ブルース・スプリングスティーン、今はトランプ批判の曲を書くつもりはないと語る

ブルース・スプリングスティーン、今はトランプ批判の曲を書くつもりはないと語る

10月12日からニューヨークのブロードウェイでの定期公演『Springsteen on Broadway』を開幕させるブルース・スプリングスティーンだが、アンチ・トランプ的な楽曲を今書く気にはならないと語っている。

ブルースは2015年の『ザ・リバー』35周年記念盤となった『ザ・リバー・ボックス』のリリース以来、そのツアー、『ボーン・トゥ・ラン ブルース・スプリングスティーン自伝』の出版、その自伝と連動した自選コンピレーション『チャプター・アンド・ヴァース』のリリースと回顧的なリリースや活動がここのところ続いてきている。

さらに『Springsteen on Broadway』ではブルースの弾き語り演奏と語りが披露される予定のため、これもまた自身の足跡を振り返る内容になることも予想される。

Variety」の取材に応えたブルースは、最近回顧的な活動が続いていることを指摘され、かつ『Springsteen on Broadway』を終えた後これまでと違った活動の予定はあるかと訊かれ、次のように答えている。

「まだリリースしてない(ソロ・)レコードを仕上げることになるんだろうな。このアルバムはまるで時事的な話題は扱ってないんだ。そういう時事的な曲作りっていうのは、現時点ではあまり興味を引かれないんだよ。

そういう文脈で言いたかったことの多くは『レッキング・ボール』でかなり吐き出したしね。だから、トランプ批判を書かなきゃって駆り立てられる気持ちもないんだ。今はあんまりそういう必要はないかなって思えるんだよね」


それは他にもそういうことを言っている人が多くいるからか、という問いには「そうだよ、どこもかしこもそういうので溢れてるからね」と答えていて、次のように続けている。

「今の俺にはちょっと過剰かなって思えるんだ。それにね、前から言ってるけど、俺は自分にとってパーソナルで大切なことを、どういう形ならそれをうまく伝えられるかっていつも考えてるんだよ。それにオーディエンスが必要としているものはかなり幅広いんだ。

だから、なにについて書くにしても、まずは自分にとって必要なことを書くもんであって、俺もこれは前にもインタビューで言ってきてるし、マーティン・スコセッシ監督も言ってることだけど、『アーティストの仕事とは、自分の強迫観念にオーディエンスの関心を向けることだ』っていうことなんだよ。だから、俺は自分が取り憑かれていることにオーディエンスも興味を持ってもらえるくらいにうまく書きたいなということを願ってるんだよ」


Bruce Springsteen - Rocky Ground

さらに音楽において、政治的なテーマと向き合う鉄則については次のように語っている。

「俺はやっぱり人が音楽に興味を向けるのはエンターテイメントを求めているからだと思うんだよね。だから、そういう芸として日常的な悩みを表現することもできるし、政治的な話題を届けることもできるし、音楽ではそれがやりやすいんだと思う。

でも、やっぱり基本的には心の問題なんだよ。聴き手が期待しているのは、政治よりももう一歩深いところまで掘り下げてほしいってことで、自分たちの個人的な内面を摑み出してほしがってるんだよ。日常場面における心の奥底での葛藤とか、そういうところにアーティストに手を伸ばしてもらいたがってるわけだ。
だから、ただ議論を吹っかけるだけの作品なんか俺は作らないし、作ったとしてもリリースはしないよ。そういうのはとりあえず聴いてくれる聴き手の好意を逆手に取るようなことだからね。

だけど、しっかり動機に動かされたなら俺も"American Skin (41 Shots)"みたいな曲は書くってことだよ〔"American Skin (41 Shots)"は1999年に強姦事件犯人に間違われた23歳のギニア系移民のアマドゥ・ディアロがなんの銃器も持っていない状態で、一方的に警官4名に射殺された事件を歌っていて、警官らが41発もの銃撃を行ったことを糾弾している〕。あれはごく自然と書けてしまった曲で、時事的な楽曲としては俺が書いたものでは一番よく出来たものなんだ。

だから、そういうのは湧き出てきたから書くだけなんだよ。それだけ強いものを感じたら、今だって俺は書くよ。だけど、よく気をつけなきゃいけないんだよ、聴き手が聴いてくれるもんだっていうことに悪い意味で頼りすぎることになることもあるからね」

Bruce Springsteen & The E Street Band - American Skin (41 Shots)
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