11月15日、16日に埼玉・ベルーナドームで開催された「TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR 〈ACT : TOMORROW〉 IN JAPAN」は、8月のソウル公演を皮切りに開催中の自身4度目となるワールドツアーの日本公演。その日本公演も、自身最大規模となる5大ドームツアーとして来年2月まで開催される。ドーム公演としては約1年2ヶ月ぶりとなった埼玉公演のうち、本稿では16日の模様をお届けする。
ステージに設置された巨大なLEDに雪が降り積もった大地と枯れた切り株という寒々しい風景が映し出される中、黒のナポレオンジャケットを着て不穏な曇天の空を見上げる5人のオープニング映像でスタートすると、その世界観を分断するように、けたたましいベルの音とトラックのクラクションの音が。すると、ギターのイントロに続いてYEONJUNの「AYO埼玉! 準備はいいですか?」の威勢のいい掛け声から“LO$ER=LO♡ER”がスタート! なんと1曲目から、ライダースモチーフの白いジャケットに黒パンツの衣装のメンバーがステージ両端からトラック型のトロッコに乗って登場するという意表を突く展開に3万人のMOA(モア:ファンの呼称)は爆発的な盛り上がりを見せる。
SOOBIN、TAEHYUN、HUENINGKAIの3人と、YEONJUNとBEOMGYUの2人に分かれてトロッコ乗り込んだメンバーたちも、テンション高くシャウトしたりジャンプで会場を煽ったり、客席に手を振ったりしながら歌を届け、さっそく祝祭感に包まれる中、続いて“きっとずっと (Kitto Zutto)”が鳴れば会場丸ごとアクセル全開で疾走! トロッコから降り、YEONJUNの「行きましょう!」の声で会場をさらにブーストさせながらメンバー5人で花道を全速力で走り抜けると、ミュージックビデオを踏襲するように観覧車がバックに映し出され、ドリーミーなイントロに沸き立つ会場とHUENINGKAIとの「Blue Hour !」の掛け声で“5時53分の空で見つけた君と僕[Japanese Ver.]”をドロップ。TAEHYUNは客席にマイクを向けて「You」の合唱を求めるなど会場と積極的にコミュニケーションを図る。曲終盤、ダンスブレイクに突入すると、会場はこのスペシャルな展開への歓喜をメンバーの名前を順に呼ぶ掛け声の大きさで表現。ちょうど日没から45分くらいが経過し、きっと会場の外もブルーアワーを迎えている頃であろう時間帯の空に楽曲を溶かしていった。
間髪入れずに小気味よいニュージャックスイングのビートが鳴ると、“Blue Orangeade”へ。メンバー5人それぞれが自由に音楽に身を委ねながら会場を盛り上げていくと、続けて、しっとりと歌い上げるYEONJUNからTAEHYUNへのボーカルリレーがアフロハウスの軽快なトラックへとバトンタッチする“Love Language”。性急に刻むビートに細やかなステップを乗せ、目まぐるしく変わるフォーメーションを正確にパフォーマンスしていく5人。曲の軽やかさとは裏腹にフィジカルを問われるパフォーマンスを、あえてダンサーを従えずに5人だけでパフォーマンスするところに、彼らの表現者としての意地を感じる。
5曲を猛烈な勢いで駆け抜けたところで、SOOBINの掛け声から「ONE DREAM!こんばんは、TOMORROW X TOGETHERです!」と会場に挨拶。日が落ちると急激に気温が下がるこの季節、「BEOMGYUがあたたかくしてあげる」と、僕の胸に飛び込んで来いと言わんばかりにジャケットの前を開けて抱きしめる仕草をしたり、「風邪引いてないですか?」(SOOBIN)などと会場のファンを気遣いながら日本語で交流する。これまで3回のワールドツアーを回ってきた彼らは、その中で「ACT : LOVE SICK」「ACT : SWEET MIRAGE」「ACT : PROMISE」と物語を一章ずつ積み上げてきた。そんな彼らのツアーの中でも今回のツアーは、「詰め合わせのような舞台でTOMORROW X TOGETHERの世界観を全部お観せします」(YEONJUN)という位置づけ。「今回のツアー『ACT:TOMORROW』は一緒に明日を作っていくという意味を込めた公演です」(TAEHYUN)と、今日これからの時間が、彼らのここまでの集大成であり、かつその次へと向かうための時間でもあることを会場に伝える。
