「物語」がセットリストを通して、耳にも心にもずっしりと乗っかかってくる重みのある2時間だった。
最初期の楽曲“秋明菊”で始まり、アンコールもなく本編だけで出し切ったライブのラストに届けられたのは最新曲“スケッチ”。最後にして初めてLEDにメンバーの顔が、そして観客の顔が映し出され、この日いちばん親密なアンサンブルとともに《こんなステージで唄う夢見て/どれほど僕ら歩いてきただろう/離れずに肩を寄せ合って/これから先もずっと笑っていよう/そう、ずっと》と歌われる物語の美しさたるや。その物語を4人の演奏と7,500人のシンガロングが抱き締め合うというひとつのゴールが、武道館で神サイを待っていた。
もちろん武道館は通過点に過ぎず、ダブルアニバーサリーイヤーの神サイは「叶えたい10のこと」と題した夢を次々と実現していくらしい。神サイの物語は武道館を越えて、これから先もずっと続いてゆく。(畑雄介)
武道館への意気込みと“スケッチ”の制作秘話を聞いたインタビューはこちら↓
取材時のオフショットはこちら↓