●7.4 vs. yonige
初日のドミコとの対バンが、初めて出会う者同士のガチの触発し合い、され合いを求めるものであったとするならば、2日目のyonigeとの対バンは、音楽表現の仕方こそ違えど、どこかに深いシンパシーを感じ合う、同志の共演といった趣だった。同じく関西出身であるという共通点を持つyonigeのライブでスタートした福岡2日目。1曲目は空間系のエフェクトを生かしながら疾走感も感じさせる“Super Express”。牛丸ありさ(Vo・G)の伸びやかなボーカルにごっきん(B・Cho) のコーラスが重なって、クールなロックサウンドに早くも観客は体を気持ちよく揺らす。そして“our time city”での《ぼくら1994だから》の歌詞が、yonigeのふたりとあいみょんがともに1994年代生まれの同い年であることを思い出させ、この日の対バンを自ら祝福するアンセムのように響いていた。
「あいみょんのおかげで久しぶりにホールでライブができて嬉しいです」と牛丸が語り、その後も新旧織り交ぜたセットリストで、yonigeの魅力をしっかりと伝えるライブが展開されていく。2017年のアルバム『girls like girls』のリード曲であった“ワンルーム”がギターロックとしてのyonigeの良さを際立たせ、今年リリースされたアルバム『Empire』に収録された“スクールカースト”では、静かな怒りを感じさせる不穏なロックサウンドを鳴らす。過去曲から現在まで、カテゴリーにとらわれずにアップデートし続けるyonigeの矜持を見せるようなセトリだ。以前から親交を深めていたあいみょんとの間にある音楽的なインフルエンスについても牛丸は語る。「あいみょんが“ノット・オーケー”という曲を出したとき、私もちょうど新曲を出す前で、自分の曲とあいみょんの曲の間にシンパシーを感じた。あいみょんが見てるものにすごくシンパシーを感じて、すぐに『“ノット・オーケー”の歌詞、やばいわ』ってメッセージを送って。で、そのあと自分の新曲もあいみょんに送るというやりとりをしました。ええやろ?」と笑いを誘うと、「その曲を」と言って“愛しあって”を披露。続く、最新アルバムからの“神様と僕”でも、yonigeならではの諦念と期待とが入り混じった、複雑な感情が表現されていく。

「なんであいみょんと仲良くなったのか忘れたけど」と牛丸が切り出すと、ごっきんはすかさず「うちは覚えてるで。牛丸とあいみょんが何かのフェスのインタビューで話したのが最初」と語る。それから、2〜3ヶ月に一度は遊ぶ仲になったという牛丸とあいみょん。ごっきんはさらに「ふたり、陶芸とか一緒に行ってんねん。かわいいね」と暴露。そんな和むMCのあと、妙に緊張した面持ちで牛丸が「対バンする相手の曲、やったりすることってあるけど、ちょっと今日もやっちゃおうかな……」とつぶやき、客席に向かって「助けてくださいね」と告げると、なんと“貴方解剖純愛歌〜死ね〜”を歌い始めた。あいみょんも知らされていなかった、サプライズでのカバーだった模様。それにしてもyonigeのバンドサウンドにこの歌の世界観は似合いすぎ。牛丸とあいみょんとの間にあるシンパシーはやはり特別なものだと感じられた。「歌えますか?」と呼びかけた2サビでは大きなシンガロングも後押し。yonigeの演奏で《死ね。》と叫ぶという、対バンツアーならではの貴重な時間を共有した。
「ラスト1曲歌って、あいみょんにつなぎたいと思います」と、ゆったりとしたギターアルペジオから始まったのは“春の嵐”。2018年リリースのアルバム『HOUSE』に収録された楽曲は、現在のyonigeの演奏によってより深みを増し、yonigeが現在進行形で進化していることを実感させる。初日のドミコとはまた違うが、yonigeもまた、その音楽であいみょんを存分に刺激したはず。
あいみょんは間違いなく、この日のyonigeの自由なロックサウンドにも触発されていた。あいみょんの「ロック」が昨日の衝撃を経て、この日は同志との共振を感じてさらに熟成されたような、そんな感覚もあった。爽やかなスカイブルーのチェック柄のセットアップ姿のあいみょんは、「yonigeの帽子もらった!」とキャップをかぶっての登場。「センスがいいよね」と本当に嬉しそう。盟友とも言えるyonigeとの「vs」は、これもまた対バンの醍醐味を感じさせるものとなった。“桜が降る夜は”の豊かなバンドサウンドは、バンド自体が生物であることを思わせるように有機的な柔らかさを感じさせながら、その後のMCでは「信じられへんくらいテンション上がってる」と言っていたように、その歌声にはいつになく高揚感が漂う。yonigeが“貴方解剖純愛歌〜死ね〜”をカバーしたことは本当に知らされていなかったようで、「うちのスタッフにも内緒だったみたい。『そういえば(牛丸が)廊下で“解剖”歌ってるなあって思ってたんですよ』って、さっきスタッフが言ってて」と明かし、「自分以外の人が歌っているのを聴くのも初めてで、いい曲やなあって(笑)。みんなはライブでいつも叫んでるけど、私さっき袖で《死ね。》って叫んで、もうめっちゃ気持ちいいやん(笑)」と、本当に嬉しそうだった。

