祝・ウィーザー新作! MVで楽しむ「リヴァース七変化」

祝・ウィーザー新作! MVで楽しむ「リヴァース七変化」

ウィーザーのニュー・アルバム『パシフィック・デイドリーム』がリリースされた。

ビーチ・ボーイズザ・クラッシュが海のそばで恋に落ちた」ようなものになると説明されていた新作だが、“Beach Boys”や、ザ・ゾンビーズの代表曲“Time Of The Season”のフレーズが引用された“Weekend Woman”などの収録曲からも感じ取れるように、バンドからレジェンドたちへの愛溢れた楽曲が詰まったものに仕上がっている。

新作に夢中になりながら、過去バンドが「ロック・スターになりたい」そして「クールになって女の子にモテたい」願望を爆発させてきたミュージック・ビデオでウィーザー三昧の週末を過ごすのはいかがだろうか。

1. “Buddy Holly” 70年代米人気番組に出演の「人気者」

1994年にリリースされた『ウィーザー(ザ・ブルー・アルバム)』からの2ndシングル。バディ・ホリーというロック創世記のヒーローを曲名に関したこの曲のミュージック・ビデオでは70年代にアメリカで放送されていた人気番組「Happy Days」にバンドが出演、“Buddy Holly”を演奏しているという設定だ。

ビデオ中盤までバンドは女の子から熱い視線を投げかけられる「人気者」なのだが、最後の最後は不良風の若者に女の子をかっさらわれてしまう、というウィーザーらしい展開。監督はスパイク・ジョーンズ。

Weezer - Buddy Holly

2. “Perfect Situation” ロック・スター……の彼氏役

2005年にリリースされた『メイク・ビリーヴ』の収録曲。映像幕開けではフロントマンのリヴァース・クオモがロック・スター役かと思いきや、実際は超人気バンド「weeze」のボーカルの彼氏、という設定。
ロック・スターらしいわがままでハチャメチャな振る舞いの彼女にどこまでも振り回されるリヴァースとバンドメンバーたち。彼女のわがままっぷりに業を煮やしたメンバーが彼女なしで演奏を実行、そこでリヴァースがついにボーカルを取り、大喝采を浴びる、という微笑ましいラストシーンが待っている。

Weezer - Perfect Situation

3. “Troublemaker” 全身にタトゥーを入れた「トラブルメーカー」

2008年リリースの『ウィーザー (ザ・レッド・アルバム)』に収められた楽曲。
リヴァースは全身タトゥーに腰パンで履いたハーフ・パンツ、タンクトップといういかにも「トラブルメーカー」なバンドマンを演じている。
大勢が乗った車に繋がったロープを歯で噛んで動かそうとするリヴァースにも目がいくが、なぜかいたって普段通りのドラマー、パット・ウィルソンも気になる。
このビデオでは実際に「1つのスケボーに乗った最大人数記録」や「エアギター同時演奏の最大人数記録」など、複数部門でギネス認定を獲得している。

Weezer - Troublemaker

4. “ (If You're Wondering If I Want You To) I Want You To” 50年代、古き良きアメリカを再現

2009年リリースの『ラディテュード』収録曲。Weezervilleと名付けられた村が映像の舞台で、監督はマーク・ウェブが務めている。
50年代の衣装と髪型でキメたバンドは渋くかっこいいのだが、パット、スコット・シュライナー(ベース)、ブライアン・ベル(ギター)が美女の気を引こうとまたもやどんちゃん騒ぎを繰り広げる。
リヴァースは美女とキス……するかと思いきや、彼女との仲より友情を取るというバンド愛溢れるエンディングだ。
メンバーが子ども、村の住人、バンドマンと複数の役となって登場するのも見どころ。

Weezer - (If You're Wondering If I Want You To) I Want You To

5. “Go Away” リヴァース、アプリでモテるために七転八起

2014年リリースの『エヴリシング・ウィル・ビー・オールライト・イン・ジ・エンド』収録曲。
リヴァースはマッチングアプリ「Winder」に登録する写真の撮影ため不良やお金持ち、ヒップスター、サーファーなどになりきってみるものの、クールな写真は一向に撮れず女の子に笑われる始末。
そこで出た作戦は、パットが道を歩く女の子からバックを奪い、リヴァースが勇敢にも取り返す、という古典的(?)なもの。リヴァースが体をはって様々なコスプレを披露している。

Weezer - Go Away

6. “Thank God For Girls” リヴァースが女性崇拝の教祖に

2016年リリースの『ウィーザー (ホワイト・アルバム)』に収録。
タイトル通り、リヴァースは女性を崇拝する宗教らしきものの教祖に扮している。歩けない女性を直してみたり、何やらお金を巻き上げてみたり、ギャンブルに興じたりとバンドのイメージとは程遠い……かと思いきや、やはり最後は女性に殴られ倒れてしまう。この構造はいつまでたっても変わらないよう。

Weezer - Thank God For Girls

7. “Feels Like Summer” ついに憧れのガンズに!

バンド扮するは架空のバンド、Roses N’ Weezer。つまり、リヴァースの憧れのバンド、ガンズ・アンド・ローゼズへのトリビュートだ。ツアー・ドキュメンタリー仕立ての映像はガンズの“Paradise City”のミュージック・ビデオをオマージュしており、“Paradise City”の様々なシーンをウィーザー風に再現している。
リヴァースのアクセル・ローズ、ブライアンのスラッシュはばっちり、スコットのダフ・マッケイガンも近づける努力をしているものの、ここにきてもパットは普段通りだ。

Weezer - Feels Like Summer

※ちなみに、この楽曲がTV番組で披露された際、リヴァースが太陽の着ぐるみを着ていたこともあった。



『パシフィック・デイドリーム』のプロデュースを手がけるのはアヴリル・ラヴィーンテイラー・スウィフト、P!nkらのコラボレーターとして知られているブッチ・ウォーカー。
彼が手がけたウィーザーは、今までになくキャッチーなメロディーを際立たせたパワー・ポップを響かせながら、60年代、ロック・スター、そして恋する彼女への憧憬を詰め込んだものになっている。

Weezer - Beach Boys

Weezer - Weekend Woman

“Beach Boys”の歌詞では、《みんな誰よりもクールになりたいよね / 今はヒップホップが流行ってるけど僕たちは目立たない存在のまんまだ》《僕が西側に住んでたキッズの時大好きだったバンドの話をさせてよ / もっと音を大きくして / ビーチ・ボーイズの曲だから》と歌われている。

また、『パシフィック・ドリーム』のアートワークが公開された際、同時に中国の思想家である荘子の「胡蝶の夢」の一説が引用されていた。

ロック・スターになりたいけど憧れのスターみたいにクールになれない、胡蝶のつもりでひらひらと飛んでいてもふと我に戻ると自分は飛べない自分のまんま。愛されたいけどなんだか上手くいかない。

リヴァースやバンドが持つそんな等身大のもどかしさは1stアルバムから今に至るまでバンドの真ん中で大音量で鳴り響いている。どこか情けない泣き虫ロック・スターは、新作でも相変わらず多くの人の心を掴み、そして深く愛されるだろう。
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