TEN HUNDRED MILES TOUR 2015 @ Zepp DiverCity

音楽メディアALTERNATIVE PRESS JAPANと、TOKYO FMのプログラム「TOKYO LOUD」による企画ジョイント・ツアー『TEN HUNDRED MILES TOUR 2015』。日本からONE OK ROCK、米フロリダからイエローカード、豪シドニーからトゥナイト・アライヴという3か国の人気バンドが名古屋、大阪、東京の計4公演を巡り、東京2公演にはLAのゴースト・タウンも参加。更に、それぞれの公演には異なる日本勢バンド(名古屋にMAKE MY DAY、大阪にMELLOWSHIP、東京初日にCOUNTLOST、東京2日目にはNoisyCell)もオープニング・アクトとしてラインナップに加わるという、豪華イヴェントである。Zepp DiverCityでの2デイズ、初日の模様をレポートしたい。

ウィークデーの18時前という早い時間にもかかわらず、みっちりと詰めかけたオーディエンスを前にして「どこの国のやつだろうが、音楽の前では関係ないと思うんだよね。今日はみんなで、それを証明しようぜ!」と、『TEN HUNDRED MILES TOUR 2015』の趣旨を引き受けるように告げていたのはCOUNTLOSTのtakuto maeda(Vo)。何より彼らは、メンバーそれぞれが異なる国で育ち、結成から11年目を数えるというバンドである。高らかに伸びる歌声を爆音が後押ししつつ、最終ナンバー“CALLING”に至るまで、がっつりとフロアを温める役割を担ってくれた。

続いてステージに立ったのは、『TEN HUNDRED MILES TOUR 2015』初登場となるゴースト・タウン。フュエルド・バイ・ラーメンの急先鋒として活躍している若手バンドだ。ゴーストことケヴィン(Vo)、モンスターことアリックス(G/Vo)、エヴァン(Electronics)、マニー(Dr)というユニークな編成で、重厚かつシンフォニックなトラックと凄腕ドラム・プレイが怪物的な躍動感をもたらし、ゴーストとモンスターが鬼気迫るヴォルテージのスイッチング・ヴォーカルで煽り立てる。プログレハウス~ダブステップ風の扇動的なプログラミングも用いてはいるが、紛れも無いロックのアンサンブルとして届けられるさまが素晴らしい。ハイブリッド・ロックの現在地をズバリと提示してみせるパフォーマンスであった。

紅一点のジェナ(Vo)嬢擁するオーストラリアの5ピース=トゥナイト・アライヴは、正攻法のハード/モダン・ロックが清々しい手応え。オーディエンスから目を逸らさずに全身で煽り立て、ハスキーな美声でグイグイと楽曲をリードしてゆくジェナの佇まいは、ジョーン・ジェットやグウェン・ステファニー、エヴァネッセンスのエイミーを想起させるほどのロック・スター性に満ちている。人物としての強烈な個性が、バンド・サウンドを王道ど真ん中のロックへと導いている印象だ。くっきりと伝わる英語の歌詞に負けず劣らず、「トベトベトベーッ!!」と流暢に連発する日本語のサーヴィスも最高だ。ダイナミックに求心力を発揮する美曲“The Other Side”を『TEN HUNDRED MILES TOUR 2015』に捧げ、盛大なコール&レスポンスを巻き起こして「パーフェクト!」と“Listening”~“Lonely Girl”で締め括る、堂々のステージであった。彼らは、2月末から3月頭まで本国オーストラリアで開催されるSoundwave Festival 2015にも出演予定。

さて、トリ前のスロットにはイエローカードが登場。この出演順は、日本のロック・ファンとして嬉しい反面、正直言って驚かされた。昨年には活動再開後3作目(通算9作目)となるアルバム『Lift A Sail』をリリースした彼らだが、単にドラマー交代といった理由だけでなく、今のイエローカードは興味深い過渡期に差し掛かっている気がする。先にショーン(Vn)ひとりが登場して厳かな“Convocation”を奏で、そこに他のメンバーも登場してすこぶるヘヴィな音像の“Transmission Home”を放つという新作モードのオープニングに触れたとき、やはりイエローカードの変化が強く感じられた。パンク~エモコアのスタイルを越えて、バンドの感情表現を抜本的に刷新しようとする意気込みが窺えるのだ。

もちろん、美しくロマンチックな“Only One”など往年の名曲も披露されて盛り上がるのだが、後半はまたもや新作曲を連発。今になって思えば、あの一連のアコースティック・プロジェクトも、バンドの体質を刷新する試みだったのかも知れない。今後のイエローカードは、更に面白いものを見せてくれそうだ。「声も上げないで帰ることは許さないぞ!」と煽りつつ、共演バンドに最大限のリスペクトを伝えるライアン(Vo)のひたむきな姿勢も素晴らしかった。大胆に変態し、今にも羽化しようとするバンドを目の当たりにするような、とても貴重なライヴ体験であった。

というわけで、堂々トリを担うのはONE OK ROCKである。『TEN HUNDRED MILES TOUR 2015』は、彼らにとって今年のライヴ始め。重要な役回りであることも手伝ってか、気合が漲っていた。初っ端の“アンサイズニア”で、TAKA(Vo)は「声出せトーキョー!!」と誘っておいて、その強靭な喉を震わせるスクリームがオーディエンスの声を押し返してしまう。異空間グルーヴを練り上げる“Deeper Deeper”を経て「終わった後に、今日が最高だったと僕らに思わせてください!」と強く要求すると、静と動、抑と揚がどこまでも有機的に展開するサウンドで、“Mighty Long Fall”や“Decision”も披露。オーディエンスの歌声も引っ括めて、場内に響く音がひとつの巨大な生命体のようにのたうつのだ。

「世界中のバンドがこうして東京に集まるってことは、簡単なようで簡単じゃないことだからさ。それもこれも、皆さんのお陰です」と、世界を舞台に戦うアーティストとして言葉を投げ掛け、この日公開された“Cry out”のMVについて「今までのONE OK ROCKとはちょっと違うけど、たくさん聴いてやってください」と冒険意欲を露にする。この後に披露されたのは、その“Cry out”ではなく、来るニュー・アルバム『35xxxv』の別の収録曲“Stuck in the middle”だ。何かを手に入れ、それでも新しい焦燥感に掻き立てられながら足掻くような、ライヴ映えする爆走ナンバーである。この曲が終盤の盛り上がりに着火する手応えが素晴らしかった。アンコールに応えると、TAKAは「見てこれ。あなた達の激しい愛の証です(笑)」と裂けた衣装を指し示し、“完全感覚Dreamer”でフィナーレへと向かう。それぞれ短い持ち時間ではあったけれども、世界の多様なロックの熱狂が凝縮された、素晴らしい企画ライヴであった。(小池宏和)
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