元R.E.M.のマイケル・スタイプは20年前に自身のセクシュアリティについて公にした時のことをザ・ガーディアン紙に寄せたエッセーで振り返っている。
マイケルは1994年にさまざまな憶測を呼んでいた自身の性癖について、自分はゲイでもストレートでもバイセクシュアルでもなく、ただ男性や女性も同じように魅力を感じるし関係を持ってきたと明らかにしたが、当時の心境や状況などを次のように振り返っている。
「あれは1994年の9月のことで、ぼくのバンドのR.E.M.はバンドにとってそれまでで最も成功したアルバムを2枚発表していた。『アウト・オブ・タイム』と『オートマティック・フォー・ザ・ピープル』でぼくたちは世界的に2500万枚ものレコードを売ることに成功し、5年ぶりのツアーに出るべく足慣らしをしているところでした。おまけにぼくは自分でも思ってもいなかったほどに有名になっていた。そんな時に、ぼくはこの時の自分たちの次回作『モンスター』とそのツアーのプロモーションで、自分のセクシュアリティを公にすることに決めたのです。ぼくは自分が成人してからの人生において男性とも女性ともセックスを楽しんできたことをただ話してしまうことにしました。それは単純な事実だったし、それを明らかにすることができてよかったと思っています」
「この頃だと、自分たちの抱える真実についてあえて声を上げるような公人はまだあんまりいませんでしたし、そんなことを実際にやり遂げてみせた数少ない人たちにぼくも一緒に加われることになったのが嬉しかった。自分としてはずっとかなりみえみえなことのようにも思えていたことがようやく正式な記録になった瞬間でした。それは本当に肩の荷が下りるような気分でした。バンドも家族も友達もみんな、それまでずっとしてくれたようにぼくの後押しをしてくれて、みんなには全面的に支えられることにもなりました。その一方でぼくも注目を浴びることや自分の意見を表明することに慣れてきていたし、それまで感じたことのなかったような自信を自分に対して感じられるようになってきたのです」
「1994年の時点ではまだ人々のセクシュアリティについての概念というのは大半が二元的なものだったから、ぼくの発したメッセージはそういう人たちにとってはわかりにくいものだったはずです。けれども、それがこの20年の間にここまで変わったことにぼくは本当に気分が高揚します。21世紀はぼくたち全員に、そして特に若い世代の人たちに対して、一人一人の個人に表出されるセクシュアリティとアイデンティティはこれほど流動的であることを許されるということが、明確な考え方としてもたらすようになったのです。性同一性、あるいはセクシュアリティやアイデンティティの多様さなどといったことは今では広く話し合われ、討議されるテーマになってきているし、ごくなにげなく会話にも登場する話題にもなってきています。これほど早く人々の概念が進歩的に変化していくのを見届けるのはとても刺激なことです」
「過去20年にわたって自分の真実を公で語ることによって、ぼく自身もよりよい人間になれたし、そのことがぼくを周囲にとってより付き合いやすい人間にもしてくれました。ぼく自身の意見を明確にしていくのに役に立ちましたし、大人としてどういう人間になりたいのかと自分を固めていくのにも助けになりました。ぼくは今の自分のような人間になれて誇りに思っていますし、そのことを世の中と分かち合ってきたことをとても嬉しく思っています」