【インタビュー】ヨルシカ、その表現者としての炎の正体──未知の「音楽×物語」体験へと誘う衝撃作『二人称』にn-bunaが込めたものとは?

【インタビュー】ヨルシカ、その表現者としての炎の正体──未知の「音楽×物語」体験へと誘う衝撃作『二人称』にn-bunaが込めたものとは?

【インタビュー】ヨルシカ、その表現者としての炎の正体──未知の「音楽×物語」体験へと誘う衝撃作『二人称』にn-bunaが込めたものとは?

大人になった自分が、本来、子どもの頃にかけてほしかった言葉をかけているシーンもある

──実際にそれを書き始めて、どんなことを感じましたか?ある程度、最初に予想はついたんですけど。こうやって詩を書く少年と、それを添削する先生っていう構図を作ると、必然的に過去の自分との自己対話みたいになるなって。僕が書いたものを見て、そこに何か批評的な視点を与えるということは、自己対話的になることは確実だったので。少年は過去の自分で、その過去の自分と今の大人になった自分を対話させる構図を作ろうと思いましたね。──その自己対話によって、言ってみれば自分が掘り下げられる作業をしながら、各楽曲を作っていったわけですか?そうですね。いつものアルバムでも、そのコンセプトにおける主人公がいて、その主人公が書いた詩と音楽っていう形になるんですが、今回もそうなんですよね。少年が書いた詩に付随する音楽ということなので。それがより自分ごとに近い形になったということですね。少年が書いた詩ではありますけど、それがいつもよりさらに自分に近い形になった実感があります。──確かに、実際にn-bunaくんがどういうこと考えて、詞とか曲を作っているのかも、読みながら感じられますよね。創作論の話にそのまま突っ込んじゃってますからね。特に10代や音楽をはじめた頃の自分が何を考えていたのかが、結構そのまま、直接的に投影されている瞬間もあります。物語として面白いものになるように作ってはいますけど、自分が投影される瞬間は必ずあるから。そこも読んでて面白いし、不思議だなと思います。──少年に自分が投影されていると思うんですけど、やっぱり先生にも投影されていますよね。そうそう、大人になった今の自分なので。あの頃は自分ですべてを解決するしかなかったわけなんですけど、その音楽をはじめたばかりの自分、筆の取り方を知らない自分を導いてあげたい気持ちというか。大人になった自分が、本来、子どもの頃にかけてほしかった言葉をかけているシーンもあるので。──自分でやってることではありますけど、そこが自分への救いにもなってるんでしょうか。そうですね。救いを与えようとしたんですね。ネタバレを避けて言うと、これは引用癖の話なので、引用癖のある少年、何か人の言葉を借りることでしか自分を表現できない少年が、人の言葉を借りて引用するってことは、ペンの一個でしかない──それは、目的ではなく手段にすぎないということをちゃんとわかるまでの話になるわけですね。だから前半の楽曲が文学からの引用で埋め尽くされている。それをわからなかった頃の自分が、他人から言葉を借りることで自分を表現しようとしているから、そういう楽曲が前半に集中していて。後半に行けば行くほど、それが薄れていく構造で作りました。
【インタビュー】ヨルシカ、その表現者としての炎の正体──未知の「音楽×物語」体験へと誘う衝撃作『二人称』にn-bunaが込めたものとは?

