【特集】夜の映画館で踏み出した22歳の初めの一歩。スクリーンの前で繰り広げられたUNFAIR RULE・山本珠羽の弾き語り単独公演

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UNFAIR RULEの活動と並行してソロ作品のリリースや弾き語りライブも精力的に重ねている山本珠羽(G・Vo)。22歳の誕生日を迎えた7月2日、弾き語り単独公演『"22" -あの映画に入り込んだまま 私はただ、君をなぞる-』が開催された。会場は、映画愛好家に深く愛されているミニシアター「テアトル新宿」。開演が21時だったことも含め、普段とは趣きが異なる公演となった。辿ってきた日々の中で抱いた感情と現在地を伝えてくれたこのライブの模様をレポートする。

【特集】夜の映画館で踏み出した22歳の初めの一歩。スクリーンの前で繰り広げられたUNFAIR RULE・山本珠羽の弾き語り単独公演

スクリーンに映し出されたオープニングムービー。古いフィルム風の粗い画面の中で、山本が街を歩いたり、映画館の椅子に座ったりしている姿が捉えられていた。そして響いた「よろしくお願いします」という彼女の声。最初に届けられた曲は“20”だった。アルペジオを経て、コードストロークが穏やかに躍動。心の動きとシンクロしているのを感じるギターの音色が、曲に刻まれた想いを浮き彫りにしていく。《いつからだっけ/期待しないのは》にドキリとさせられる。年齢を重ねる中で深まっていく諦念を素直に滲ませつつも、希望のすべてを手放してはいないのを感じる曲だった。歌い終えたあと、「みんなは何歳だろう? 今日の22歳の私を見て、どう思うか? どう重ねるか? いつの自分と重ねるか? 『比べる』じゃなくて、自分と重ねて愛でてくれたらいいなと思ってます」と山本が言ったのが思い出される。このあとの曲たちも、その言葉通りの届き方をしていたと思う。

「バースデーイベントではなく、22歳になった自分がこの日に歌う意味を見出したい」という想いを込めてライブのタイトルを『"22"』にしたのだという。「21歳は、『どんな私でいればいいんだろう?』『どんな私を受け入れてもらえるだろう?』って、考えなくていいこともたくさん考えた1年でした。22歳は少しだけ気にせず、怖がらずに、たくさんの言葉と感情を残していけたらいいなと思います。ゆっくり成長して進んでいきたいです」──誕生日という節目に抱くこの先の1年への想いが語られたあと、UNFAIR RULEの曲である“消しゴム”が披露された。大人になるにつれて様々な物事に対して器用に対処する術が身についていくが、それによって零れ落ちてしまう大切な何かがあるのでは? 消しゴムをモチーフにしながら、そんなことを問いかけてくるこの曲は、誕生日に歌う必然を見出して選んでいるのを感じた。メジャー7thやテンションノートを効果的に活かしたコード進行の繊細なニュアンスが、アコースティックギターの柔らかな響きと抜群にフィットしていた点にも触れておきたい。山本の弾き語りの豊かな表現力にじっくり浸ることができた。

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「22時までですよね?」と、スタッフに残りの時間を確認してから、すぐに歌い始めた“告白”。真後ろにあるスクリーン上に彼女の影が薄っすらと揺らめくのが美しい。何も上映されていない真っ白な画面だからこそ、歌で描かれる世界、物語が、その表面に広がっていくような気がする。《君の前ならチークはいらないかしら》は、ありありと場面を想像させられた。続いて、「20歳の時、少し幸せな曲を書けるようになったことが、私にとってはすごく大きなことでした。すごく大切な人に歌いたいので、今日はここにいるみんなに向けて歌います」という言葉が添えられた“はんぶんこ”。曲を作り、言葉を綴り、歌を歌い、音を奏でる理由や動機は容易に語り尽くせるものではなく、日々変化もしていくのだろうが、山本の心の奥底に揺るがずにあるものに触れた気がする歌だった。

