【インタビュー】フジファブリック、12thアルバム『PORTRAIT』完成! 常に「ポップ」と「挑戦」を求め続けた20年と「今」を語る

【インタビュー】フジファブリック、12thアルバム『PORTRAIT』完成! 常に「ポップ」と「挑戦」を求め続けた20年と「今」を語る
フジファブリックが通算12作目のオリジナルアルバムとなる『PORTRAIT』をリリースした。配信シングル“ミラクルレボリューション No.9”の妖艶なディスコポップ感、“瞳のランデヴー”でのフレデリックとの7人一丸の高揚感、さらにはアルバム冒頭の“KARAKURI”のプログレッシブロックばりの変幻自在な曲展開……。常に多彩で実験的なサウンドを響かせながら、常に「ポップミュージックであること」をバンドの核心として追求し続けてきたフジファブリックの唯一無二の在り方は同時に、2024年という時代を生きるロックバンドとしての揺るぎないアイデンティティに裏打ちされたものだ。
『PORTRAIT』では「原点回帰」をテーマとして制作に向き合っていたというフジファブリック。デビュー20周年のアニバーサリーイヤーを迎える今年、彼らはバンドの足跡も「今」も、しなやかに「その先」へ繋げようとしている――ということを、山内総一郎/加藤慎一/金澤ダイスケの以下の言葉からも明確に読み取っていただけることと思う。

インタビュー=高橋智樹 撮影=TAKAKI_KUMADA


「今までと一緒のテイストのアルバムにしてはダメだ」っていう自分たちの縛りがある。それが自分たちの原点なんじゃないかなって(山内)

──音楽の自由度そのもののアルバムですよね。冒頭からプログレ感満載の“KARAKURI”で、「そういえばフジファブリックは2008年に四人囃子(日本のプログレッシブロックレジェンド/1971年結成)と対バンしてたバンドだなあ」というのを思い出したり──。

山内総一郎(Vo・G) 懐かしいですね。やりましたね、リキッドルームで。

──そこから“ミラクルレボリューション No.9”へと続く音楽性の飛距離に驚いたり──。

山内 そうですね(笑)。なんか、時代が変わりますよね、そこで。

──そういうものも含めて、音楽の自由度そのもののアルバムだなあと思いました。ポップミュージックのルールと枠組みにのっとって遊んでいくのではなくて、ポップミュージックの枠組みそのものを自分たちで作って楽しんでいくバンドであるというか。

加藤慎一(B) 本当に「やりたいことをやったんじゃない?」っていう印象はありますね。曲の並び的にもすごく緩急があって。

金澤ダイスケ(Key) 非常に振り幅が大きいので、アルバム全体の10曲でバランスが取れてるのか取れてないのかわからない感じはありますけど(笑)。でも、こうしてまとまると、バランス取れて聴こえるものですね。

山内 この曲順が決まって、マスタリングまで終わった時に、加藤さんも言ってた「やりたいことをやった」っていう実感がすごくありましたし。何より……本当に手前味噌ですけど、このバンドはすごいバンドだなあって自分でも思っていて。20年やってきたこともそうですけど、いろんな曲をリリースしてきた中で、自分たちがオリジナリティを感じて出せるものを並べられたな、っていう手応えはあります。ライブでまだやっていない曲がほとんどですけど、こういう曲たちを待ってくれていたファンはいらっしゃるんじゃないかなと思っていましたし。ROCK IN JAPANとかで、若い下の世代の人たちのステージを観ていても、かっこいい人たちがいっぱいいて。同じステージで出演していても、違った空気感を持っているバンドであるっていうことを、僕らも証明したいところもあったので。だからこそ、この曲順もそうですし、この楽曲の作りにもなっている、っていうところはありますね。

──昨年“瞳のランデヴー”のタイミングで、『ROCKIN'ON JAPAN』誌上で山内さんとフレデリック・三原兄弟の鼎談を行わせていただいたんですけども。その時も三原兄弟は、下の世代にとってフジファブリックがどれだけ特別な存在か、っていうことを力説していたのが印象に残っています。

山内 褒められ慣れてないんで……後輩にめちゃめちゃアゲてもらって、申し訳ないなと思ってます(笑)。フレデリックのみなさんと一緒にやれたこともそうですけど、「フジフレンドパーク」っていう僕らのイベントでも、「フジファブリックに影響を受けました」ってステージで話してくださる対バンの方々がいらっしゃって。「いや、そんなそんな……」と思いつつも、20年やってこれたことの実感が、そういうところから湧いたりもしますね。

──今作『PORTRAIT』は「原点回帰」がテーマだそうですけども?

山内 20周年にリリースする特別なアルバムだっていう捉え方は、メンバーもチームも含めてみんなあって。そこで何をテーマにしよう?っていう話になった時に──やっぱりこのバンドの強み、持っているオリジナリティをいちばんに出さないといけないし。かといって、これが12枚目のアルバムになるんですけど、「今までと一緒のテイストのアルバムにしてはダメだ」っていう自分たちの縛りがあるというか、そういうふうにこれまでリリースしてきたので。1stアルバムから2ndアルバム、3rdアルバム……って、ジャンル的にもどんどん違う音楽をやってきたと思うんですけども。そういった意味で、今回もそうしないといけないっていう──無理矢理やっているわけではなくて、それが自分たちの原点なんじゃないかな、っていうことで作りました。タイトルは結構後半のほうに決まったんですけど。「原点」っていうのはやっぱり、アルバムというものに対する想いというか──今やサブスクリプションでも、曲順なんてあまり気にしてもらえないんじゃないかな?っていうところがあったとしても(笑)、それは受け手の方次第なので。自分たちは自分たちで、好きなものを作ろうと。「こう聴いたら楽しいよ」っていうことまでは提示しますけど、自由に聴いてくださいっていう。そういった意味で、アルバムというものに対しての捉え方として、「原点」である考え方ということですね。