鮮烈なシンセサウンドから“Can't Stop”へ。10月22日に発売された日本3rdアルバム『Starkissed』のタイトル曲であるこの曲は、80年代ポップスを彷彿させるトラックに音程が跳躍するメロとワンノートで展開するサビが乗る。音楽的な表現力が求められるこの曲を、ハンドマイク片手に安定感のある歌と、しなやかさとスピード感が同居するダンスで立体的に描き出し、シアトリカルな振付を的確に表現して楽曲に奥行きを与えている。
ダンサーによるブレイクを挟むと、メインステージ中央から白いジャケットを脱いでオールブラックコーデのYEONJUNが飛び出し“Danger”へ。ステージ下手のHUENINGKAI、上手のSOOBIN、花道のTAEHYUN、そしてステージ中央から登場するBEOMGYUと、会場の視線を次々と奪いながらパートリレーし、公演冒頭とは真逆のダークな世界観へと会場を引き込んでいく。ダンスブレイクから“Upside Down Kiss”へと続くと、色気を存分に纏った彼らのパフォーマンスが、低体温のトラックとは相反して会場のボルテージを高めていった。
VCR(曲間に流れる演出映像)を挟み、パンク&グランジなロックファッションに身を包んで登場すると、ハードなロックナンバー“Growing Pain”をドロップ! ロック特有の分厚いバンドサウンドにも負けない密度の高い声でハードに歌いきり、続くダンスブレイクも全力で激しくヘドバンすると、続く“Frost”では、HUENINGKAIの憑依型の演技からカオティックで不気味な世界観に会場を一気に引きずり込んでいく。そのHUENINGKAIの「埼玉Let‘s go!」のアジテートから炎とともに“Good Boy Gone Bad[Japanese Ver.]”へと雪崩れ込むと、曲中、首を切るジェスチャーで客席を挑発的に煽り倒して会場を熱狂の渦にしてみせたのだった。
暗転した会場に雷鳴が轟くと雰囲気は一変。夜の街を背景にHUENINGKAIの伸びやかな歌声から“ひとりの夜 (Hitori no Yoru)”へ。メインステージに設置された階段に腰を下ろして丁寧に歌い聴かせていく時間は、先ほどの狂演がにわかに信じがたいほどの静謐さを湛える。TAEHYUNのハミングで締めくくると、エモーショナルなギターリフをYEONJUNが受け取って“Farewell, Neverland”へと続く。感情を揺さぶるメロディに、客席もジワジワと熱を帯びだすと、ラストは階段から降りて5人でのダイナミックなダンスで締めくくり、TAEHYUNの「I Know I Love You」のシャウトから“0X1=LOVESONG (I Know I Love You) feat. 幾田りら[Japanese Ver.]”へ。スタンドマイクで歌うスペシャルアレンジでのパフォーマンスに会場から大合唱が湧き起こり、5人もその熱量に負けじと熱唱すると、楽曲のスケールは音源の何倍にも膨れ上がりながら壮大にドームを満たしたのだった。
今年TXTは、7月にリリースされた韓国4th Album『The Star Chapter: TOGETHER』に、グループアルバムのトラックとしては初めてメンバーそれぞれのソロ曲を収録し、さらにそれらのミュージックビデオも制作した。メンバー一人ひとりの表現の深度が確実に増した今、その楽曲たちを披露するソロステージのセクションがスタートする。
ソロステージの先陣を切ったのは、TAEHYUN。デニムシャツを肩に掛けて黒Tシャツに黒スキニーという、夜に溶けてしまいそうな出で立ちで登場し、“Bird of Night”をスタンドマイクで歌う。ステージのLEDに舞う青い羽根に加え、彼を映す映像にも青い羽根がリアルタイムで映し出される演出で、夜が隠す自由への願いを透明な歌声で歌う。最後は右手を高く挙げて会場に美しい星空を呼び寄せて幻想的に締めくくると、続くSOOBINは、グッズのバッグをステージに持ち込んで何やら取り出す。「今日は寒いから、これ(グッズのブランケット)掛けて、このネギ(深谷ネギをオマージュした模型)で鍋でも作ろうか?」とユーモラスにMOAに語りかけて“Sunday Driver”を披露。チェックの半袖シャツに水色のダメージデニムという爽やかな衣装で、バックダンサーを従えヘッドセットで歌い踊る。青空とハイウェイをバックにこれまた爽やかなサウンドにSOOBINのハイトーンボイスが映える楽曲を完璧なパフォーマンスで届け、会場を大いに盛り上げた。
ステージがピンクのライトに照らされる中、黒シャツ&黒パンツ姿でダンサーを従え椅子に座ってクールな視線を向けるのは、HUENINGKAI。ソロ曲“Dance With You”で彼が見せたその姿は、グループ最年少の少年の姿ではなかった。女性ダンサーと絡むたびに会場から悲鳴が上がる中、アダルトな空気を纏い、その手先、足先にまで気を張り巡らせた緊張感漂うダンスパフォーマンスは彼の新境地だった。
