破格の1stフルアルバムの完成だ。PIZZA OF DEATHからの超新星として1年前に登場して以来、その抜群のメロディと、ジャンルを自由に横断する楽曲、笑顔溢れるパフォーマンスで各地を席巻しているWANIMA。大きな期待の中届けられた待望の1stフルアルバム『Are You Coming?』は、別れや喪失、悔しさなどをひっくるめて、聴き手を強い希望へと連れていく傑作だ。ロックもパンクもレゲエもヒップホップも、エロも泣きも笑顔も最高に炸裂している今作で、WANIMAはいよいよ「みんなのバンド」になるだろう。
なお、発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』12月号にも彼らのインタヴューが掲載されているので、そちらもあわせてどうぞ。
インタヴュー=小松香里 撮影=オノツトム
海外の音楽はエロだけじゃなくて「かっこいい」もくるので、そこがすごいなって。それを日本人のWANIMAがどうかっこよくできるか考えてます
――非常にいいアルバムで。
松本健太(Vo・B) うれしいです!
藤原弘樹(Dr・Cho) ありがとうございます。
――アルバム1枚通して聴いてどういう感想を持ちました?
藤原 「いいなあ~」ですね(笑)。
西田光真(G・Cho) 「いいなあ」ですね(笑)。
松本 やっぱり自分たちがやりたいことやってますから、それを形にできた時はどんな美人を抱くよりも実は気持ちいいかもしれないです。とにかく3人ともが大好きな曲を詰め込みましたね。
――最近書いた曲が多いんですか?
松本 そうです。”THANX”っていう12曲目の曲とかは、お客さん2、3人の時からずっとやってきた曲で、サビなんか高校3年生とかでできた歌なんですよ、実は。そういう大切な歌もやっとこのタイミングで出せたりしつつ、あとはほぼ新曲ですね。18で東京出てきていろいろ田舎もんが感じること、経験したことを歌わせてもらいました。
――昔の曲と今の曲と比べると、自分としては一番大きな変化ってどういうところだと思います?
松本 実は今までとはなんら変わりはないですね。前回同様に早く聴いてほしいっていう気持ちですね。
――これまでを超えないと、みたいな気持ちはあったんじゃないかと思うんですけど、別にそういう気負いとかもなく?
松本 気負いはあったと思います。やっぱり驚かせたかったんで。あと、裏切りたくなかったっていうのがすごい強かったです。音楽と曲と歌詞にちゃんと向き合うっていう、そこに一番気持ちを置いてましたね。
――候補曲は20曲ぐらいあったそうですけど、最終的にこの13曲にしたのは?
藤原 流れですね。
松本 エロはずっとやってきた”1CHANCE”と、シングルでも出た”いいから”の2曲入ってるから、もう1曲ぶっ飛んだすごいエロな曲があったんですけど、エロばっかりやったらほんとに変態バンドなんだと思われそうなんで、エロだけじゃないぞと。
藤原 いい具合に。
松本 お父さんになっても聴きやすいアルバムになりました。それで、基本的にできた曲は全部いいと思ってるので。すごい新しいWANIMAも入れてます。4曲目の”Japanese Pride”から5曲目の”SLOW”なんか、今までお客さんの中ではなかった新しいWANIMAなんで、すごい楽しいと思います。
――WANIMAの場合3人が思ういい曲っていうのが、みんなにとってのいい曲だと思うんですよ。
松本 うれしいです!
――曲の間違いなさというのがすでにあるなあと。なんで健太さんからはそんな曲が生まれるのかっていう。
松本 やっぱ僕らはまわりに恵まれてて、指導してくれる人がたくさんいるので、音楽に対してちゃんと向き合わんといけないなって思ってるんですよね。あと音楽やれなかった期間がすごい長かったので、今音楽やれてるのがすごいありがたいっていう。現状に満足はしてないっていうとこからだと思うんですけど。
――曲は高校生の時から書いてたわけですよね。そこから音楽ができない時期を経て、健太さんの書く曲が変わった時期があったんですか?
