【インタビュー】go!go!vanillas、最新にして最高のバニラズ・アルバムが完成! 進化し続ける4人が作り上げた新たな王道作『Lab.』を語る

【インタビュー】go!go!vanillas、最新にして最高のバニラズ・アルバムが完成! 進化し続ける4人が作り上げた新たな王道作『Lab.』を語る

みんな「まとまってるね」って言ってくれるじゃないですか。でも俺は、いい意味でまとまってないと思うんですよ。ひとつのアルバムになってみるとまとまっているけど、全部リード曲でいけるっていう(セイヤ)

──あとこのアルバムを聴いてすごく思ったのは、ロックバンドとしてのバニラズがすごくストレートに出ているっていうことだったんですよ。ただ、ロック感は強いけどそれは当然以前とは違うものでもあって。4つの個性がぶつかり合って火花を散らすことがロックのエネルギーだっていうのはもちろんあるんだけど、このアルバムにおいては、それぞれが自分の場所を正確に見定めて、そこで必要とされることをやるっていうのが、全部の曲で行われていて。そのバランスがすごく美しいし、ある意味でバンド的だなと思ったんですよね。

 それは……僕が基本的にベーシックなものを作ってみんなに提案するんですけど、俯瞰で見ているときのそれぞれのプレイというか、これを見たいというのは明確にあったかもしれないですね。やっぱり一人ひとり個性もあるし、「この曲ではこうしたい」みたいなところが衝突する瞬間もあると思うんです。でもこのアルバムは、僕が曲を作っていく時点でそれをイメージして、精査された状態のところから作っていったから。たとえば今回はベースがすごい立ってる曲が多かったりするんですけど、今までは正直あんまり考えてなかったというか、ベースが立っているはずなんだけどギターが食っちゃってる、とかも全然あったんです。でもそういうのもかなり精査をした。

──うん。

 ドラムもそうで。どこで一撃必殺を出すかっていうのは考えましたね。基本的なビートは僕が「こうやってほしいんだけど」っていうのを中心にやってもらったんですけど、フィルはわりとセイヤにお任せして、レコーディングスタジオで何個かパターンを録ってっていう。そうやってそれぞれの得意なところを見せつつ、ベースとかはさらにチャレンジャーな気持ちで。このバンドはギターがフィーチャーされるバンドだったから、よりベース、ドラムがかっこいい曲を書くっていう意識はあった感じがしますね。

──ドラムのフィルはお任せでって言っても、好き勝手に叩くわけではないじゃないですか。そこで曲を理解する解像度も全員高まっている感じがする。

セイヤ なんかみんな「まとまってるね」って言ってくれるじゃないですか。でも俺は、いい意味でまとまってないと思うんですよ。でもそこがめっちゃすごくて。普通、曲作るにしてもクセとか出てくると思うんですけど、それを全然感じないっていうか。

──そうそう。それぞれの個性は出ているのに、でもまとまっているっていう。

セイヤ その曲作るときのモードってあると思うんですよ。それはなんなのかっていうのはめっちゃ考えましたね。その曲のルーツというのもあるだろうし。だからひとつのアルバムになってみるとまとまっているんですけど、全部リード曲でいけるなっていう。レーベルからリード曲どれにするかって質問されて「全部いけますけど、みんながこれって言うならこれにしようか」みたいな感じだったので。


──そんなバンド、なかなかいないよ? 「俺たちの王道ってこれだよね」っていうのが普通はあるけど、バニラズはそれがどんどんなくなってきたよね。だから聴く人によっては、“Super Star Child”がバニラズの王道だよねって人もいるだろうし、“HIBITANTAN”が王道だって言う人もいるだろうし。