モノトーンの衣装に着替え、オールバックに髪型を変えてメインステージの階段の中ほどに登場したのはYEONJUN。レゲエビートと歌謡曲的なメロディラインが独特の世界観を描く“Ghost Girl”を、モノクロ映像と芸術的なダンスパフォーマンスと共に歌い届ける。まるで1本の映画を観たような感覚を抱く作品性の高いパフォーマンスから一転して、極彩色のレーザーが乱れ飛ぶ中繰り出したのは、11月7日にリリースされたソロ1stミニアルバム『NO LABELS: PART 01』のタイトル曲“Talk to You”。会場が真っ赤に染まった中でのアグレッシブなパフォーマンスに大熱狂する会場にラフなピースサインを残して去ったYEONJUNは、わずか2曲で会場を虜にしてしまう、ソロアーティストとしての圧倒的なステージ掌握力を見せつけたのだった。
会場の興奮も冷めやらぬ中、ソロステージのラストを飾ったのは、BEOMGYU。ミドルなギターイントロが響くと、ライダースジャケットにデニムというラフな格好でメインステージに登場し、両手を広げて“Panic”へ。これは今年3月に『BEOMGYU's Mixtape: Panic』としてリリースされた自作曲だ。タンポポの綿毛が飛ぶ映像をバックにひとりスタンドマイクの前に立ち、彼の内側を吐露する詞を、憂いと優しさを湛えた歌声で客席の一人ひとりに寄り添うように届けていく。曲が終わってステージを去る時、ライトが落ちた中でも客席に向かって深々と一礼をして去るその姿には、彼の真心が滲んでいた。
ソロステージのセクションを終えると、本編もいよいよ終盤へ。スタッズがあしらわれたカーキのジャケットとブラックデニムという衣装で5人がふたたび登場すると、「一緒に歌ってジャンプして!」(BEOMGYU)の呼びかけから、『Starkissed』収録の日本オリジナル曲“Where Do You Go?”へ。ステージ上、5人思い思いの場所から客席と視線を交わしながら一緒に歌うと、続く“No Rules”でその盛り上がりはさらに熱を上げていく。間奏でTAEHYUNが手を大きく振り上げながらステージ上に散らばるメンバーを呼び寄せ、センターステージでMOAお待ちかねの5人の肩組みダンスもバッチリ決めると、会場を多幸感で満たしたのだった。
MCでは、ソロパフォーマンスにまつわる裏話や次のソロ曲のアイデアについて、さらには初めて撮った日本語曲のMVが“9と4分の3番線で君を待つ (Run Away) [Japanese Ver.]”だったこと(アカペラで歌ってみせながら)などの思い出話で盛り上がると、「あの日の記憶を巻き戻して次のステージに行きましょう」(YEONJUN)と“Deja Vu [Japanese Ver.]”がスタート。客席の合唱と掛け声もより一層美しく響くのに呼応するように、ドラマティックな楽曲がより色彩を増して鳴ると、突如、炎とレーザーが飛び交うノイジーな空間が現れ、“Eternally”で陰と陽、混沌と静寂のオセロをひっくり返すように畳み掛けて会場を圧倒したのだった。
再度ステージに姿を表した5人は、冒頭のVCRと同じ衣装で登場し、モールス信号の音を合図に彼らのデビュー曲、“ある日、頭からツノが生えた (CROWN) [Japanese Ver.]”を披露。今ツアーではダンスを封印し、ピアノとアコースティックギターメインの静かなアレンジに歌を乗せていくと、韓国最新曲“Beautiful Strangers [Japanese Ver.]”の全身全霊のパフォーマンスへと繋いだ5人。最後に彼らは、この日ここまで、1秒の隙も与えないくらいに詰め込んできた彼らの足跡をたどる楽曲群とパフォーマンスの数々そ、まるで表紙と裏表紙をつけるかのように、デビュー曲と最新曲とでまとめあげたのだった。
「僕たちに2回目のドームツアーをさせてくださった日本のファンの皆さんに感謝しています」(SOOBIN)、「皆さん一人ひとりの顔を一生懸命見ようとしました。皆さんが本当に幸せそうだったので、僕も幸せな気持ちになりました」(HUENINGKAI)と、メンバーそれぞれ、会場のMOAに感謝を伝えていく。「夢ではないかと思えるくらい幸せな時間を過ごせました。僕には東京ドームに立ちたいという夢があるので、今日いらした皆さんに東京ドームでお会いできたら嬉しいです」と、昨年の東京ドーム公演は怪我で全力を出せなかったBEOMGYUは来年1月に控える東京ドーム公演に想いを馳せる。そしてYEONJUNとTAEHYUNは、「皆さんのおかげで本当に楽しくて、僕たちもステージを駆け回ることができました。