新作『ジ・エイジ・オブ・アッズ』リリース前にウェブで突如発表されたEPが待望のCD化。ストリーミングで何度聴いたかしれないとは言え、このクオリティの作品についてはフィジカルのフォーマットで持っていたいと思っていた僕のような人には朗報だろう。2曲の10分を超える組曲があることも含めて、非常にフィジカルに向いた作品だとも思う。
けれど、これだけの作品が完成していながら、スフィアンは純粋な新譜として発表することはなかった。そのあたりの苦悩については、前号のインタビューでも語られているが、彼の発言を読み、あらためて本作を聴いて思ったのは、全体性の獲得ということだった。米50州プロジェクトに象徴されるように、これまでのスフィアンは物語/コンセプトを積み上げることによって全体性を獲得しようとしてきたが、たった一つのエモーションがそれを打ち砕くほどの強度を持ちうることを実感したのだろう。だから、『ジ・エイジ・オブ・アッズ』は急激な変化を遂げた作品になった。本作はコンセプト時代の集大成とも言える作品である。そして、この作品に存在する美しさはそれもまた真実だと思う。(古川琢也)
ウェブでもいいからまず聴いて
スフィアン・スティーヴンス『オール・ディライテッド・ピープル』
2010年12月22日発売
2010年12月22日発売
ALBUM