【インタビュー】これが生まれ変わったRADWIMPS! 入魂の曲“賜物”“命題”を経て20周年の節目に爆誕した超痛快ロックアルバム『あにゅー』のすべて

【インタビュー】これが生まれ変わったRADWIMPS! 入魂の曲“賜物”“命題”を経て20周年の節目に爆誕した超痛快ロックアルバム『あにゅー』のすべて
RADWIMPSとは、どんなバンドか? 一言で言うなら、誰も聴いたことのない、とんでもない音楽を鳴らしてみせるロックバンド。メジャーデビュー20周年を迎えるこの2025年、そのことを圧倒的に証明するニューアルバムを彼らは完成させた。タイトルは『あにゅー』。RADWIMPSを好きな人なら、わかるだろ? これは、その期待通りのヤバいアルバムだ。しかも、彼らがこれまでも何度も起こしてきたことではあるが、ここからロックに人生を変えられてしまう奴らが、またもやドバドバ増えてしまうポップなロックアルバムだ。“賜物”と“命題”という今年リリースされた強力なキラーチューンを軸にしながら、約半年の短期間で残りの曲を作り、一気にレコーディングされた、その勢いと生々しさと楽しさが渦を巻いてRADWIMPS愛が爆発しているアルバム。本当のロックアルバムってこんなにポップなんだと思い知らされる痛快作だ。20周年という大きな節目を迎えて、どのようにRADWIMPSが『あにゅー』でロックバンドとして生まれ変わったのか、野田洋次郎と武田祐介がふたりで、その全裏側を語り尽くしてくれた。

インタビュー=古河晋 撮影=岩渕一輝(TRON)


クラスのはじっこで、真ん中の奴らに気付かれないように悪巧みしながら音楽作るバンドとしての感覚をもう一回、自覚的に鳴らそうっていうアルバムだった(野田)

──『あにゅー』は、すごい作品です。

野田洋次郎(Vo・G・Pf) ありがとうございます。

──よく第二のデビューアルバムみたいな表現があるけど、そのレベルじゃないというか、RADWIMPSっていう存在自体が生まれ変わった、再誕生した感触があります。まずできあがっての手ごたえを武田くんから。

武田祐介(B) 言っていただいたように、かなり生まれ変わったなと自分でも感じていて。RADWIMPSというロックバンドとして長いあいだ活動させてもらって、20周年という節目のタイミングで、こういうフィジカルな音を鳴らす喜びをふんだんに詰め込めたロックバンド然としたものを発表できるのは意味があるし、嬉しいことだと思います。

──野田くん、どうですか?

野田 昨日の夜までマスタリングのやり取りをしてたんですけど、こんなにいいアルバムになると思ってなかったというか。すごい達成感があって。まだ冷静には聴けていないんですけど、めちゃくちゃ今も聴いてて。こういう通しで聴いてアルバムらしいアルバムを作りたかったので。タイアップ曲で半分以上埋まっていくアルバムが、世の中的にも僕らとしても多かったと思うんです。だから今回は、去年までの既発曲を入れることはやめて。

──かなり大胆に舵を切りましたね。

野田 そうですね。基本的には今年1年以内に録音したものを全部詰め込もうっていう。そういう意味でもロックバンドらしいアルバムになったと思います。『君の名は。』のムーブメントもあって、 2016〜7年あたりというのは、僕らがそれまでの10年間でやってきたロックバンドRADWIMPSとしてのリリースの仕方とだいぶ変わって。だから20年のうちの後半の10年で手に入れたものと失ったものみたいなものがあって。ずっとはじっこで音楽をやっていたつもりだったけど、期せずして世の中の真ん中に放り出された感じもあったし。それが喜びでもあったんだけど、そこで俺らのスタンスは変わらないなあと思いながら、やっぱり世の中の真ん中に求められるようなバンドじゃないよなって感じもあって。クラスのはじっこで、真ん中の奴らに気づかれないように悪巧みしながら面白い音楽作る、みたいなバンドだったし。その感覚をもう一回、自覚的に鳴らそうってアルバムだった気もします。俺らが音楽をはじめたときは、やっぱりひねくれ者の音楽だったし。「なんでこんなタイトルなの?」「なんでこんな歌詞書くの?」って言われ続けて、ライブハウスの店長にも怒られて。「もっと素直な曲を作れよ」って言われたり。でも、そのときの音楽を鳴らす喜びってなんだったっけ?っていう入り口にもう一回立とうっていう。だからフィジカルに、体で音を鳴らすんだっていう意識をしたし。それは達成できた気がします。

武田 このアルバムの制作に入る前に、洋次郎から「せーので全員で音を鳴らしながら制作したい」っていう話がまずあって。スタジオも、常にバンドの音が鳴らせる状態で、そういうモードをキープしながら節目節目で「これで正解だよね」って確認しながら制作していったので。そこで、ちゃんと鳴らす喜びを交換しながら進めていけたなあと思います。

【インタビュー】これが生まれ変わったRADWIMPS! 入魂の曲“賜物”“命題”を経て20周年の節目に爆誕した超痛快ロックアルバム『あにゅー』のすべて

想像の範疇にある音楽を作ってはいけないっていう使命感があって。“賜物”だけでアルバム2枚分ぐらいの労力を注ぎ込んだ気がします(野田)

──この『あにゅー』を紐解いていくうえで、まず先行してた“賜物”“命題”の2曲がとても重要だと思ってるんです。“賜物”は完全に『あんぱん』という朝ドラから生まれてる?

