ネオ・温故知新
ザ・ハートブレイクス『ファンタイムス』
2012年06月20日発売
2012年06月20日発売
ALBUM
このハートブレイクスがウー・ライフ等と共に期待の新人リストに頻出し始めたのは2年前のことだから、ようやくのデビュー・アルバムという印象だ。現在はマンチェスターに拠点を置く4ピース、既に数枚のEPをリリース済。それらのEPが80Sのエルやチェリーレッドを彷彿とさせる名品揃いで、青白くも誇り高き横顔を持ったインディ少年達の奏でるそれはモリッシーやカール・バラーにも評価されて前座に抜擢、エドウィン・コリンズもプロデュースに名乗りを上げるなど、着々とUK伝統主義の系譜を歩み始めているように思えるバンドだ。本作を聴くとたしかにネオアコ伝統主義も彼らの大きな魅力で、まずはその点においてUKインディ好事家連に間違いのない一枚としてお勧めしたい。加えて、ノーザンソウルのグルーヴと引き算エレクトロのブレイクビーツが違和感なく混ざるリズムのユニークさを筆頭に、このバンドの温故知新が実はかなり大胆な手法で行われている点において、ドラムスやハウラー等、USインディの最前線に親しむ若いリスナーの皆さんにもお勧めできる一枚だ。UKの新人にも「あの波」はちゃんと届いていたのだ。(粉川しの)