その歌は、なぜこんなにも生き物のように饒舌に悲しみと温もりを伝えるのか――
新世代の「揺らぐ心」の伝え手・りりあ。を考察する
文=天野史彬
2020年に初のオリジナル曲“浮気されたけどまだ好きって曲。”が注目を集めてからも、フォロワーや再生数の巨大さとは裏腹に、りりあ。の歌声はとても素朴で柔らかな場所から響き続けている。この温かさはなんだろう? この繊細なのにズシリとくる重たさはなんだろう?――りりあ。の綴る歌は、ため息のように思わず心から溢れてしまったような言葉の中に、時に身を切るような痛みと、甘やかな優しさを、カフェオレのように混ぜ合わせてそっと私たちの前に差し出してくるようだ。自身もヒロイン役の声優で出演するアニメ映画『バブル』のエンディングテーマ“じゃあね、またね。”も収録した1st EP『記録』は、その名の通り、動画投稿を出発点にして、この数年ベッドルームからベッドルームへと渡り歩くように広がっていったりりあ。の歌の足跡を記録した作品。こうして、ひとつの作品にパッケージングされた今だからこそ、彼女が「心」の伝え手として如何に稀有な存在であるかをひもとく。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年6月号より抜粋)