野田 すべてそこからです。去年の結構早い段階でオファーはいただいていて。ここですごくわかりやすくバラードみたいなのを表現するのか、僕たちなりのロックバンドとしての音楽でなおかつ何千万人が毎朝観る朝ドラっていうフォーマットに挑戦するのかっていうのは、ひとつ大きな分かれ道で。バラード曲は、実は早い段階でできていて。ものすごくしっくりくるだろうし、多くの人が喜ぶだろうなってものがひとつ完成して。

──ああ、そうなんだ。いわゆる朝ドラっぽい曲があったと。

野田 まあ、間違いなく受け入れられるだろうし、わかりやすく言えば売れるだろうっていう。僕たちも今まで期待に応えながらいろんな音楽を作って、その中でも裏切りや新しい挑戦は必ず入れるようにしながら音楽を作って。でも、どうしても俺は、ここで挑戦しないと意味がないというか、想像の範疇にある音楽を作ってはいけないっていう使命感があって。だから“賜物”だけでアルバム2枚分ぐらいの労力を注ぎ込んだ気がします。とにかく自分の音楽のHPを突き詰めたいと思ったし、上げようと思ったし。バンドを新しくはじめるタイミングだったからこそ、とにかく新しい音楽をここでやるんだって。だからしつこいほど一曲と向き合ったなって。なおかつお年寄りさえも踊らせたいと思ったし。圧倒的な朝ドラっていう枠組みの中で新しい曲を作りたかった。だから自分にとっての次のデビュー曲って感覚でやり切った。

武田 やり切ったね。

野田 「これで終わりだね」って何十回言ったかわからない(笑)。ほんとスタッフは呆れてたと思いますけど。でもやり切れてよかった。やっぱり音楽って、そのとき鳴らすドキュメント的な側面と、アートを作る側面がある気がして。そのあいだで常に揺れてる気がしてて。やっぱりまだ見たことのないアートを作るんだってなったときは、命を削りながら作るべきだなって。最初の10年ぐらいは、アートとして完全無欠なものを作るぞって思いながら作ってて。だけど、それだけじゃないものがあるなってことで。だけどここでは、多くの人が耳にするポピュラリティがあるんだけど、なおかつ俺はアートを作りたかった。で、アートとしてものすごいものを作るんだったら、ほんとにちゃんと自分を削りながら辿り着けるものが絶対あるって、それを目指そうと感じながらやっていました。

武田 そうね。バンドの音だけじゃなくって、これだけストリングスやコーラス、ちゃんと血の通った音で積み上がっているのは、『あにゅー』を作るにあたって起点になったと思う。


──“命題”は、そんな大変な“賜物”の作業をしながら同時期に作っていたんですか?

野田 こっちのほうが、ちょっとあとではあるけど、歌詞とかは同時進行で書きながらやってたかな。

──それが信じられない(笑)。“命題”もとんでもない曲だと思うんだけど。

野田 ありがとうございます。これは原形みたいなものは、去年のアジアツアーで、毎日ホテルにこもっているときに形を作りはじめていて。だから、毎日お客さん、何千人っていうお客さんを地球の裏側で、南米ツアーがあって、アジアツアーがあって、ギターをかき鳴らす感覚みたいなのが、フィジカルとしても鳴らしたい音像みたいなイメージがあって。あと昔の俺ってとにかく歌詞を詰め込んでたなって(笑)。自分の中で、違う書き方も覚えて、自分なりの変遷がありながらも、この曲はかき鳴らす衝動と共に言い切ってやるっていう覚悟を最初から持ってて。デモでもう送ったりしてたよね。なんか苛立ちがずっとあったし、それを解放したいんだろうなっていう。こういう歌詞を書こうっていうつもりは別になかったんですけど、ド頭の歌詞が出てきたときに、こういうものを書き切ってみたい衝動に駆られたんだろうなと思います。それが『news zero』に採用してもらえたのも、“賜物”とは別軸でありがたかった。具体的に「この言葉は流せないですね」とかもあったんですけど「ちゃんと希望に向かって終わる曲にします」っていう話はしたうえで理解してもらったり。もちろん公共の電波にのる言葉には責任が必要だけど、リスクみたいなことだけで言葉を省いていってしまったら凡庸でつまらない歌詞になってしまう怖さもあったので。そこは、ていねいに会話をしながらやらせてもらいました。

──なんでみんなに音楽が必要なのか、ライブが必要なのか、ロックが必要なのか、みたいなところがめちゃくちゃ凝縮されている曲な感じがします。

野田 ああー、嬉しいっす。

──それはライブで今、実感してるんじゃない?

野田 ちょっと語弊あるかもしれないけど、めちゃくちゃ楽しいよね。

武田 楽しいね。ちゃんと自分が演奏して鳴らせる喜びっていうか。毎回息切れながらですけど、5分間全力疾走。それが久々の感覚でもあるし。

野田 そうだね。お客さんからも「ラッド帰ってきた感」みたいな言い方もされるし。だけど帰ってきただけじゃないっていう。できた瞬間、この曲からアルバムがスタートするのがいいなっていうのが見えました。だから、この“賜物”と“命題”が入るアルバムというのは、まず安心感がありますよね。スタメンにこいつらがいてくれるんだったら、っていう安心感がすごい。

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次のページスタメンに“命題”“賜物”がいてくれるから、生身のRADWIMPSがちゃんと刺さってくる(武田)
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