生楽器への理解も深まったタイミングでこういうものを出せたのは、幸せなことだなと思います

──元々n-bunaくんは表現のひとつとして引用をすると思うんですけど、特にこのアルバムの前半は意図的な引用がたくさん入っているんですね。引用自体を目的にしてはいけないんですけどね。それ自体を目的にするのではなく、何か表現をしたいものを描くために適切な言葉を見つけてくるっていう。それって単語単位でいえば人間の発話の在り方とほぼ同じなんですよね。他人からの借用の繰り返しの歴史で堆積してきた土壌が僕たちの言葉、人類言語なわけで。それをもっと大きな尺度で、文章っていう単位で見ると、わかりやすく引用という言葉が与えられる。それを単語単位で引用するか、文章単位で引用するかは様々で。でも、これを引用したいという目的をもって行うのではなく、何か自分の心を表現したいから他人の言葉を借りるっていう。その順番が本来大事だったはずなんですよね。そこがごっちゃになっちゃっている人がたくさんいると思うんですけど。僕にとって大事な部分はその順番だということを、ものを作るようになって初めて気づきました。それがこの小説とアルバムの根幹にありますね。だからタイアップ曲を作るにあたっても、この時期の少年の曲ということで、他人とか文章とか環境からの影響を受けて書いた曲しか入れられないという。タイアップ先の方にも、“晴る”でも“忘れてください”でも、「この曲は、次に文通のアルバムを出すので、その中に入る曲になるから、そっちの軸でも成立するようにします。でも、こちらとの共通項を作りながら、そこが美しく輝く曲にしたいんです」っていう話を打ち合わせでして。──あ、そこもちゃんと伝えるんですね。事前に「こういうことをするんですけど、大丈夫ですか?」って確認する作業があったりしましたね。──それは、すごく誠実ですね。僕の中では、タイアップの美しい瞬間って、本来隣り合っていないはずのふたつの物語が合わさった時に、ひと単語やひとフレーズや、何かしらの偶然が重なっている部分がすごく必然のように見えるところで。そこが美しく輝いている作品っていうのが僕はすごく好きで。そういうものをタイアップでも作りたいんですね。だから、いつも「そういうものを作っていいですか」って話しながら相談したりしていますね。自分たちの物語の作品を作るけど、他人の作品に関わる以上、他人の作品を破壊するものにはしたくないから。そこに対しては気をつけなければいけないことがたくさんあるし、誠実であろうと努めるようにはしていますね。──大変じゃないんですか? この順番でのアルバム作りは。いやあ、でも、作りたいものですからね。それで苦痛に思ったことは、一度もないですね。僕は、アルバムを作るうえで必然性がない要素は排除したいんです。必然性の積み重ねによってアルバムが美しくなるので。絶対にこのアルバムの中に入っていなければいけない曲だって思わせないといけないんですよね。──n-bunaくんの中では、音楽性と言葉のライブラリーみたいなものが膨大にあって。その物語を描くために、一部の引き出しが開いて使われるという感じなの?そうですね。その引き出しの使われ方は、僕も技術が上がってきて、好きに出せるようになってきてますし。あとは、ファンというか観客の人への信頼が徐々にできているから。たぶんファンの人から僕たちへの信頼もあると思うんですけど「あ、こういうものを入れても全然受け入れてもらえるんだ」ってラインが今回のアルバムでは大きく引き上がったので。──そんな感じがしました。だからここまでやっても大丈夫なんだっていうのを出した気がしますね。逆に、最初の頃はそれが手探りだったのもあったから、恐る恐る「ちょっと、ここら辺のラインはどうですか?」というふうにやってたんですけど。それとは別に『だから僕は音楽を辞めた』とか『エルマ』は、バンドサウンドを基調として、このコード進行を多用して、この楽器の音使いで、っていうのをかっちり決めたアルバムだったので、あの頃の曲は、このアルバムにしかないサウンドになっていると思いますし、『盗作』も同じですね。今回のアルバムも、このアルバムにしかないサウンドになってると思います。今回のアルバムのようなサウンドも、やろうと思えばそれっぽいものは昔でもできたと思うけど、でも、この精度ではたぶんできてないと思います。経験を積んで、15年も音楽と向き合ってきて、それでようやくできるものも絶対できてきているし。実際このヨルシカっていうものはほぼ生楽器だけなんで、そこへの理解も深まったタイミングでこういうものを出せたのは、幸せなことだなと思いますね。
【インタビュー】ヨルシカ、その表現者としての炎の正体──未知の「音楽×物語」体験へと誘う衝撃作『二人称』にn-bunaが込めたものとは?
ヨルシカのインタビュー全文は発売『ROCKIN'ON JAPAN』2026年4月号に掲載!

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