【インタビュー】フジファブリック、12thアルバム『PORTRAIT』完成! 常に「ポップ」と「挑戦」を求め続けた20年と「今」を語る

“KARAKURI”では「何回も弾いて、飽きた先にあるフレーズを弾いてほしい」っていうリクエストがあったので。一回飽きましたね(笑)(加藤)

──セルフプロデュースの前々作『F』(2019年)もあり、ゲストボーカル曲や小林武史さんプロデュースの曲も収録した『I Love You』(2021年)もあり、「バンドの音楽をどう作るか」ということを、枠組み作りの段階から楽しんできた流れがあるわけですけども。今回の『PORTRAIT』は──なんのポートレートかは限定されていないですけど、ある意味「フジファブリックによる、フジファブリックの歩みのセルフポートレート」みたいな作品だなあと感じたんですが?

山内 おっしゃる通りで。アルバムのタイトルも、抽象性のあるタイトルのほうがいいなあと思って。そのテーマでしか聴けなくなるような楽曲じゃないというか。「自分たちがやってきたフジファブリックとはこういうものだ」って自信を持って出す一枚でもありますし。ただ、それが押しつけがましくもないし。肖像画として「フジファブリックとはこれだ」っていう。

──今回『PORTRAIT』を聴いて、改めて不思議なバンドだなあと思ったんですよ。“KARAKURI”みたいなプログレな曲をやっても、すべてポップに響いてくるっていう。さっき言った四人囃子との対バン、あれは四人囃子の方からお声掛けがあったそうですけども、四人囃子から見たらフジファブリックって不思議だったと思うんですよ。「なんでこんなねじれた曲もポップに聴こえるんだろう?」って。

山内 ああ……でも確かに、プレイアビリティをエゴイスティックに披露するような曲に聴こえるかもしれないですけど、僕らは誰もエゴイストじゃないっていうか(笑)。プログレって「弾きたいから弾いてる」っていうところがあると思うんですけど。でも、僕らのサウンドは、テクニカルな部分ももちろんあるんですけど、それは「どうポップに聴かせるか」、「どういちばん耳に残るフレーズをチョイスするか」が大事なので。その場の勢いでやる場面もありますけど、基本的には「ポップにする」、それがオリジナリティのある音楽になるって信じているところがあって。今回の“KARAKURI”だったら──速いボサノバの曲をガットギターで作っていて、「あ、これを単音にして、オルガンに置き換えてリフレインさせて、そこにブラジル的なコーラスが乗ったら面白いかな」って。自分は「こういうプレイを聴け!」っていうわけじゃなくて、組み合わせであったり、楽曲が持っている世界を伝わりやすくするために──だから、ポップっていうことなんですよね。そのために引っ掛かりを作りたい、っていうことなんです。そういうスケベ心、フックって言うんですかね? そういうものもありつつ、3人でサウンドを作っていく中で、アイデアを出しながら作っていく感じですね。

──“KARAKURI”のデモが上がってきた時、どう思いました?

金澤 単純に「すごいな」と思いましたね(笑)。「こうくるんだな」って。最近こういう曲聴かないよなあって。耳が新鮮でしたね(笑)。でも、山内くんが聴いてきたようなプログレみたいな──前から「こういう曲やりたい」って言っていたので、そういう意味でも原点な感じもするし。途中、本当にジャパニーズプログレみたいな響きもするし。すごく面白いなって思いましたね。

山内 コラージュ的に作ったわけではなくて。頭から最後まで、それこそ一筆書きみたいな感覚で作ったんですけど。それを「これじゃ聴いてる人は気持ち悪いよな」って……潜在的な恐れみたいなものをなるべく取るようにして、自分が心地好いタイム感でまずは作ろうって。その中で、僕はギターだったり歌ったり──鍵盤も少し弾きますけど──そういったものが得意なので、他の要素はものすごくふたりに要求したし。加藤さんだったら、「ここはオルガンが低音にいるから、ベースはルート(基音)を気にしないで、余計なことしてね」とか(笑)。

加藤 実際に「何回も弾いて、飽きた先にあるフレーズを弾いてほしい」っていうリクエストがあったので。一回飽きましたね(笑)。飽きるまでやって、それでできたものが収録されました。

山内 プロセス大事ね!(笑)。

加藤 でも昔、ずーっとスタジオに入ってセッションして作ったりしていた時って、まさにそういう感じだったので。久しぶりにそういう気持ちになれたんだな、っていうのもありましたね。

山内 古風ですけどね、やり方が(笑)。古風っていうか、バンドらしい作り方ですよね。何回も演奏するに堪えるフレーズを作るっていうか。今は作ろうと思えばパパパッと作れますけど、そことはまた違う時間のかけ方を通して、自分たちの汁が入ったらいいな、と思って注ぎこんだ感じですね。

次のページ心のどこかで「自分たちにしかできないだろ」っていう自信──それをロックと呼ぶのかはわからないけど、そういう魂を常に持ち続けて、人の心にお邪魔したい(山内)
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