カナダはブロークン・ソーシャル・シーン(以下BSS)の主宰するレーベル、ARTS&CRAFTS所属のバンドであり(メンバーの一部がBSSとかぶってもいる)、これまでに3枚のアルバムをリリースしているスターズ。前回の来日は昨年3月、BSSとのカップリング・ライブだったが、今回は単独。
男女ツイン・ボーカル。元々は宅録から始まったのがだんだんバンドになった、というプロフィールがうなずける、チープなシンセの音などにちょっと打ち込みっぽいところのあったりするバンド・サウンドと、60\'sにも、ニューウェイヴにも、90年代中期以降の一部のアメリカン・インディーにも通底する、甘く美しいメロディ。
以上、音から受ける印象を箇条書きにしましたが、それらのこのバンドの強いポイントの数々が、ていねいに、1曲ずつ目の前に並べられていくような、そしてそのいちいちに、メッセージというか思想のようなものがこめられているような、そんな誠実なライブだった。
特に目と耳をひいたのは、男性ボーカルのほうのトーキル・キャンベル。ライブが始まって2曲目ぐらいで、もう顔が真っ赤になっている(その後もキーの高い曲にさしかかるたびにそうなる)。曲によって、キーボードを弾いたりトランペットを吹いたりピアニカを手にしたりしながら、そしてアンプやマイクスタンドを覆うように飾りつけられた大量の花をフロアに投げたり、花びらをむしってばらまいたりしながら、懸命に声をふり絞るさまが、どうにも必死で、一所懸命で、真剣で、なんだかとてもよかった。もうひとりのボーカル、エイミー・ミランが、基本的にでーんと構えているのと好対照。1曲進むごとに、どんどんフロアの熱気と一体感が上がっていくさまが「ああ、この人の真摯さがちゃんと伝わっているなあ」という感じでした。いい夜でした。
あと、オープニング・アクトは、OGRE YOU ASSHOLEだったのだが、これも、ちょっと驚くほどよかった。 どんどんシンプルでシャープで、やりたいことがはっきりしたバンドになりつつあると思う。で、登場当時のOGREが「なんだかわからなくて面白い」バンドだったとしたら、その「わからなさ」や「不思議さ」の必然性とか大事さみたいなものが、よりクリアに伝わるようになってきている。トーキルも、MCの度に、「オウ、オウ、OGRE YOU ASSHOLE!」と、名前を連呼しつつ、感謝の意を表していました。あれ、音もだろうけど、名前も気に入ったんだと思う。(兵庫慎司)
スターズ @ 渋谷クラブクアトロ
2009.01.10