「ポップコーン売っといてなんやけど、食べにくいよな?」──開演前のロビーでは、オリジナルのイラストがプリントされたカップに入ったポップコーンが販売されていた。確かに、弾き語りを聴きながらポップコーンをモソモソと食べるのは、なかなか難度が高い。気兼ねなくポップコーンを味わえる貴重なタイミングのMCタイムで、誕生日を迎える直前の様子を彼女は振り返った。「私、昨日、ひとりで家にいて。22歳だし、誕生日なんてひとりでもへっちゃらだと思ってたし、『誕生日とか別にそんな』ってスカして過ごしてたんです。でも、23時50分くらいからそわそわし始めて、チラチラ時間を見ちゃって」と、昨晩の自分を描写した。誕生日を迎えると、大好きな友だち、バンドメンバー、スタッフ、ファンから次々届いた祝福のメッセージ。もらった言葉に感謝したあと、次のように言っていたのが印象的だった。「誕生日って卑屈に思っちゃうというか。『私の誕生日なんて祝わなくていいよ』って思っちゃうんですよ。でも、たくさんの人たちからメッセージをもらったり、大切な人からLINEが来たりして……誕生日って私が祝ってもらう日というよりは、そんな私に『おめでとう』と言ってくれる人にちゃんと感謝する日だなと思いました。『こちらこそいつもありがとう』の気持ちでいっぱいでした。今日来てくれたみんなにもそう思ってます」──先述の通り、22歳になった当日に歌う意味を見出したくて公演タイトルを『"22"』としたわけだが、ここまでの4曲を歌いながら確信を深めた「意味」が、これだったのだろう。

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誕生日を迎えたのに岡山にいる両親からのメッセージが届かなかったので、痺れを切らした彼女は、自分のほうからモンチッチのLINEスタンプを添えて「産んでくれてありがとう。人生、バリ楽しいです」というメッセージを送ったのだという。「振り返れば上京して2年が経とうとしていて。冷蔵庫を開けたら、最近遠征が多くて家にいられる時間が少ないからスッカラカンで。余ってた卵を使って、パパの朝ごはんによく作ってた玉子焼きを作って。ママがしてくれてたことを全部自分でやって過ごしました。上京してからたくさんのものを背負って、『崩れないように』とかたくさん考えてきたから、たまにはパパとママ、誰かに甘えたいなと思ってしまった22歳でした。そんなことを思い出しながら歌います」という言葉が添えられた“ひとりぐらし”。上京してから彼女が過ごしてきた日々を追体験させてくれるかのようなひと時だったが、間奏を経て2番に入ろうとしたところで歌とギターがストップ。「歌詞忘れちゃった。わかる人いる?」と問いかけると、「靴下……」という囁き声がどこからか聞こえてきた。「ああ!」と思い出して《靴下は常に裏返しのような日々です》と再び歌い始めた山本。観客との距離が一際近くなったのを感じる一場面だった。

「どうですか、映画館? いい感じ? いつもよりみんながどうやって身体動かしてるとか、どんな表情をしてるとか見にくいから寂しい(笑)。面白いことができて嬉しかったです。本当に来てくれてありがとうございました!」と、観客に改めて感謝してから、テアトル新宿に対する想いが語られた。「私の中でも思い出深い場所です。テアトル新宿にふたりで来た日。見れなかった横顔、隠してしまった心、言ってほしかった言葉とかを思い出しながら最後に歌います。ありがとうございました」──そして届けられたラストの曲“テアトル”は、スクリーンに歌詞が映し出される中で歌われた。映画館、劇場、ライブハウスで繰り広げられる物語、そこで受け止める演者やクリエイターの心は他人事や絵空事ではなく、自身のリアルな人生となんらかの形で結びつき、地続きとなっていく。このライブのサブタイトル『あの映画に入り込んだまま 私はただ、君をなぞる』と重ねながら耳を傾けると、そんなことを思わされた。

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歌い終えると、「客電点けてもらってもいいですか? みんなの顔を見たくて」とスタッフにお願いした彼女は、会場を埋め尽くしている観客の顔を見回して「わあー!」と無邪気に声を上げた。そして、映画の完成披露試写会のような撮影タイムがスタート。「フラッシュ以外で撮影をお願いします。では、まずこちらから行きます!」──登壇した演者と司会を兼任しながら撮影会を進行し始めた彼女が公演ポスターの横でポーズをとると、スマートフォンのシャッター音が客席内で一斉に鳴り響いた。ライトを浴びた白いスクリーン、銀色のマイクスタンド、黒い譜面台、白い椅子、赤い客席のコントラストがとてもきれい。「以上で本日の公演を終了させていただきたいと思います。本当にありがとうございました!」と挨拶をして晴れやかな笑顔を浮かべた彼女を、観客の温かな拍手が讃えた。

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●セットリスト
UNFAIR RULE・山本 珠羽
「"22" -あの映画に入り込んだまま 私はただ、君をなぞる-」
2026.7.2 テアトル新宿

01. 20
02. 消しゴム
03. 告白
04. はんぶんこ
05. ひとりぐらし
06. テアトル

●ツアー情報

「UNFAIR RULE “Forgive me for being me" tour」


提供:SPEEDSTAR RECORDS
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部

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