残りのドームツアーも幸せな気持ちでステージに立ちたいと思います」(YEONJUN)、「これまでたくさんの公演をしてきましたが、こんなに大きな会場を満席にできるということが簡単ではないことを誰よりもわかっているつもりです。いつも会場をいっぱいにしてくださる皆さんに頭が上がりません。皆さんがいつも僕たちをたくさん観られるように、僕たちも努力します」(TAEHYUN)とこれからへの期待と決意を込めて語ると、本編を締めくくる“星の詩 [Japanese Ver.]”へ。ベルーナドームが星の光で満たされる中、一つひとつの星を目に焼きつけるかのように、会場全体を見渡しながらやさしい歌声を届ける5人と、その姿に応えるようにペンライトを左右に振る客席。5人とMOAとのあたたかな感情の交換で締めくくったこの日の公演。実は、BEOMGYUが「星の詩」の導入の日本語MCを言い切れないというハプニングがあったのだが、曲中にHUENINGKAI、YEONJUN、TAEHYUNがBEOMGYUを抱きしめて慰めるという一幕も含めて、「僕たち、どこにいても何があっても一緒だ」という気持ちで満たされる時間だった。
アンコールは、ステージ裏から「MOA、今日楽しかった? 僕はまだかなー」と呼びかけるTAEHYUNの歌い出しによる“永遠に光れ (Everlasting Shine)”でスタート。 5人がツアーグッズのベースボールシャツに揃いの白いハーフパンツでふたたびトロッコに乗り込んで登場すると、残りわずかな時間をメンバー5人と楽しもうとするファンの熱気で会場の温度がふたたび急上昇。“Magic”でメンバーのアジテートによる会場一体のハンドクラップを巻き起こすと、ラスト“MOA Diary (Dubaddu Wari Wari) [Japanese Ver.]”まで、MOAと5人で最高の時間を作り上げていった。
挨拶をしてステージを去った5人に鳴りやまないアンコールの声が挙がると、再度5人がオンステージ! ダブルアンコールの“Dear Sputnik”そして“Thursday's Child Has Far To Go”で、メンバーそれぞれ、客席に愛おしそうな笑顔を向けながら、ステージを全力で駆け回り、花道の際の際まで身を乗り出し、音が止むその瞬間まで全力で音楽を届けると、「今日、本当に本当に幸せでした。次に会う時はもっとかっこいい姿でMOAを幸せにします」(SOOBIN)と、会場を埋めたMOAと再会する日の約束を交わして、万感の公演を締めくくった。
5人が去ったステージには、葉を茂らせた大きな広葉樹と、その周りに色とりどりの花が咲き乱れる風景が映し出されていた。それは、公演冒頭に映し出されていた景色が、彼らの音楽で生命と色を取り戻したことを表現していた。そしてそれは、この日集まったMOA一人ひとりの心の中、何より、そんなMOAと心を通わせるTXT5人の内面を映していたのではないだろうか。約6年半の活動の中で、彼らはファンと音楽を通したコミュニケーションを重ねながら、自分たちの音楽を信じ、自分自身を信じることができるようになったのではないだろうか。だからこそ、今の彼らの音楽、彼らのパフォーマンスがこれほどまでに誰かの心に届くものへと成長したのだろう。これまで培ったものを大事に綴じた彼らは、それを胸にこの先も揺るぎなく進化し続けていく、そんなことを5人の姿に感じた夜だった。
彼らは12月30日のCOUNTDOWN JAPAN 25/26で、2025年の日本でのステージを締めくくる。まもなく8年目に突入する彼らの今の音楽は、きっと誰の胸にも届く普遍的な響きを持っている。そんな彼らの音楽にぜひ触れてみてほしい。(中村萌)
●リリース情報
『Starkissed』
●ツアー情報
「TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : TOMORROW> IN JAPAN 」
2025年
11月15日(土)埼玉・ベルーナドーム
11月16日(日)埼玉・ベルーナドーム
12月6日(土)愛知・バンテリンドームナゴヤ
12月7日(日)愛知・バンテリンドームナゴヤ
12月27日(土)福岡・みずほPayPayドーム福岡
12月28日(日)福岡・みずほPayPayドーム福岡
2026年
1月21日(水)東京・東京ドーム
1月22日(木)東京・東京ドーム
2月7日(土)大阪・京セラドーム大阪
2月8日(日)大阪・京セラドーム大阪
提供:株式会社ユニバーサルミュージック
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部