『ROCKIN'ON JAPAN』最新号(2020年12月号)New Comerより
今の我々が聴くポップミュージックの多くは、アフリカ系アメリカ人によるブラックミュージックが礎になっている。R&Bもロックンロールも、ディスコやハウスミュージックも、ヒップホップもそうだ。どれだけジャンルの枝葉が細分化しても、根となり幹となるものは変わらない。力強くチャーミングなブラックミュージックの影響を受けて日本に生きる者が音楽を鳴らすこと。そんな主題を名に掲げた者たちがいる。Kroiは、ズバリ「kuroi(黒い)」の語に由来するバンド名を持つ5人組だ。2018年2月にInstagramを通じてそれぞれに活動していたメンバーが合流、2019年にはオーディションを通過して見事「SUMMER SONIC 2019」に出場を果たした。甘い陶酔感と強力なグルーヴを併せ持つバンドサウンド、ファンカデリックを彷彿とさせるサイケな爆発力、レイドバックした節回しでラップと歌唱を行き来しながらリスナーの意識に絡みつく内田怜央(Vo)の歌声に至るまで、黒の中にも豊かな色彩を感じさせている。
今年5月にリリースされた2nd EP『hub』では、生身のファンキーな躍動感を受け止めさせるばかりではなく、想像力の赴くままに内面宇宙を漂うネオソウルや、日本人らしいユニークなフレーズを都会的なポップサウンドのフックとして忍ばせたナンバーなど、自分たちが影響を受けたブラックミュージックを足がかりに独創的な視界の中へと突き進もうとするKroiの姿勢が窺えた。また、この10月16日に届けられた新曲“HORN”は、小気味好いパーカッションや煌びやかなシンセサウンドに彩られながら、今の彼らの強い推進力が漲る、アップリフティングなコズミックファンクである。《瞞しの自由を手にしたまま/歪な日常を受け入れてください》。内田の綴る歌詞は音楽的な響きを重視しながらも、時にドキリとさせられるラインが伝う。ただ借り物のブラックミュージックを鳴らすのではない、己の中にあるブラックミュージックを見つけ出し、そのエネルギーを掘り起こすこと。Kroiの音楽の響きは新鮮だが、普遍的だ。(小池宏和)
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Kroi、ブラックミュージックの色彩は無限だ
2020.11.10 12:00