今年結成から10年の節目を迎え、その音楽的な進化に多くのポップファンの注目が集まっているDa-iCE。ダンス&ボーカルグループとしての成熟期に突入し、昨年リリースした“CITRUS”が、「THE FIRST TAKE」への出演を機に大ヒット。その心揺さぶる歌声が多くの人の心を捉えた。ここ数年ではバンドサウンドやロックサウンドへのアプローチも顕著になり、その音楽性はさらなる広がりを見せている。そんな中、8月9日に最新曲“Kartell”がリリースされた。リーダーである工藤大輝(Performer)が手がけたこのダークなダンスファンクは、Da-iCEの歌+ダンスの表現力が、明らかにひとつの高みに到達したことを示す。ダンス&ボーカルグループの概念をアップデートし続ける彼らが、この現在地にたどりつくまでを振り返る。
インタビュー=杉浦美恵
ダンスボーカルって、旬なものを取り入れて歌う「媒体」というイメージ。でもDa-iCEはそうじゃなくて、音楽の「ジャンル」でありたい(工藤)
──近年のDa-iCEの音楽性として、バンドサウンドやロックへのアプローチが興味深くて、それとともにグループとして、より音楽を深く追究していきたいモードにあるように感じています。最近の活動を振り返ってみたいのですが、まず、昨年リリースした5thアルバム『FACE』での取り組みが、ひとつの転機になっているように思います。メンバーそれぞれがプロデュースした曲を1曲ずつ収録するという、あの試みはグループにどんなものをもたらしましたか?花村想太(Vo・Performer) 「メンバー5人(5面)にファンを加えた6面でDa-iCE」という意味が僕らのグループ名には込められているんですけど、「ひとりが1面を担う」という意味も込めて、ひとり1曲、好きな曲を作ってみようという取り組みでした。全員の曲が出揃うまで、他のメンバーの曲は一切聴かずに作っていくっていう作業は、お互いを信じる、メンバーを信じるっていうことでもあって、テーマ的に面白いなと思いました。(和田)颯の“Yawn”が最後にできたんですけど、あの曲も衝撃だったし、(岩岡)徹くんが歌詞を書いた曲もすごく面白いなって。
工藤 事前に曲調をばらけさせようみたいな話をした覚えはないんですけど、みんなの趣味が違うからこそ、いい感じにばらけていったんですよね。これがみんな同じ方向を向いて、同じアーティストの曲しか聴いていないグループだったら、同じような曲しか集まらなかったかもしれない。その面白さが明確になったアルバムだったなと思います。
──そこからグループ内の自作曲も増えていくし、そうしたいというモチベーションもさらに強くなっていったのかなと思いますが。
花村 そうですね。それ以降メンバーが関わってない曲というのは、たぶん内澤さん(androp・内澤崇仁)からの提供曲だけかな?
──ああ、“Love Song”。
花村 はい。あとは全部、『FACE』以降は何かしら誰かが携わっている曲なので。
──結成当初からそうありたいという想いはあったんですか?
大野雄大(Vo・Performer) 徐々にっていう感じだよね。
工藤 なんとなく、そうあるべきかなとは思っていましたけどね。バンドなら曲を自分たちで書くのは当たり前じゃないですか。でもダンスボーカルのグループってそうじゃないことが多いし。じゃあ僕らの音楽スタイルは?っていう話になってくると、引っかかっていたところではあるんですよね。ダンスボーカルって、ジャンルではなくて形態だと思うんで。旬なものを取り入れて歌っている「媒体」っていうイメージがあります。でもDa-iCEはそうじゃなくて、音楽としての「ジャンル」でありたい。今そういうタイミングに、いよいよなってきているのかなっていうのは感じています。
グループ内コンペ、めちゃめちゃしんどかったんですよ。自分が書いても、かけた労力が全部チリになってしまう瞬間がくるのがすごく怖い(花村)
──それで、『FACE』リリースのあとにはレーベル移籍もあって、その後、いきなり6ヶ月連続リリースという取り組みがありましたよね。花村 大変でした(笑)。
──「音楽で五感を体感する」というテーマを設けて、五感に寄り添った曲を1曲ずつリリースしていくという縛りもあり、制作期間もタイトで。
花村 しかも3作目まではコンペだったんですよ。だから、“DREAMIN’ ON”の時も“amp”の時も、大輝くんと僕がそれぞれに作詞して、それでコンペにかけられるっていう。グループ内コンペ、めちゃめちゃしんどかったんですよ。自分が書いてもその時間が無駄になる辛さもあるし、かけた労力が全部チリになってしまう瞬間がくるのがすごく怖い。あとやっぱり、メンバー間で競い合ってる感じが嫌だった。だから僕にとってはすごくもやもやした3ヶ月だったんです。去年1年間、コロナ禍でライブができないことももちろん嫌だったんですけど、それ以上にグループ内で競い合ってる感じがすごく嫌でした。
──工藤さんはどう感じていました?