西田 うーん、書いとる内容はあんま変わってない気はします。エロとかは東京に出てきていろいろ知ってできたと思うんですけど。
松本 エロを知る前は自然の歌ばっかり歌ってて。地元が山と海しかなくて、絶対歌詞には山と海が入ってました。東京に来てエロを知り、ワンチャンを知り。「迷いなら捨てて、後腐れなしで」っていう座右の銘までできて、バンドのテーマにもなるぐらいになってきたんですけど。
――WANIMAの曲を聴くと、エロって個人的な出来事における具体的な描写をしても共有できるんだなっていうのがよくわかるんですけど、でもその他のエロじゃないテーマの曲は、個人的な思い出があったとしても、具体的な描写ってあんまり出てこないんですよね。
松本 エロは誰もが持ってる欲求のひとつやと思うんですよ。それをただエロいだけじゃなくて、エロかっこいいっていうふうになったらいいなっていうのがあって。だからあんまりくさくならんように、エロに対しても真面目に書いてます。
――それで、日本のロックバンドでそういうことをやっているバンドはあんまりいないなあと。
松本 そうですね。やっぱ海外の音楽はエロだけじゃなくて「かっこいい」もくるので、そこがすごいなって。外国の方なんで見た目からしてかっこいいですけど、それを日本人のWANIMAがどうかっこよくできるか考えてます。でもエッチな歌をみんなでライヴで歌ってる感じも、はたから見たらすごい光景ですけどね(笑)。これからもエロを歌っていきます(笑)。
――(笑)だから、健太さんの歌詞って無意識的だと思うんですが、すごく聴き手に向いてるんですよね。
松本 歌詞はすごい悩みますよ。けど、ちゃんと向き合うってことを強く思います。結局自分が納得したものしか自信持てないっていうのはあるので。そうじゃないと伝わらないと思ってるんですよ。
――個人的な気持ちを生々しく歌詞に込めてると思うんですけど、絶対間口が狭いものにはしない誠実さがあると思うんですよね。
松本 そうですね。柴犬みたいなとこありますよ。でも普段はチワワみたいな可愛らしいとこもあるんですよ。夜は土佐犬みたいにガウガウいっちゃう時もあるんですけど(笑)。やっぱそこも「ワンチャン」ってとこから来てますから(笑)
――うまいですね(笑)。
松本 ありがとうございます(笑)。でも”TRACE”とか”THANX”を、聴いたお客さんからよく「これ恋愛の歌ですか?」とか「誰か亡くなったんですか?」とか訊かれるんですけど、聴いた人の状況によって曲の聴こえ方が変わるんだなっていう。強い思いはあるんですよ。でもその人が聴いたその時の状況で変わればいいなっていう、その時にちょっとでも力になればいいなって思って作ってるとこはあるので。エロな歌はほんと大好きなので、エロが(笑)。自分の好き勝手歌ってるとこあるんですけど。
まだ上から目線では曲は書けない。今のこの時代、せっかく歌わせてもらってるんだから、聴き手と同じ目線で、近い温度で歌っていきたい
――1曲目の”ここから”は、まさにここから始まるんだっていう曲ですけど、そういう思いを込めたんですか?
松本 込めました。1曲目どういう曲を作ろうかって藤くんと光真と話して、短くスパンと伝えたいこと伝えて、朝イチでバンと駆け出せるように、遅刻してもパンといけるような曲を作りたかったんです。
――WANIMAの「今」がすごい凝縮されてると思ったんですよね。前の作品に入っている”つづくもの”とか”終わりのはじまり”とか”雨あがり”のような曲から、もっと前向きに未来に向かってる感じがして。
松本 そこらへんからまだ変わってないんですけど、前向きは前向きです。どうにかして抜け出したいっていう気持ちはすごいあって。『Can Not Behaved!!』の”Hey Lady”もそうですけど、とにかくなんとかして前に進まないといけないなっていう。”ここから”では《ダサいのは今だけだから》って書いてますけど、これも諸先輩方から教えてもらったことで。音楽やれない時にずーっとそうやって教えてもらった言葉のひとつでもあるので。前に進めんなあとか、ちょっと今俺かっこ悪いなと思っとる人はぜひ聴いてほしいです。
――先輩からどういうことを言われたんですか?
松本 とにかく諦めんなっていうことを教えてもらったんです。藤くんなんかバンドも10個ぐらい経験して、地元帰ろうかっていう時にWANIMAに出会って。俺らもドラムが抜けて、もうダメやねっていう時に藤くんに出会って。その音楽できんかった期間に「究極のアンチは諦めんことやから」っていうことも教えていただいて、それもずっと自分たちのどっかにありつつ──僕はですけど。光真くんはわかんないですけど。
西田 僕もです。
松本 便乗するならすればいいよ。
西田 僕もです。
藤原 ははははは!
松本 だから結局、自分の中にあるものしか歌えなかったですね。
――WANIMAのメロディとか歌がものすごく強いのは、やっぱりそういった逆境からなんとかして立ち上がろうっていうパワーも大きいんだと思うんですよね。
松本 常にケツ叩かれてますからね、僕らは。全然ほんとまだまだなんで。
――だからこそ、強い希望に繋がるものになってますよね。
松本 まあもともとが根暗ですからね。普段はすごい明るくて、チワワみたいな子なんですけど。
藤原 (笑)。