そして“Hello”と併せてリリースされたのが、Furui RihoがA.G.Oとともに作り上げた“ちゃんと”。休むのが下手で真面目に働くあなたや、人に迷惑をかけないように気を遣いすぎているあなたへ、「ちゃんと」という語感をユーモラスに昇華したチャントを届けてくれている。
最近ではUNIQLOのWEB CMに出演し、UNIQLOの店内でも彼女の姿を見る。「いいチャンス」と「いいモード」が絡み合った時に、アーティストは階段を何段も駆け上がれるものだと思っているが、今のFurui Rihoはまさにそんなゾーンに突入しているように見える。
インタビュー=矢島由佳子
──“Hello”、最高の1曲ができあがりましたね。Furui Rihoらしさ全開な曲で。とにかく「楽しい」を見せたい、子ども時代の無邪気さみたいなものを表現したい。ただ明るいだけじゃなくて、ほっこりして泣けるような深みがある曲にもしたかった
もうまさに。本当にそうですね。
──それが『CITY THE ANIMATION』のオープニングとしてテレビから流れてきて、初回放送からグッときました。
グッときましたね。かぶりつくように観て感動しました。曲を作り始めたのは23年12月だったんですよ。リリースされるのは相当先だなと思って、ずっと待ち望んでいました。初めてのアニメタイアップだったから並々ならぬ想いで、作るのにも苦労したし。しかも京アニ(京都アニメーション)の久しぶりの完全新作で、ファンの方々の期待を裏切れないなとも思っていたので、無事に仕上がって、自分の中でも大切な1曲になったと思えたことが嬉しかったです。
──そもそもタイアップが決まった経緯はどんな感じだったんですか?
スタッフから「Furui Rihoが『CITY THE ANIMATION』の主題歌の候補に挙がっています」って言われたんですけど、最初は全然期待していなくて。そういう話って流れることも結構あるんですよ。だから「期待しない!」みたいな(笑)。そうしたら数週間後に「決まりました」って言われて、「本当ですか? 私でいいんですか?」って思いましたね。世の中にはたくさんいいアーティストがいるのに、私でいいのかなって。
──決まったのが23年12月の前ということは、まだアルバム『Love One Another』も出してないし、三浦大知さんとのコラボやUNIQLOの仕事とかもない時期で、そこまで確固たる自信もない頃というか。
そうですね。だからなおさら「私でいいんですか?」という気持ちでした。
──Rihoさんのどういうところに作品との親和性を感じて選んでくれたのか、制作サイドから何か聞きました?
京アニのスタッフさん、石立(太一)監督、あらゐ先生と打ち合わせした時に「“LOA”みたいな曲、というかむしろ“LOA”がいい」って言われたんですよ(笑)。“LOA”はゴスペルっぽさもあって、自分らしさをすごく出せた曲だったので、そういう自分の得意な方向でやればいいんだなと思って。それは嬉しかったし、やりやすかったですね。その打ち合わせであらゐ先生が話していたことを録音して、それを聞き直しながら歌詞を作ったりしていました。
──あらゐ先生はどんなことをおっしゃっていたんですか?
とにかく「楽しい」を見せたい、子ども時代の無邪気さみたいなものを表現したいと。『CITY』は「ガールズ・ラン・コメディ」というキャッチコピーなんですけど、みんなが走り回って、どんどん展開が変わって、他のことを考える余裕がないくらいずっとクスクス笑いながら一気に観てしまうような──とにかく楽しさがぎゅっと詰まった、無邪気で素直なキャラクターたちのお話だったので、先生の言っていることはすごくわかって。あとは、老若男女が楽しめてみんなでシンガロングできるようなイメージとも言っていましたね。ただ明るいだけじゃなくて、ノスタルジーな感じが切なさに繋がるというか、ほっこりして泣けるような深みがある曲にもしたかったんです。そうやって、頭の中にどんどんピースが集まって、その打ち合わせの時にはなんとなく楽曲のイメージが浮かんでいました。
──打ち合わせ時点でピースはいろいろとあれど、それを具現化していくのが大変じゃなかったですか?みんなでひとつになって笑って過ごせたらどれだけいいだろうっていう、そういう願いも込めて作りました
そうなんですよ。持ち帰って、「これをどうやってはめていこう?」みたいな。打ち合わせの数日後、当時は北海道に住んでいたので東京のホテルに泊まっていて、荷物を片付けていたら急にバッて曲が降りてきて。頭の中で鮮明に聞こえてきたんですよ。それを忘れないようにと思って、急いでスマホのボイスメモに残しました。
──それは、サビが出てきた感じだったんですか?
もう、曲の頭から出てきました。聴きます?(と言って、当時録音した、手でリズムを叩きながらメロディ、ピアノ、ベースを口ずさんだ音声を聴かせてくれる)
──すごい! この時から曲の全体像があったんですね。ほぼ《Hello, Dear my friends》って言っているし。
そうそう。だからこの曲は天から降ってきた贈り物みたいな感じがします。
──アニメみたいな話ですね。しかもRihoさんのこの歌には、大人が子どもに紙芝居を読んであげるような温かさや安心感、包容力や優しさがあるなあと思って。それがアニメ全体やオープニング映像に合っていて、すごくいいなと思ったんですよね。
嬉しいです。本当に、みんなをハグするような気持ちで書きましたね。歌い方の部分では、あらゐ先生がみんなで歌いやすいようにと言っていたので、日本語をよりはっきりとクリアに、まっすぐ歌うことを意識しました。自分の頭の中では、みんなが手を取って笑っている姿が浮かんでいて、たくさんのファンの方がこの作品を期待して待っていることもわかっていたので、みんなが再会して手を繋いでワアッてやっている感じをすごく出したかったんですよ。みんなでひとつになって笑って過ごせたらどれだけいいだろうっていう、そういう願いも込めて作りました。愛が積み上げられていった歌詞になったし、ただ「表面だけ楽しい」ではないということが、歌声と歌詞で伝わってくれたら嬉しいなと思います。
──アニメのオープニング映像のラストは、まさに今おっしゃったような画じゃないですか?
そうなんです。本当に、想像していた画が来たんですよ。映像を見た時、私の曲が完結したと思いました。歌詞に沿って絵を作ってくださっていて、それ自体もすごく感動したし、私が伝えたかった想いを京アニスタッフのみなさまが受け取って広げてくれた感じがすごくあって。『CITY』という素晴らしい作品を邪魔せず、プラスになれるように関わりたいと思っていたんですけど、それを抱きしめてもらったというか、自分も一部にしてもらった感覚ですごく幸せでした。