工藤 想太と一緒です(笑)。でも作ってみるっていうアプローチで勉強になることもあって、それは今、すごく活きているかなとは思います。
──和田さんや岩岡さんは、そんな状況を見てどう感じていましたか?
和田颯(Performer) メンバー同士のコンペは必ずどちらかが落ちるわけじゃないですか。それを見ているのはもどかしくて、このやり方はどうなのかなあって。でもいろんな作家さんが書いてくれる曲もコンペに入っている中で、やっぱり、メンバーが作った曲がいちばんしっくりくると感じられたんですよね。メンバーの血が入っている曲っていうのは、愛が入るんじゃないかなって思いました。
岩岡徹(Performer) Da-iCEを代表して書いてくれているふたりにはすごく感謝しています。もう10年も一緒にいて、ここでこういうシングルを切ったほうがいいっていうのはいつも共有していますし、そこで出てくるものには全幅の信頼を寄せていますし。僕らはいつも公平な目で判断しているというか、他の作家さんの曲も含めて、コンペでは誰がどの曲を作ったかは伏せて、純粋に曲を聴いて、歌詞を見て判断したりしているので、そこはメンバーと言えどもリアルな評価なんですよね。
──“CITRUS”は6作連続リリースの4作目としてできた曲ですが、この曲は工藤さんと花村さんが共同で作詞を手がけています。これはどのように作っていったんですか?
花村 制作に時間がなくて、とにかく急いで作詞をしなきゃいけないってことで。じゃあ大輝くんとふたりで書きますかって。いつもなら、そこからグループ内コンペが始まってたと思うんですけど、この時はそうする時間もないし、ちょっと精神的にもしんどかったので。まずあのサビは大輝くんが叩きを作ってくれて、それをふたりで1フレーズ目から洗い直して作り上げて。そこからはリレー方式で、1Aを大輝くんが書いて、それを見て自分がその続きを書く、みたいな。
工藤 結構昔から想太と共作する時はそのスタイルが多いですね。面白いです。ストレスをまったく感じない。
──そうして出来上がった“CITRUS”が、「THE FIRST TAKE」への出演を機に、大きくバズることになるわけですが、この曲ができた時、大野さんはどう感じました?
大野 いや、高いなあって(笑)。
工藤 高いのよ(笑)。
大野 まだ作詞に入る前、楽曲が先行で決まった時点で、この曲をDa-iCEがどう消化して、どう歌って、どうパフォーマンスしていくか、まったく想像できなかったんです。楽曲自体は耳にすごく残るし、ポテンシャルが高い楽曲だというのは重々承知だったんですけど、僕たちが果たしてそれを消化できるのかなって。でも今は、「Da-iCEっぽさ」というのを自分たちで決めつけてはいけなかったんだなって、改めて思っているところです。ここまで広がる曲になるとは。
工藤 ほんとにたくさんの方々が聴いてくれたり、歌ってくれたり、っていうのは僕らも数字で見ているんですけど、ちょっと今まで見たことのない数字が出てたりするんですよね。
大野 カラオケランキングにも入ったんですよ。
──え? Da-iCEにとって、それって意外なことですか?
大野 だって、今までランキングに入ったことないんですよ。トップ100にも入ったことない。
工藤 カラオケのランキングってほんとに「永遠の名曲」みたいな楽曲ばっかり並んでるんで。
花村 7月段階で、DAMさんのランキングで15位なんです。トップ10もですけど、15位から下を見ても、恐れ多い名前が並んでるんですね。よく「Da-iCEの曲は歌えない」、「難しい」って言われてたんですけど、でも今回こそ歌えないでしょって思うんですけどね(笑)。
大野 だからもうほんと、何が正解かわかんない(笑)。