コールドプレイ、10thアルバム『ムーン・ミュージック』をリリース! 本作の魅力と最近の動向とは?

コールドプレイ、10thアルバム『ムーン・ミュージック』をリリース! 本作の魅力と最近の動向とは?

10月4日にリリースされた10thアルバム『ムーン・ミュージック』は間違いなく、コールドプレイという音楽共同体としての大いなる到達点を刻む作品である——と同時に、何か途方もない未知の存在に出会ってしまった瞬間の不安にも似た不思議な感覚を、今作の10曲から受け取った人も少なくないと思う。

2021年の9th『ミュージック・オブ・ザ・スフィアーズ』と同じくマックス・マーティンをプロデューサーに迎えつつ、前作の大きな特徴でもあったエレクトロ路線を受け継ぐ“feelslikeimfallinginlove”、リトル・シムズらのラップが冴える“WE PRAY”から、さらには“JUPiTER”や“iAAM”をはじめオーガニックなバンドサウンドの響きを前面に出した楽曲まで、コールドプレイが培ってきた雄大な表現のレンジがフルに発揮された作品だ。特に、今作で印象的なのはそのバンドサウンドの質感だ。それこそ『パラシューツ』や『X&Y』の頃の物憂げな空気感を自らの音像から濾過し尽くし、スピリチュアルな高揚感と透徹したアンサンブルのスケール感でまったく新しい音の星座を描き出そうとする冒険精神とバイタリティが、今作の音には満ちあふれている。

熾烈なまでに荘厳な美しさを帯びた音世界の最後に、故マヤ・アンジェロウが歌うゴスペル“God Put a Rainbow In the Cloud”をフィーチャーした“🌈”。《痛みの海に立っていた/雨よ降れ》というサビのフレーズを、自由闊達なリズムと多幸感の結晶の如きメロディで天空高く解き放ってみせる“iAAM”。そして、もはや歌や演奏というより波動そのもののようなサウンドに乗せて《世界はひとつ/ただひとつ》と繰り返す“ONE WORLD”——。世界各国で賛否両論を巻き起こしている今作はそのまま、コールドプレイがロックやポップミュージックという枠組みすらも解体して、音楽を通して「その先」の絶景を目指すための重要な一歩のようにも思えてくる。
すでに「コールドプレイとしてのアルバムは12枚しか作らない」と公言しているクリス・マーティン。残すところあと2作品で、彼らはいかなる高みへと進化を遂げるのか。その動向からますます目が離せない。(高橋智樹)



コールドプレイの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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