大人だからこそ描ける蒼さ

グリーン・デイ『ウノ!』
2012年09月26日発売
ALBUM
グリーン・デイ ウノ!
グリーン・デイ大教典3部作とでも言えちゃうほど、彼らのロックンロールな軌跡が追える『ウノ!』『ドス!』『トレ!』。その第1弾となる『ウノ!』について、先月号のインタヴューで、彼らは意識的に原点回帰を図ってみたが、当時のサウンドを再訪しただけではなく、当時の精神性までも掘り起こしてしまったというようなことを話していた。本当にそのとおりの作品である。サウンドはもちろんのこと、とにかくスピリットそのものがめちゃくちゃ若々しいのだ。というか、このアルバムを貫くのは、“今夜は泊まってくれ、さよならは言いたくないから”とか、“君の唇にキスした夢を見た”とか、もはや40歳になる大の大人が歌っているとは思えない童貞小僧よろしくの歌詞が示すとおり、“彼らの青春”そのものなのである。そう書くと、なんか中年オヤジたちのノスタルジアが詰まった痛々しい作品に聞こえるが、もちろんそんなことはない。たとえばジョン・ヒューズの映画のように、あだち充のマンガのように、グリーン・デイの青春謳歌は、実際に青春の痛さ、青春の熱さ、青春の儚さを知り尽くし、そのすべてを達観できる大人だからこそ描けるファンタジーなのだ。そう、当たり前だが、ここで歌われているのは彼らのリアルでは決してない(だったら気持ち悪すぎる)。ただ、その溌剌としたエネルギーは紛れもなくグリーン・デイのリアルで(それはサマソニ公演で実証済み)、それをこのような完璧な青春パッケージとして一括できちゃう彼らの度量と行動力には脱帽してしまう。(内田亮)
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