初日はドミコの演奏にあてられ「かっこつけてMC短めにしたら10分巻いたんです。その分(打ち上げで)めちゃ酒飲めました(笑)」と、楽しい福岡の夜を過ごしたことを語ったあいみょん。今日は客席とのコミュニケーションも通常運転。「ごっきんに陶芸してるのバラされた(笑)」という話には、ファンがすかさず「何作ったの?」と問いかけ、それに「私が猫の置物、牛丸が犬の置物」と答える一幕も。yonigeファンであいみょんを初めて観るという人のためにも、両者の関係性をたっぷりと語ってくれたのも貴重だった。「yonigeが“愛しあって”の次にやった“神様と僕”って曲がすごい好きで、ああいう曲を私も作りたいって思ってた」という話に、牛丸とあいみょんに通底するシンパシーの強さをあらためて感じた。yonigeとあいみょんの共鳴は、“鯉”にも感じる。山本健太の鍵盤が軽快なスカのリズムで鳴ると、情緒をくすぐるメロディに体をゆらしながら聴き入るオーディエンス。qurosawaと八橋義幸のギターソロの応酬もロックバンドのスリルを感じさせ、長くあいみょんをサポートしているメンバーたちにとっても、この対バンツアーは特別なものになっているのだろう。
続いての“夢追いベンガル”が素晴らしくアッパーなエネルギーに満ちていた。ハンドマイクで歌いながら、縦横無尽に動き回るあいみょん。バンドサウンドもあいみょんのテンションに触れてヒートアップ。すると曲の途中であいみょんはステージを降り、客席の間を駆け回りながら、観客たちとハイタッチをしながら歌うという、お客さんにとっては予想外の展開。大歓声に包まれる。1コーラスが終わる頃にはちゃんとステージに戻ると、“ベンガル”恒例の、あいみょんの見事な脚上げも披露される。観客とのコール&レスポンスも最高潮で、井嶋啓介もベースを弾きながら思わず脚上げ(あとであいみょんに「全然上がってない」とツッコまれる)。最高潮の盛り上がりで、福岡の夜をさらに熱くさせていった。
“会いに行くのに”では一転、とてもあたたかなバンドサウンドとメロディが耳を惹き、あらためてあいみょんの歌声に聴き入る。この福岡2デイズ、あいみょんの歌声はいつにも増して、より力強く、伸びやかに響いていたように思う。それを引き出したのは対バン相手であるドミコとyonigeであることは間違いない。終演後はまたひとりステージに残り、ピックを投げたり、韓国から来たというファンにも「カムサハムニダ」と声かけをしたり、最後まで名残惜しそうにステージで挨拶を続けていた。そして最後は「みんなで『ラブ・コール』ポーズをしよう。せーの!」と、受話器を耳に当てるポーズをすると、「yonigeサイコー!」と言って去っていったのだった。(杉浦美恵)
あいみょん5年ぶりの対バンツアー「ラブ・コール2」の全公演の模様&終演後インタビューを8月30日発売の『ROCKIN'ON JAPAN』10月号にて大特集! お楽しみに!
AIMYON vs TOUR “ラブ・コール2”
2024.7.3&7.4 福岡 サンパレス
●ドミコ/セットリスト(7.3)01. 問題発生です
02. びりびりしびれる
03. 不眠導入剤
04. てん対称移動
05. こんなのおかしくない?
06. なんて日々だっけ?
07. のらりつらり
08. ばける
09. 化けよ
10. 深海マリアナ海溝旅行にて
11. ユナイテッドパンケーキ
12. ペーパーロールスター
●yonige/セットリスト(7.4)01. Super Express
02. リボルバー
03. our time city
04. あのこのゆくえ
05. ワンルーム
06. スクールカースト
07. 2月の水槽
08. 愛しあって
09. 神様と僕
10. 沙希
11. True Romance
12. ピオニー
13. 新曲
14. さよならプリズナー
15. 春の嵐
Part1・名古屋編(w/HY・大塚 愛)Part3・大阪編(w/森山直太朗・秋山璃月・レキシ)あいみょん オフィシャルサイト
提供:unBORDE / WARNER MUSIC JAPAN
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部