ここ日本では今はほぼ無名の状態だが、この何ものとも形容しがたい才能は時間をかけて広がっていくのではないか。南カリフォルニアのシンガー・ソングライターにしてマルチ・インストゥルメンタリスト、ルイス・コール。あえて説明するとすれば、アニコレを祖に00年代以降も多くのインディ・ポップ/ロック勢が目指してきたビーチ・ボーイズ・サウンドを今様に表現するアーティストだ。面白いのは、彼がサンダーキャットのドラマーを務めそのサウンドの鍵を握っていることに表れるように、ベース・ミュージックの新たな発展形と評することもできるという点。エレクトロニクスを導入し、ヴィンテージの機材を使ったノスタルジックな風合いの宅録DIYポップだが、昨今のローファイ宅録とは一線を画す上級な仕上がりはまさにその象徴といえる。ジャズ・ミュージシャンのスティーヴ・コールを父に持つという恵まれた音楽環境で育ったようだが、ロイド・コール〜スチュワート・マードックを思わせる繊細なヴォーカル、シド・バレットからエイロス・チャイルズに至るまで継承されるブリティッシュ・サイケの香りもいい。 (羽鳥麻美)