 うん。でもそれって実は壮大な話で。2ndアルバムで『Kameleon Lights』っていうタイトルをつけましたけど、カメレオンバンドになるためには時間が必要なんですよ。弾数がないとダメなんで。だからそれを2ndアルバムのときに掲げて、その次のアルバムではまた違うことやって、っていうのがここまで重なってくると……僕はね、この前、オーラル(THE ORAL CIGARETTES)のイベント(「PARASITE DEJAVU 2024」)に出たときに思ったんですよ。これまでいろんなものを作ってこれたからこそ、今僕ら、どのイベントに出てもそこにマッチするものを提示できるなって。すごい時間をかけて育てたものがやっと真価を発揮しているというのはライブで如実にわかる。やっとそれぐらいの説得力が生まれたというか、ちゃんと日替わりで違う料理を出す店にできたっていう(笑)。その代名詞となるアルバムなんじゃないかなあって思いますね。

俺は本質的な部分をしっかり捉えつつやれてるかな、みたいな不安は正直あった。でも “Moonshine”とかは、ちゃんと「1」に対して向き合っているものを書けたから、「あ、もとの自分はちゃんといるんだなあ」って(牧)

──“Super Star Child”とか“Moonshine”も、今だからこそ、これだけストレートにやれたのかなって聴きながら思ったんですよね。

 そうですね。まさに実験というか、イギリスに行って心も大きくなって、本当に「バニラズで見たことないものを作りまくったろ」みたいな感じで作っていってたんですよ。でもそうするとどうしても──外食ばっかりしていると「やっぱりおかんのカレー食いてえ」って思うじゃないですか。そういう気持ちになったんですよね。ずっと引っ越ししてるみたいな感覚だったんで、1回実家に帰りたいみたいな感情になったときに……“Super Star Child”ができた(笑)。

柳沢 これはカレーなんだ(笑)。

セイヤ その実家感はめっちゃわかります。

長谷川 “Super Star Child”も“Moonshine”も基本的に牧がデモの段階で弾いたものを形にしていった感じなんで、プリティ色みたいなのはそんなにないはずなのに、なぜかめちゃめちゃ匂いがするんです。それはなぜなんだろうなと今でも思っていて。

──それこそ実家だからだよね、きっと。この2曲は、歌詞もリスナーとかファンへのメッセージにも取れるものになっていて。それもファンからするとすごく嬉しいと思う。

 そうですね。でもそれで言うと、ちょっと不安になったんですよ。

──なんで?

 俺はどこに向けて歌ってるんだ?って。肌で感じる社会の不穏さとか、そういう大きい目線で物事を捉えながらも、最終的には俺らの生活っていうすごいミニマムなところにちゃんと落とし込むっていうことを一生懸命やっていたんですけど、扱うものが大きいぶん、手応えみたいなものは……もっとマンツーマンのほうが書きやすいんですよね。「1」に向き合うほうが。恋愛の曲が書きやすいのはそういうことで、対象が大きくなっちゃうとどこにフォーカスするかが難しくなっちゃうんです。たとえば“平安”とかも、わりと言いたいことを言い切ってはいるけど、ライブでお客さんがいち個人として観ているということを考えたときに、なかなか直で熱量を伝えられている感覚にはなれないっていうのがあって。それが続いてた部分もあったので、俺は「おもろいこと言ってやろう」みたいな方向に行ってんじゃないか、っていう。本質的な部分をしっかり捉えつつやれてるかな、みたいな不安は正直あったんです。

──なるほど。確かに大きなテーマや感覚の話になると、実感からは離れていくものだからね。

 でも今回の後半に録った、それこそ“Moonshine”とかは、作っているときの安心感で言うと、ちゃんと「1」に対して向き合っているものを書けた。そういう温度を感じられるものを改めて大事に思いながら歌詞が書けたから、「あ、もとの自分はちゃんといるんだなあ」って。だったら、もっと大きいものを書いたときの自分も、きっと正しかったんだなって感じられました。

──今回、その答え合わせができたのがバンドの進化だとも思うし、到達した部分だよね。素晴らしいと思います。

全員 ありがとうございます!

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